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第153話 自然の摂理なんです

「あ、あの……どういうことですか?」

「別にそんなかしこまった喋り方をせんでもいいんじゃぞ? そなたはわらわの妻になるんじゃからなっ」


 ええええ!? ほ、本気なのこの子!?


「え、ええと……」

「困惑するのも無理はありません。今から説明いたしますね」


 と、大和撫子なメイドさんがおっとりとした口調で話し出した。


「その前に、申し遅れました。私はコーデリア殿下の幼馴染専属メイドをしております、ディアナ・ブラウンと申します。お気軽にディアナ、とお呼びください」

「は、はぁ、ディアナさん」

「呼び捨てでいいですよ。私とコーデリア殿下は将来を誓い合った仲ですし、アンリエッタ様とコーデリア殿下が結婚なさる時は私も貰って頂きますから」

「……えっ」


 目の前のメイドさんってばおっとりとした口調のまま、なんかとんでもないことを言い出したんですけど。


「そ、それって……!?」

「あら? これをご覧になれば一目瞭然でございましょう?」


 そう言いながら、ディアナは首輪とそれから延びるリードを愛おしそうに撫でる。そのリードが伸びる先は当然コーデリアの手の中だ。


「私は身も心も殿下にお捧げしてますから」

「いや、心はともかく身はまだじゃろ」

「私はいつでもいいんですけど……」

「わ、わらわにも心の準備というものがあるのじゃっ……」


 なんか急にいちゃつきだしたんですけどこの2人……いいぞ、もっとやれ。


「あれ? でも幼馴染メイドという割には結構年が離れているような」

「そうですね。私は今年で19ですから、殿下とは7歳離れています。なので殿下がお生まれになった時からお世話をしてきたんですよ。それこそおしめを替えたり、添い寝をしたりとほとんど姉みたいなものです」

「へぇぇ」

「ひ、人前でそう言う話をするなというにっ、恥ずかしいじゃろっ」

「いいじゃありませんか、殿下の奥方になられるお方なんですよっ?」


 いや、そもそもそのことがまず説明がいるような気がするんだけどね?

 でも面白いからまずは続きを聞くことにしよう。


「それで? 2人の馴れ初めはどうなんです?」

「あ、はい、そんなこんなで私が専属メイドの座を勝ち取って、殿下が10歳の時に私を嫁にすると言ってくれまして……」


 ディアナが目を細めながら、首輪を撫でる。


「その時頂いたのが、この首輪です」

「ほうほう、それで? プロポーズの言葉は?」


 初対面の相手にぶっこみすぎのような気もするけど、そもそも向こうが最初にぶっこんで来たからね、お互いさまという奴だろう。


「い、今はいいじゃろ、その話は……」

「えっとですね、『わらわの子を産んでくれ』と、またドストレートなプロポーズでして……」


 顔を赤くして袖を引っ張る殿下に気付かない振りをして、メイドさんが頬に手を当てながらのろけをぶちまける。

 いやはや、実に剛速球な口説き文句もあったものである。


「そうこうしているうちに殿下が12歳……結婚できる年齢になったところで、先ほどお話した女王陛下の姉妹百合ハーレムの話になるわけなんです」


 あ、やっと戻ってきた。随分遠回りしたけど存分にキマシタワーだったからヨシである。


「姉上……陛下がの、わらわも嫁になってくれとお願いして来たんじゃ」

「勿論それ自体強制ではないんですけど、殿下の他の姉妹の方々は喜んで陛下に嫁ぎました」


 もう色々と凄まじいわ。だいぶこの世界にも慣れたつもりだったし、この話を聞くのも2回目だけど当事者から聞くのはまた破壊力が違うわ。

 姉妹百合ハーレム、なんてキマシタワーの極致なことか。まぁ私も妹たちから結婚を迫られてはいるから他人ごとではないんだが。


「わらわものう、決して陛下の嫁になるのが嫌というわけでは無いんじゃ、だがのう……」

「殿下は、燃えるような恋に憧れているんですよね?」

「まぁ、そういうわけじゃ。ほれ、本とかであるじゃろ? こう、身を焦がすような恋、というやつじゃ。それを経験してみたくての」

「殿下、本お好きですものね、私がよく小さい頃から読んで差し上げたものです」


 いや、子供に読んであげるにはそういう燃え盛る恋の話はなかなか早くないかい?


「え、でもディアナさんとは恋人同士なんですよね?」

「それはそうじゃがの、考えてもみろ? わらわとディアナは生まれたときから一緒なんじゃぞ? さっきも言ったがそれこそ姉のようなもの。それではなかなか燃え盛る恋、とはいかんものじゃ」

「あーそれは確かに……」


 あまりに幼いころから一緒にいる期間が長いとなかなかそう言う気持ちになりにくいとか、そんなことを聞いたことがあるような気がする。

 ましてやおしめを替えてもらった相手というならなおさらだろう。


「ディアナのことは愛しておるがの、それはそれとして、な」


 コーデリアはそう言いながらディアナの腰に手を回して引き寄せると、ディアナは目を細めながら体を預けるのだった。

 イチャイチャしやがってぇ、ご馳走様です!!


「殿下と陛下も生まれてからずっとの付き合いですからねぇ、同じく激しい恋というわけにはいきません」

「それで、恋をするためにこの学園にわざわざ転入してきた、と?」

「ん~それなぁ、ちと違うんじゃ」


 そう言えばそれ、建前とか言っていたような。


「実はですね、アンリエッタ様の評判を聞きまして、それで会ってみたいと思うようになったらしく」

「それで転入してきたんですか!? いきなり!?」


 普通学校を訪問したりして会ってみようとか考えない!? ここの試験超難しいのよ!?


「その方が劇的っぽいじゃろ? 突然の転入生、って形の方が」

「まぁ、それは確かに……」

「すみませんねぇ、殿下って何故かそういうロマンチックなことが大好きでして」


 それ多分あなたのせいですよね? 本を読ませすぎたからなのでは?


「でも、なんで私なんかに会ってみたいと思ったんですか?」

「いや、私なんかって、そなた有名人じゃぞ?」

「……はい?」


 どゆこと? 私ただの貴族の娘なんですけど。貴族なんてこの学園にいっぱいいるよ?


「いや、天下のユリティウスで在学中に9人もの百合ハーレムを作った学生がいると聞けばそりゃ有名にもなるじゃろ」

「しかもメンツが凄いですからねぇ……幼馴染メイドは鉄板として、大貴族ウィングラード家の長女とそのメイド、将来を嘱望(しょくぼう)されるヤキュー選手、大企業の会長、ユリティウスの教師が2人に、百合神の高位司祭……」


 指折り数えながら、私の嫁達を列挙していく。おおう……そんなに知れ渡っていたなんて。


「極めつけは元幽霊のホムンクルスじゃの、この娘1人を嫁にしたってだけで普通伝説になるレベルの偉業じゃぞ」


 言えない……実は追加でその教師の娘(3歳)がいるなんてとても言えない……


「いやいや、9人とは恐れ入る……王族でもそれだけの数はめったにおらんぞ?」


 コーデリアはうんうんと頷きながらべた褒めしてくるけど、でもその情報はちょっと古いのだ。


「い、いや~、実はその、最近5人追加されまして……」

「はぁ!? なんじゃそれ!?」


 生徒会長とそのメイド、それに副会長と有望なヤキュー部員が2人、私のハーレムに加わっていたのだ。


「じゅ……14人、信じられん……それ『器』足りるのか?」

「ええ、まだまだ余裕です」


 実際は現状15人の予定だけど。


「余裕!? ウソじゃろ!?」


 嫁と婚約関係を結ぶためには、『器』というものが必要になる。

 『器』というものは誰もが持っているもので、その大きさは魔力容量に比例している。

 その『器』がいっぱいになるまで嫁を迎えることができるので、結果的に魔力容量が多い人は多くの嫁を取ることができるのだ。

 ちなみに魔力と『器』はあくまで別物なので、『器』がいっぱいになったとしても魔力を使うのに支障をきたしたりはしないのである。


「30人以上は大丈夫なはずです」

「笑ってしまうような容量じゃの……姉上でも20人ほどだと言うのに」

「ここの学園の先生に調べてもらっているんですけど、この容量の理由はいまだ不明だそうです」


 まぁ前世が関係しているらしいから、十中八九私が転生してきたことが原因なんだろうけど。


「しかし、14人の嫁かぁ……やはりそなたをわらわの嫁にするのは無理じゃの、わらわが嫁になるしかない」

「ですね、殿下の『器』は相当に大きいですけど、それでもその人数は流石に無理ですから」

「アンリエッタを入れて10人なら何とかなるかと思ったが、15人は不可能じゃ」


 いや、10人なら何とかなるって、王族ってすごい。


「あ、それってアレですか? 嫁を持った女の子を嫁にする時はその全員を嫁にしなくてはいけないっていう」

「当然じゃろ?」


 やっぱり当然なのか。なんていい文化なんだろう。


「え、えっと、本気で私の嫁になりたい……と? 冗談ではなく?」

「冗談なものか。正直そなたに会うまでは冗談も多少はあったがの、出会って確信したわ。わらわはそなたの子が欲しいのじゃ」

「ぶっ!?」


 子供って!! 王族ストレートすぎぃ!!


「あ~これはある程度仕方ないんですよ。魔力が大きい方ほど特に、より魔力の大きい方に惚れるのは自然の摂理なんです。殿下の魔力は常人の10倍を軽く超えてますからね」

「そういうことじゃ、もうわらわはそなたの嫁になりたくて仕方がない」


 そう見つめてくる幼女の目は真剣そのもので……イヤまずいでしょ!?


「ちなみに私の容量もそこそこありますので、アンリエッタ様にもかなり一目惚れ的な物を感じてます」


 ええええ? そ、そういうものなの? でもそれなら陛下に惚れててもおかしくないのでは……?

 うーん、でもその辺は幼馴染ってことで慣れてしまうものなんだろうか??


「ま、そういうわけじゃからの、わらわとディアナ、2人共嫁にしてくれると嬉しいんじゃが」

「い、いきなり言われましてもですね……?!」


 まずはお友達からってところでどうですかね!? 



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