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第132話 全てはシスターを落とすためである

 私達は帰省するための馬車に揺られていた。

 今回も馬車は2台用意して、彼女達と座席をローテーションしながら故郷へと向かっている。


「えへへ~。ママいい匂い~」


 そう言いながら私の膝の上で、私にしがみつく形で甘えているのは私の義理の娘となる予定のミリーである。

 もっとも本人としては私の嫁の座を虎視眈々と狙っているようで、隙あらばアピールしてくるのを忘れない。

 今も私に抱きつきながら、子供であることを利用して周りの目もある中私に堂々と頬ずりをしてきている。実に末恐ろしい3歳児である。


「えっと、ミリーちゃんでしたっけ? アンリエッタのこと好き?」

「好き!」


 そう質問したのは、私の隣にお行儀よく座っているシスターのノーラだ。

 シスターは私の彼女ではないものの、休みの間じっくりと口説くために言いくるめて帰省に同行してもらっているのである。

 この馬車にいる中では私とミリーとの関係――すなわち『ミリーが14になるまでに彼女を作らなかった場合、私と付き合うことになること』を知っているせいか、他の子達とやや向けてくる視線が違う。

 シスター以外には母と子の微笑ましいやり取りに見えているようだけど、シスターは「うわぁ……この子積極的ですね……しかもアンリエッタそんなデレデレして……やっぱりロリコン……」って目をこちらに向けて来ているのだ。

 違うんです。私がドキッと来たのはこの子が大きくなった姿になんです。決して今の幼女姿にではないんです。

 そう主張したいけれど、ミリーのプニプニほっぺの感触は耐えがたいほど気持ちよく、ついつい頬が緩んでしまい、そのつどシスターからは生暖かい視線が送られてくる。


「えっと、ところでシスターノーラ? シスターはまだお嬢様の彼女ではないんですよね?」


 やや目をジト目にしながら聞いてくるのは、私の向かいに座っているエメリアだ。

 シスターを紹介したのが馬車に乗る直前のことで、それまで知らされていなかったのが少し不満らしく、首に巻いた首輪をいじいじと弄っている。


「え、あ、はい。そうですね、彼女ではないです」

「そう言う割には、結構親密そうなんですけど」

「そうですか?」


 確かに隣に座っているシスターは、椅子の幅には3人掛けでもまだ余裕があると言うのに私にピタリと寄り添うように距離を詰めている。

 しかも私がミリーを抱きかかえている方とは反対の手をきゅっと握ってきているのだ。エメリアでなくても彼女なんじゃないかと思っても無理はないだろう。


「まだノーラとはデートを1回しただけだよ」

「そうですよ。私はただアンリエッタに遊びに来ないかと誘われまして、こちらの近くにある教会にも用がありましたから、お言葉に甘えたというわけなんですよ」

「でも名前呼びなんですよね」


 ちょっとだけ拗ねている様子のエメリアだけど、こんな感じで焼きもちを焼いてくれている時のエメリアはまた一段と可愛いのだ。

 それに拗ねてはいても、ハーレムを作ることに関しては当然だと思っているとのことだし、新しい彼女が増えることに関してもそれ自体に不満は無いらしい。

 ただそれはそれ、これはこれとして焼きもちは焼くのがエメリアである。


「私は彼女が増えるのは歓迎だけどね~」


 そう言いながら私の肩に手を回してくるのは、もう片方の隣に座っているルカだ。

 首には当然のごとく首輪が巻かれており、そこから延びるリードは私の手に握られている。

 ちなみに私の手に握られているリードは4本で、馬車に乗っている面々のうちシスターとミリー以外の全員が私にリードを握られていた。

 これは私が要求したことではなく、皆が進んで私にリードを差し出してきたのだ。こんな密閉空間で女の子達の首輪リードを握っていると、変な気持ちになってくるよね。


「だって、それだけモテるアンリエッタの彼女だなんて、誇らしいことじゃん?」

「それはそうですけど……」

「エメリアは嬉しくないの? 自分のお嬢様がこんなにモテモテなんだよ? もう彼女が2ケタに届こうとしているなんて並大抵のことじゃないでしょ?」

「嬉しいですよ? それは勿論嬉しいんです。でもジェラシーは感じちゃうんですよっ」


 前世のことを考えたら、私的に理解ができるのはむしろエメリアの方なんだけど、こっちの世界ではむしろエメリアみたいな方が少数派らしい。

 その証拠に、焼きもちを焼くのはエメリアくらいなもので、他の子達は私が彼女を増やすのを手放しで喜んでくれる。

 私としてはちょっとくらい焼きもち焼いてくれた方が嬉しいんだけれど、それは贅沢すぎる願いというものだろう。


「まぁまぁエメリア、いいじゃない。だってエメリアは1番に百合子作りしてもらう約束して貰ったんでしょ?」

「そ、それはそうですね……!!」


 エメリアをそう言ってなだめているのはその隣に座っているシンシアである。


「いやぁ~私達の前で『最初に百合子作りするのはエメリアに決めたから!』って宣言した時のアンリエッタ様、かっこよかったですね~。まぁクラリッサお嬢様はその後凄く拗ねてましたけど」

「まぁ百合子作りの第1段階は既に私としてるんですけどね」


 そんなことを言いながらお腹を撫でているのは幽霊であり彼女でもあるマリアンヌだ。いや、でもそのお腹の中に子供はいないからね?

 百合子作りは魔力を結合させる第1段階と、魔力体を込めたカプセルを飲んでもらう第2段階に分かれている。

 私がマリアンヌと百合子作り第1段階を行っているのは、あくまでも魔力を結合させることでマリアンヌの魂情報を深く読み取るためなのである。

 幽霊であるマリアンヌに与えた仮初めの体では、そこから進めても決して子供は出来ないのだ。

 あくまでもカプセルを飲んでもらわないと子供は出来ない。


「百合子作り1番なんて、もう第1婦人確定みたいなものでしょ? よかったねエメリア~」

「あ、ありがとっ」


 シンシアはそう言いながら、エメリアの手を握ってさわさわとさすっている。私の専属嫁となることを誓ったエメリアは、シンシアからのプロポーズを正式に断ったらしいけれどそれでもシンシア的には未練があるらしく、今でも隙あらばスキンシップを取ることを欠かさない。

 結婚そのものは諦めたようだけど、なかなかたくましいものである。


「しかし……話には聞いていましたが凄いですね」


 そんなやりとりを見ていたシスターが改めて感嘆の声をあげる。その瞳は潤んでいて、わたしにじっと向けられていた。


「何がですか?」

「いや、アンリエッタの彼女さんの数ですよ。私も長いこと百合神にお仕えしていますけどこの年でここまでの方は見たことがありません」

「そうですか?」

「だってこの馬車にいる子だけでも凄い数なのに、後ろの馬車にもまだいるなんて……しかも全員と結婚される予定とか、いやはや、羨ましいです……」


 シスターがこんな反応をしているのは、おそらく馬車でのローテーションが功を奏したからである。

 実はローテーションとはいうものの、シスターだけはずっと私の隣に座らせたまま、私が彼女達とキスをしたり抱きしめあったり、口に咥えたお菓子を食べさせてもらったりと、存分にイチャイチャする姿を見せつけてきたのだ。

 全てはシスターを落とすためである。


「え? 羨ましいの? じゃあシスターもアンリの彼女にして貰えば?」

「ふぇ!?」


 ここで久々のルカのぶっこみ、ナイスアシストである。


「シスターもアンリとデートしたっていうし、ここまで付いてくるんだし、アンリのこと好きなんでしょ?」

「え、あ、そ、それはその……!!」


 容赦のないルカの追い込みに、シスターは逃げ場を失っていく。こういう時のルカは本当に強い。

 冬休みの間にじっくりと落とす予定だったけど、これならこの場でいけるかもしれない。


「ねぇシスター?」

「あっ……」


 私はさりげなくシスターの腰に手を回してこちらに引き寄せる。


「気付いているとは思うけど、シスターを実家に誘ったのは私の両親に会わせたいからなんだよね」

「そ、それは……!」

「もちろん、私の嫁としてね?」

「嫁……!!」


 私に抱き寄せられていて、私の顔のすぐそばにあるシスターの顔が真っ赤になる。

 しばらく口をパクパクさせた後、黙りこくってしまったシスターが意を決したように口を開いた。


「お、お願いがあるんです……!」

「何ですか?」

「わ、私にも……私にも首輪を……首輪をくださいっ……」

「もちろんっ。ノーラに似合うのをプレゼントしてあげるからね」


 そうして実家に着く前に、私の彼女は9人に増えたのだった。

 

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