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第126話 反省はしていても後悔は無い

 百合子作りで魔力容量が増える……?


「どういうこと?」

「えっと……理屈はまだわからないんですけど、百合子作りで子供を授かった母親は、魔力容量が増えるんです。2人目、3人目と増加量は減っていきますが、最大で2割と少しほど増やすことができるらしいです」

「ほんとどういう理屈なの……」

「百合神からの祝福だって説が有力ですね。なにせ女の子同士の愛の神様ですし」


 百合神、いい仕事するじゃん。これで新たな女の子を嫁にしろって事なのね。

 とは言ってももともと魔力容量が高い子じゃないと結局2人目を嫁にするのは難しいんだろうけど。


「やっぱりお嬢様、ご存じなかったんですね」

「知らないよぉ、授業でも教えてくれなかったよね?」

「これは母親から教わることなので……その部分の記憶もまだ欠落してるんですね」


 まだまだ私の記憶って虫食い状態だからなぁ。他にも色々欠けてる常識がありそうだ。


「しかしそうすると?」

「……百合子作りで赤ちゃんを何人か産んだ後なら……シンシアとは結婚できます……」


 なるほど、シンシアはこれを踏まえてエメリアにプロポーズしていたわけか。

 私との子供を産んで魔力容量を増やし、改めて結婚してもらおうと考えたのだろう。


「結構本気なのね、シンシアって」

「で、でも! 確かに私のことは好きって言ってはくれるんですけど……!」

「けど?」

「『3番目に好きだから結婚して』って言ってくるんですよ? 1番はクラリッサ様、2番はアンリエッタ、そして3番目に私だそうです」


 正直者というかなんというか、でもそこはシンシアにとって譲れないところなのだろう。


「3番目とか言われると、正直複雑よね~」

「そうなんですよ……!! もうっ!! ……ちなみに、アンリエッタの1番は誰ですか……?」

「えっ」


 なんか私に飛び火してるんだけど。


「じゅ、順番とかは決められないよ……だってみんな私の可愛い嫁なんだし……」

「そうですよね……」


 自分が1番と言って欲しかったであろうエメリアがしゅんとなる。しょうがないじゃないか、女の子に順位を決めるなんて、そんなことできない。ただ……


「好きな順番は決められないけど……最初に私の子供を産んで欲しいのはエメリアだと思っているよ」

「……!!!!」


 エメリアがガバッと顔をあげる。その顔は歓喜に満ちていた。


「ほ、ほんとですか……!?」

「勿論だよ。私はまず、エメリアとの子供が欲しいよ」

「ああっ……アンリエッタっ……」


 エメリアは感極まったように私に抱きついてくる。

 ちょっ!! 朝から刺激が強すぎるんだけど!?


「それはもう、1番好きだと言われるより嬉しいですっ……」

「そ、そう?」

「はいっ……!! 私、今まで生きてきた中で一番幸せです……!!」


 潤んだ瞳で私を見つめながら、そのたわわをぎゅうぎゅうと押し付けてくるエメリア……!!


 や、やばい……!! 可愛すぎる……!!

授業開始まであと1時間、でも今押し倒したらそんなものでは済まないのは確実だ。絶対に遅刻する。今日はどうしても落とせない必修科目があるのだ。


どう見ても押し倒してほしそうにしているエメリアを抱きしめたい衝動を必死にこらえて、どうにかこうにか引きはがす。


「あっ……」

「よ、夜まで待ってね……私も我慢するから……」

「ううっ……で、ですよね……1限目の魔法工学は絶対出ないといけませんし……」

「で、でしょ~?」

「はい……」


 私達は名残惜しいように少しだけ距離を取り、それでもまだ甘い空気が部屋中に漂っている。このままではまた流されかねず、2回目は耐えられそうにないので強引に話題を変えることにする。

 単位の危機なのである。

 

「そ、そういえばさー!」

「は、はい! なんでしょう?」


 かなりわざとらしい私の話題転換に、察しのいいエメリアは直ぐに乗ってくれた。彼女もこのままでは単位がヤバイと悟ったのだろう。


「そもそもなんだけどシンシアって、私、クラリッサ、それにエメリアと結婚するだけの魔力容量あるの?」


 魔力容量は双方が足りていないと結婚は出来ない。3人の嫁を持つにはそれ相応の魔力が必要なのだ。


「はい、余裕なはずです。確か常人の5倍はあったかと」

「なんで従者科いるんだあの子……」


 常人の1.5倍ほどのエメリアの魔力でさえ、世間一般的には相当高いレベルなのだ。それが5倍って。


「ですよね。それだけあればユリティウスでも完全に上位クラスですし、まず巷では見かけないレベルですよ」

 

 まぁシンシアはメイドである自分が1番好きだと言っていたし、そういうものなんだろう。


「しかし、ほんと凄い魔力容量ね」

「それはその通りですが、常人の30倍とかあって文字通り桁が違うアンリエッタが言うセリフじゃないと思うんですけど」


 それは確かにそうだった。

しかし、そもそも私なんでこんなに魔力があるんだ……?

 ……百合子作りで魔力が増えるって言ってたけど、もしかして前世でハーレムを作っていたのが影響している……? まさかね。


「じゃあどうする? これで魔力の問題はクリア―だよね?」

「ううん……でも私、シンシアとそう言う関係になりたいのか、なりたくないのか、よくわからなくて……」

「このままがいい、と?」

「と言いますか、まずそれ以前にですね」


 さっき頑張って離れたのに、エメリアはすすすと距離を詰めてきて私にピタリとくっつく。


「やっぱりお嬢様一筋でいたいんですよね……ダメですか?」


 ダメなわけあるわけがない。むしろ私的には独占したいんだから。だがしかし、


「でもダメよ、エメリア」

「ええっ、だ、ダメですか……?」


 エメリアの顔がくしゃりと歪んだので、私は頭にポンと手を置いてあげる。


「いや、今そんな可愛いこと言っちゃダメよ。だって授業遅れちゃうでしょ?」

「あっ……」


 折角空気を変えようとしたのに、また抱きしめたくなってくるじゃないか。我慢……我慢だ……私……。


「じゃあとりあえずはシンシアとの件はとりあえず無しかな?」

「そうですね……まだあまりそう言う気持ちにはなれなくて……」


 私一筋でいたいとは言う、その言葉が何よりも嬉しかった。


「でもそっか~。……シンシア的には、自分とエメリアの間にできた娘を私に貰って欲しいらしいって言ってたんだけど」

「……!?」

「あ、ちなみにシンシアとクラリッサの間にできる娘は、できれば私の嫁にして欲しいって言われた」

「!?!?!?」


 エメリアが目を見開いて驚いている。一体どうしたと言うのか。

 しばしの沈黙の後、エメリアははゆっくりと口を開く。


「………………そ、それがありましたか……完全に失念していました……」

「え?」

「いや、盲点でした……私とアンリエッタの間の娘は、流石に結婚はできませんものね……でも血の繋がらない娘なら、アンリエッタのお嫁になれますし……」

「あの? エメリア?」


 何やらブツブツと呟いている。


「シンシアと結婚したらその子をアンリエッタに嫁がせることができる……うむむむ……でもやっぱり……うううぅん……」

「エメリア、悩んでるねぇ」

「それはそうですよ。娘を愛する人に嫁がせるのは女の子の夢ですから……いや、でもしかし……」


 そうなの!? この世界に来てそこそこたつけど未だにわからない部分があるなぁ。

 私一筋でいたい思いと、自分の娘と私を結婚させるというロマンの間で揺れているようだ。


「エメリアって、基本私基準で考えてくれるよね? そんなに私のこと好き?」

「はい。愛しています」


 即答だった。


「…………うん、ですよね、そうなんですよ。何も迷うことは無かったんです」


 その答えに自分自身で納得したのか、ウンウンと頷くと、私の腰に手を回してぎゅっとしがみ付いてきた。


「やっぱり私はお嬢様一筋です! シンシアには申し訳ありませんけど」

「…………………………」


 結論を出したエメリアの顔は今までにないくらい魅力的な物で、それを超至近距離で見てしまった私の理性のダムは、それで見事に決壊した。

 

 そのおかげで私達は1限目をすっぽかしてしまい、先生から大目玉を食らうことになった。

散々謝った末に大量のレポート提出と補修を受けることでなんとか許してもらえたのだが、反省はしていても後悔は一切無かったのである。

 

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