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第119話 エメリアのシスコンな妹

「えっ、エメリア、妹居るの?」

「はい、2つ離れた妹がいます。覚えておられませんか?」

「ううん……覚えてないなぁ」


 部屋でエメリアと話していると家族の話になって、それで判明した事実だった。

 私の記憶は未だに虫食い状態で、魔法薬による修復を続けているけどまだまだ覚えてないことも多々あるようだ。


「それで、どんな妹さんだっけ?」

「え、あ……えっと……」


 妹のことを聞かれたエメリアは何やら困ったような顔をする。一体どうしたと言うのだ。


「どうしたの?」

「いや、その……何と言いますか」


 ものすごく言いにくそうだ。何か悪いことを聞いてしまったんだろうか。まぁ家族のことだし、色々あってもおかしくはないよね。

 ちなみに私は前世では一人っ子だった。こっちでは実妹もいたけど、異母妹がいっぱいいるのに驚いた。どうも母はモテる女性だったようで、あの専属メイドで私を産んだ母も含めて4人の嫁がいるらしい。


「言いたくないならいいんだけど」

「いえ、そういうわけじゃないんですよ? 可愛い妹ですし。ただ……」

「ただ?」

「………………マイルドに言って、物凄いシスコンなんです」


 マイルドに言って、物凄いシスコン。

 それはマイルドに言わないとどうなるのかな?


「シスコンなの?」

「はい……その、私のことを慕ってくれるのは嬉しいんですけど……その慕い方が……」

「あ、もしかして」

「……私のことを、1人の女性として慕っているようでして」


 姉妹百合キター―!!

 いいよねぇ、姉妹百合、私も大好きだよ。前世でも姉妹で愛し合っている女の子を彼女にしたけど、それはもうその2人を見ているだけでも幸せな気持ちになったもん。


「へぇぇ~そうなんだぁ~」

「な、なんで嬉しそうなんですか……?」


 それはね、姉妹百合だからだよ。姉妹百合は大正義なのだ。


「私にはアンリエッタという好きな人がいるって言っているんですけど、それでも私に何度も結婚を迫ってきて……」

「結婚!?」

「はい、私の魔力量では1人と結婚するので限界だからと何度も断ったんですけど……」


 いやいやいや!? 1人としか結婚できないとかそういう問題じゃないよ!? 姉妹でしょ!?


「姉妹で結婚できるの!?」

「はい? それは当然で――ああ、そこの記憶もないんですね」


 ないよ? というか姉妹で結婚できるなんて思いもしなかったよ?


「たしか、実の母との結婚はダメなんだよね? でも姉妹ならいいの?」

「はい、法律上はそうなっています」


 なんで!? 実母とは一親等だからか!? 確かに妹は二親等だけどさ!?


「で、でも、実の母とも事実婚的には結婚できるんだよね?」

「ええ。できます。私の知り合いでも娘さんと事実婚状態で、百合子作りでお子さんもいる方がいますよ」


 おう……改めて聞いても面食らうよ。凄い世界だ。まさに百合の天国ね。


「法律上許されていないのは実の母との結婚だけです。あとは姉妹でもなんてもかまいません」

「それだけ認めるんなら実の母との結婚も認めていいんじゃ……」

「はい、最近ではそういう動きも大きいみたいですね。数年後には認められるんじゃって話も出ています」


 おう……マジか。色々と凄すぎる。魔法世界ロック過ぎぃ。


「まぁそういう訳でして、姉妹は結婚できるんです。でも私はどうしてもアンリエッタのお嫁さんになりたかったので……」

「エメリア……」


 テーブルを挟んでモジモジとするエメリアが愛おしくてたまらない。今すぐ抱きしめてあげたい気分だけど、話が気になるから続きを聞いてからにしよう。


「それでそれで?」

「えっと……そもそも私がなんでアンリエッタのところにご奉公しに来てるかって覚えてます?」

「覚えてません」


 まったくね。日記とかを見ればわかるんだろうけど最近ではもう自分で思い出したほうが楽しいかなって気持ちになっているから極力見ないようにしているのだ。


「私の家って、代々アンリエッタの家――クロエール家にメイドとしてお仕えして来たんですよ。私の妹もクロエール家の分家にお仕えしていますし」

「そうだったんだ」

「そうなんですよ。それで、大抵ご奉公に行った先で見染められてお嫁さんになるんですけど」


 そうなの!? でもエメリア抜群に可愛いし、その親族もそれはそれは美人ぞろいだろうから無理も無いのか。

 というかその目的もあってメイドさんを寄こしてもらっているのでは……


「うちの家系って、その……例外なく体の一部に凄く特徴がありまして……」


 ああうん、詳しく言わなくても分かるよ。その立派という言葉でも足りないくらいの見事すぎるたわわのことでしょ?


「それで、えっと……クロエール家のお嬢様方は、その特徴がとてもとても大好きなようでして……」


 ああうん、わかるわ。大きいのが好きな一族なのね。

 貴賎なしとは言うけれど、大きいと言うのはそれだけで素晴らしいのだ。


「ま、まぁ! そんなこんなで私はアンリエッタのおそばにお仕えできたんですよ!! 大変だったんですよ!? 専属メイド選抜を勝ち残るの!!」


 専属メイド選抜、そんなのがあるのか。


「私はアンリエッタ個人を好きだから専属になりたかったんですけど、なにせアンリエッタはクロエール家本家の跡取りですからね、それはもう他の家々から何十人も専属メイド候補が送り込まれていたんですから」

「そんなに!?」


 たしかに、専属メイドと言えばお嫁さん候補ナンバーワンってことらしいし、奪い合いもするだろうなぁ。


「子供ながらにアンリエッタ様の奪い合いですよ。それはもう水面下で女の争いが繰り広げられていて――」


 うわぁ~聞きたくね~。


「ま、まぁ、私が選ばれた決め手は、アンリエッタが私を1番好きになってくれたってことだったんですけど――」

「ぶっ!!」


 ふ、不意打ちは卑怯だぞ!? そんなん可愛すぎでしょ!!


「エメリア……」

「アンリエッタ……」


 やばい、押し倒したい。でももうちょっとだけ我慢だ。まだ妹さんのことを聞いていないし。


「そ、それで妹さんの件は?」

「あ、はい、それで、子供の頃から私のことが大好きな妹だったんですけど、8歳くらいの頃から私と本気で結婚したいと思うようになったみたいでして」


 8歳!! それはなかなか。


「でもその頃私はもうアンリエッタの専属メイドでしたし、アンリエッタと結婚したくて専属メイドになったくらいでしたから妹の気持ちには答えられなくて……」

「な、なるほど……」

「でも、里帰りとかで会うたびに『お姉ちゃん! 私と結婚して!! 私お姉ちゃんに私の赤ちゃん産んで欲しいの!』って、未だに言ってくるんです。どうもまだ諦めていないらしく」

「愛されているのねぇ」

「それはそうなんですけど……私も妹のことは姉として愛していますが、それでも私にはアンリエッタがいますし、やはり結婚するわけには……」


 可愛いことを言ってくれる。もう我慢しなくてもいいかな?

 私はエメリアに歩み寄ると、ぎゅっと抱きしめた。


「ね、お風呂いこ?」

「はいっ、お背中お流ししますねっ」


 エメリアはにっこりとほほ笑むと、私と一緒にゆっくりとお風呂場へ向かっていく。


「~♪」

「あ、そう言えばなんですけど」

「え、何?」


 可愛いエメリアに寄りかかられながら夢見心地だった私は、そのエメリアの言葉で我に返る。


「――その妹、来年ユリティウスに入学するらしいです」

「え」

「従者科ですけど。あの、仲良くしてあげてくださいね?」


 そんなお姉ちゃん大好き、むしろ愛してるっ子が入ってくる? だ、大丈夫かなぁ……私、そのお姉ちゃんの彼女なんですけど……。


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