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第101話 子供が好き

「まさか帰省するギリギリで、先生が私達の仲間入りをするとはおもっていませんでしたわ」

「そうね、まぁそろそろかなっては思っていたし、アンリエッタのご両親にも早めに会っておきたかったから」


 私達は我が家の領地へ帰るための馬車に揺られていた。

 前回は6人乗りの馬車に1人私の膝の上に乗ると言う形で何とか1台で帰ったものの、今回は先生達2人が新たにハーレムメンバーに加わったことで流石に馬車を分けないと無理だった。

 でも皆が私と一緒の馬車に乗りたがったので、定期的にローテーションをしながら帰っているという現在の現状なのである。

 今のメンバーは私、クラリッサ、モニカ、ナデシコ、そしてアリーゼ、テッサの両先生とその娘さんだ。


「しかし……テッサ先生って私服だとスカートなんですわね。こう言っては何ですけどちょっと意外と言いますか、てっきりズボン派かと思ってましたわ」

「でしょ~? この子、こーんなボーイッシュな感じなのに、実はスカートとか大好きなのよね」

「だって、好きなんだから仕方ないでしょ? 最近ではこのブランドに注目してるんだけど、大人気過ぎて手に入れるのすっごい大変だったんだから」

「…………」

「どうしましたの? 何かアンリエッタ複雑な顔してますけど」


 ――それはね? テッサ先生が着ているのが…………セーラー服だからだよ。

 いや、確かにね、確かにこの服デザインしたのは私だよ? でも、こう、どっからどう見ても大人の女性であるテッサ先生が、私服としてセーラー服を着ると言う文化を作り出してしまったと言う事実に戦慄する。

 私から見たらどうみてもコスプレにしか見えないのだが、周りは一切気にしていない。だってこの世界的には普通の服だしね。

 う~む、だがこれはこれで背徳的でいいものかもしれない。


「あ、その服……ウチの新作ですよね」

「え? ウチのって、モニカさんそこの社員さんなの?」

「いえ、モニカはそこの社長やってるんです」

「うそぉぉぉ!? あの大ブランドの!?」


 狭い室内に、先生達2人の驚く声が響き渡る。


「こ、こんな身近にあの会社の社長がいるなんて……しかもアンリエッタの彼女……世間は狭いわね」

「ほんとですわよね。わたくしも驚きましたわ」


 ちなみにモニカの会社の新デザインは、今も私が大半を担っている。最近では会社も大きくなってきたのでお抱えのデザイナーも雇っているそうだけど、それでも一番の売り上げを誇るのは私が考案した異世界デザインだ。

 何せ異世界デザインは前世の日本における萌えの結晶で、受けるのも当たり前なのである。


「モニカ頑張ってるもんね」

「アンリエッタ、ありがとっ。私達のメイド王国は順調に拡大中だよっ」


 もう順調なんてもんじゃないけどね? モニカの会社はぐんぐんおっきくなってきていて、最近では他国にまで支店を出したらしい。もはや国を代表する大商会と言っても過言ではない。

 ちなみに主戦力は勿論バリエーション豊かなメイド服と、それを使ったメイド喫茶である。

この世界にとってメイド喫茶は新鮮そのものだったらしく未だにその勢いはとどまることを知らず、新店舗もそれはもう破竹の勢いで展開していっているらしい。流石はメイド喫茶である。


「あ、そう言えばテッサ先生、馬車に乗ってますけど……お腹の子供は大丈夫なんですか?」

「それは勿論大丈夫よ。何せ私が厳重な保護呪文をかけてありますからっ」


 アリーゼ先生がえへんとその豊かな胸をはる。付き合ってまだほんの数日だけど、意外と子供っぽとこのある女性だってのが分かってきた。

 授業中の大人な女性の振る舞いもいいものだけど、こういう私生活でのギャップもまたたまらない。


「アリーゼ先生がかけた保護魔法なら大丈夫ですわね。何せユリティウス教師であられる先生の呪文ですもの」

「うんうん、もっと褒めてくれていいんですよっ」

「それにしてもこちらも意外ですわ。けっこうフランクなお方でしたのね。授業中でのあの凛とした姿も素敵ですけど、今の先生も親しみやすくて素敵ですわよ」

「ありがとねっ」


 先生はそう言うと、いたずらっぽくパチリとウインクをしてきた。クラリッサも私と同意見だったみたい。いいよね、ギャップ萌えって。


「え~ママって家だといつもこんな感じだよ~?」


 そう言ってきたのは、ナデシコと戯れている先生たちの娘であるミリーちゃんだ。

 この子が、女の子同士から生まれた娘……改めて魔法の凄さを実感する。どちらかと言えばアリーゼ先生よりかな? 髪の毛とか見ると。


「そうなの?」

「そうだよ。ママったら、お家に帰ってくるともう服とかポンポーンって脱いじゃってゴロゴロしてるんだから」

「こ、こら、ミリーっ」

「まぁそうだね。家ではだいたいこんな感じだよ。授業中はカッコつけて大人の女教師って感じを演出してるけど、実際は結構子供っぽいんだよね~」

「もうっ、テッサまでっ、かっこいい先生像が崩れるじゃないですかっ」

「いえいえ、そういう先生も魅力的ですよ」

「え、そう? それならいいんですけど」


 アリーゼ先生は照れながら頬をぽりぽりとかいた。可愛い。


「ねぇ~ママ~。あとどれくらいで着くの~?」

「そうねぇ、5、6時間ってとこかしら。そうよね? アンリエッタママ?」


 娘のミリーから話を振られ、その流れでアリーゼ先生が私にパスを出してきた。この辺で説明しておいた方がいいだろうという配慮だろう。


「え、ああ、そうですね、アリーゼママ」

「ママ? アンリエッタちゃんもママなの?」

「そうよ~。あなたの3人目のママになるのよ」


 ミリーは、そう聞かされて目をぱちくりとさせた。まぁいきなりママだと言われたらそうなるよね。


「そうなのよ、ミリーちゃん。私とあなたのお母さん達は結婚する予定だから、そうなるとあなたも私の娘ってことになるのよ」

「アンリエッタちゃんが私のママ……?」


 私のことは話には聞いていたようだけど、会うのは初めてなわけで。なついてくれるかなぁと不安だったけど……


「アンリエッタママッ!! わぁい!!」


 杞憂(きゆう)だった。ミリーは笑顔を浮かべながら私に抱きついてきたのだ。頬ずりまでしてきて、そのほっぺは驚異の柔らかさだ。ぷにっぷにである。


「アンリエッタのことはよく話に出ていたからね。ミリー的に初対面って感じはしないんじゃないかな」

「それにこの子……面食いだし。アンリエッタみたいな子、絶対タイプよ」

「えええ? 3歳ですよね?」

「3歳でも女の子よ? 可愛い子は好きに決まってるわ」


 そ、そういうものなんだろうか。私がミリーに抱きつかれて頬ずりされ、嬉しいながらも困惑しているとナデシコがふわふわと側に寄ってきた。


「ママの娘……? ということは……私のお姉ちゃんになるの?」

「そうなの!?」


 ミリーがパッと顔を輝かせる。


「だって私もママの娘だもん。でも私まだ1歳にもなってないし、そうなるとミリーは私のお姉ちゃんでしょ?」

「お姉ちゃん!! 私がお姉ちゃん!!」

「あらあら、良かったわね、ミリー、妹が2人もできたわね」


 テッサ先生がお腹を撫でながらニコニコとほほ笑んだ。あ、そうか、となると今先生のお腹にいる赤ちゃんも、私の娘ってことになるのか。


「いいですわねぇ~。わたくしも早く、アンリちゃんとの赤ちゃんが欲しいですわっ」


 クラリッサがそんなことを言いながら、そっと私にもたれかかってくる。可愛いなぁ! もう!

 でも子供か~。いいなぁ。ナデシコが私の娘になった時も思ったけど、私やっぱり子供が好きみたいだ。

 私に抱きついているミリーと、もたれかかってくるクラリッサの重さを感じながら、つくづくこの魔法世界に来たことの幸せを噛みしめるのだった。



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