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きつねの加護

作者: 六地蔵

昼休みに全国チェーンのうどん屋でいなり寿司をたべていると隣の席から子供が話しかけてきた。


「あのもし、いなりをひとつくださいませんか?」


さては見てるうちに欲しくなったのかな。微笑ましく思ってひとつどうぞと皿ごとさしだしてやる。


「ありがとうございます。わたしは稲荷大明神の遣いのきつね。本日は姪の結婚式で外界に降ろしてもらったのですが、結婚式の食事というのは食べた気がしませんでね」


最近の子供は妙な遊びを思いつくものだなと関心してそうですかと返すと恥ずかしそうに子供が続けた。


「とても美味しそうに見えたものですから…つい。そうだ。お礼と言うにはささやかですが、あなたに加護のまじないを授けましょうね」


ポンと手を打つと気が済んだようではふはふと自分のうどんに取り掛かる。


ありがとうというのも変な気がしてどうしたものかと思案していると、はじめからいなかったという体で隣の席はきれいさっぱり空っぽになっているのだった。



食後は自社ビルの1階に設置された自販機で缶コーヒーを買うのがルーチンだ。


健康診断で指摘された血糖値に思いを馳せつつせめてもの抵抗とコーヒーの微糖を選びボタンを押す。


ピピピ…ピー


あたったらしい。


当たらないことで有名なのに珍しいこともあるものだ。


再度、点灯したドリンクのボタンから今度はブラックコーヒーを選ぶ。なんだかんだで血糖が気になるのだ。



午後からの仕事は運良く…としか言えないのだけど何もかもがうまく決まった。


まるでトレンディドラマの主人公になったかのように次々と問題が解決していく。


特に長年の確執となっていたしょうもない人間関係のこじれが解消できたときは諸手をあげて喜びそうになったくらいだ。


こんなに何もかもがうまく行く日があるだなんて…と思ったところではたと気がつく。


昼休みのキツネ少年。


本当に加護があったとしたら…?


そう信じて宝くじを買ってみるのも良いんじゃないかしら。日常にスパイスを。


それともこういう時って宝くじなんて買ってはいけないのだっけ。


神を試すな…か。


ええいままよ。買ってしまえ。



宝くじの売り場に着いた。


間に合ったと思ったと同時に鼻先でシャッターが閉まる。


気の毒そうな顔をした店員と目があった気がした。


コンと鳴き声に振り返るときつねが一匹。


もういちどコンと鳴いたと思ったらお辞儀をして闇に消える。


ラッキータイムが終了したということがなんとなくわかった。


やっぱり宝くじは駄目だったらしい。


いたずらが見つかったかのようなバツの悪さを覚えて少し、笑った。




読んでいただきありがとうございます。


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冬童話2021
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