閑話 T伝説(第1回)
★ 注意 ★
ストーリー上、非正規ライセンスの非合法商品に関する事が書かれております。
絶対にそのような不正商品は手を出さない、買わない、売らないようにしましょう。
閑話 T伝説(第1回)
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本作の主人公?である高尾という人物を語る上において、とても重要な事がある。
通称「Tの呪い」や「T伝説」と言われる彼の性格や言動が招いた事件の数々。
不幸にも巻き込まれて被害に遭った者達は笑い話として語り継ぐしか救われる道はない程度の被害でもあるのが悩ましいとこでもある。
今回は彼が起こした事件の一つを紹介しようと思う。
◇◆◇◆◇◆
20xx年―――大晦日。
安崎は、年末進行という地獄から無事解放され、新年を迎える準備をしていた。
『もう18時00分か。もう少ししたら大晦日恒例の笑ってはいけないをみるか紅白をみるかしながら、のんびりするか。』
そんな事を考えながら、大掃除を終え一息をつく。
ふと放置していたスマホの画面をみる。
LINEのグループトークの通知がきており、あからさまに嫌な予感が襲ったのである。
恐る恐るその会話の画面を開くと恐ろしい事が起きるのを予期するかのやりとりが繰り広げられていた―――。
岩下:コミケ帰り、アキバ
(高尾が好きなアイドルステージのキャラグッツの正規ライセンス品の値段付き写真)- 18:05
岩下:
(高尾が好きな〇方のキャラグッツの正規ライセンス品の値段付き写真)- 18:06
岩下:
(高尾が好きなデレス〇のキャラグッツの正規ライセンス品の値段付き写真)- 18:07
野川:欲しいなら立て替えて買ってくよ。- 18:10
高尾:高いからいらない - 18:11
安崎がこのやり取りを確認したのが18:30。テレビをつけると大晦日恒例の笑ってはいけないの放送が始まったばかり。
のんびりとテレビを見ようとしていると、電話が突然鳴り出した。
相手は言うまでもなく、『高尾』であった。
戦慄が走る―――この電話に出た途端、年末年始が地獄絵図に変わる―――敢えてここは電話を無視する。
すると、玄関のチャイムが鳴り出した。
「ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!」
部屋の中の照明がついていて、テレビの音もしている。ましてや大晦日。下手に居留守を使う事も出来ない。
恐る恐るインターホンをとるとそこには高尾が居たのであった。
「お宝ショップ巡りしたいんだけど♪」
高尾はブツブツに荒れにあれた顔をニヤニヤしながら言い放った。
「ごめん、大晦日だし正月は予定が・・・」
安崎が断ろうとすると不機嫌になる高尾。高尾が不機嫌になり癇癪を起すと近所迷惑になる行為を平然と行うだけに、人生の終了を悟ったかのように安崎は諦めるしかなかったのであった。
そこにトドメを刺すように高尾が言い放つ。
「年末年始なんだから暇でしょ!どうせテレビ見て年越しするだけでしょ!」
もう、付き合う以外の選択肢は残されていなかった。
仕方なく高尾の愛車A〇TYに乗り込み、地獄のタバコの煙害に耐えながら何時に開放されるかわからない地獄が始まったのである。
安崎は、高尾に気がつかれないように高尾以外のメンバーとのやり取りをしているLINEのグループトークに悲痛な叫びを投稿をした。
安崎:ヤツに拉致られた。 - 18:40
岩下:スマヌ。俺が煽ったばかりに - 18:40
野川:生きて帰ってきてください - 18:40
安崎:欲しい物あったなら頼めばいいのに - 18:41
岩下:アイツのプライドがそれを許さんのだろうな - 18:41
野川:彼、常識ないからね - 18:41
高尾の被害に遭った者にしかわからない悲痛なやりとりが繰り広がれていく。
彼の無茶苦茶っぷりは一歩間違えれば死者がでてもおかしくないほどのものであったからである。
◇◆◇◆◇◆
拉致られて数時間後。
目的のグンマーのお宝ショップに到着した頃には安崎は死んだような顔になっていた。
言うまでもない。夜道であるにも関わらず山越えの峠道を高尾はテンションMAXで爆走していたからである。その間、シートベルトをしているのにも関わらず何度も助手席の窓や天井に頭をぶつけ、ジェットコースターにずっと強制的に乗らされていたのと変わらない恐怖を味わっていたのだ。
「着いたー」
テンション高く言う高尾。ゲッソリしながら車を降りる安崎。まだ1件目でこれである。この後何件回るのかと考えると恐怖でしかない。
1件目の太田にある某お宝ショップ―――そこには高尾好みの非正規(俗にいう海賊版)と思われるライセンス許可シールもロゴもないデレス〇の財布があった。
それを見つけ、ニンマリと笑う高尾。値段も1000円と彼にとって納得の価格だったようで、即購入。
購入すると値札をつけたままの状態で写真を撮り、LINEのグループトークに投稿したのである。
しかも、コメントも一切書かず、写真のみを。
2件目は伊勢崎にある某お宝ショップ―――そこには高尾好みのこれまた非正規としか言いようのない水晶モドキの中に『ラブステージ』の『ひなこちゃん』が彫られた置物が売られていた。
あからさまに正規ではないとわかるシロモノで3000円の値段がついているのにも関わらず、迷いもなく即購入する高尾。
ここでも1件目と同じく写真を撮りグループトークへ投稿し、ドヤ顔を決めたのである。
流石にここまで非正規の商品を買い続ける高尾に対し、見るに見かねた安崎が
「今まで買ったのって正規ライセンス取っている商品ではないよね?本当に好きなら原作者の人達にきちんと対価が払われる物を買ってあげないと悪いんじゃないの?コミケなどでファンサブとして認められて扱われている物とは違って買った物は何処かの胡散臭い業者が金儲けの為に作った劣化コピー品のような物ばかりでしょうが。」
と警告をしたのであったが、高尾にはそんなのはどこ吹く風でしかなかった。
むしろ高尾は安崎の警告を嫉妬としてしか受け取っていなかったのである。
「俺って買い物上手だからさ~。そんな事言ってこういう価値のある物を見つけられないのに嫉妬しているんでしょ?!」
ドヤ顔を決め胸を張って安崎にそう言い放ったほどであった。
―――高尾に何を言っても無駄―こいつに常識は通用しない―――
安崎はあと数分で新年を迎えるという状況の中、絶望するしかなかったのである。
◇◆◇◆◇◆
この後、安崎が解放されたのは元日の昼過ぎであったのは言うまでもない。
除夜の鐘は何が悲しくてゴミじゃなかったお宝と呼ばれるガラクタの集まるお店で聞く羽目になり、初日の出は恐怖の高尾の愛車A〇TYの中で車酔いと闘いながら迎える羽目になったのであった。
後日、この時の話が高尾の知らないLINEのグループトークで話題になったのは言うまでもない。
『アイツには正規ライセンス商品は不要、まさに豚に真珠、高尾に正規ライセンス品』
そのような名言が生まれたほどである。
また、この件が各所に伝わり、高尾と付き合いのある人達は年末年始は拉致られる前に地元から逃げ出すのが当たり前になってしまったのであった。
年越しをあの命の保証のない環境で過ごすのは危険であるというのと、拉致られた安崎が新年早々、高尾の無茶に付き合わされてインフルエンザにかかり寝込んだというオマケも伝わったためである。
お読みいただきありがとうございます。
今回は閑話という事で高尾クンの迷惑っぷりがわかる話の一部を書いてみました。
なお、次話の投稿予定については未定です。
(スイマセン、全く原稿に手がついていない状態です。)
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P.S.7月の3連休に半ば拉致に近い状態で連れまわしてくれた我が幼馴染も高尾クンと似たような行動をするのは勘弁して欲しい(´・ω・`)
美術系の学科通っていたから額縁とか文具系詳しいでしょ?って理由でポスターを飾るための額探しからアキバとか詳しいでしょ?って理由でお宝ショップ(しかも24時間営業なとこ多し)巡りにまで巻き込まれる羽目に・・・_| ̄|○