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第三十話 次なる目的地

 ユウタはピオーネに手紙を差し出す。ピオーネは手紙を開いて中を読む。「チッ」と舌打ちして手紙を片手で持つ。手紙は黒い炎に包まれ燃え尽きた。質問には答えてくれそうだが、丁寧な対応は期待できない。


 ピオーネは団子に手を付けて質問する。

「ラウの頼みはわかったわ。それで何を聞きたいの。わかることなら教えるわ」


「強くなるにはどうしたいいですか?」


 軽く下を向いてフウとピオーネは息を吐いてから怒った。

「強くなる方法を知りたいならなんでラウに聞かないのよ! なんで私なのよ」


 言われりゃそうなんだが、相槌を打ったら、ぶん殴られそう雰囲気だ。


「強さというのは、戦いの強さではなく。悪魔としての強さですよ。技術じゃないんです。世の中を生き抜く強さです」


 とっさのユウタの言葉だが、ピオーネは納得した。

「そういうこと。なら、いくつか質問するわ。ユウタは何を知っているの?」


 漠然と問いかけれても困る。なんに付けてもピオーネより知っている知識はない。

「何も知らないに等しいです」


「次の質問。ユウタはこの世に存在するの? するというのなら証拠はある?」


 実に賢者的な質問である。正解はわからないが、待たせてはいけない。

「僕は存在します。僕が存在しないとすると、答えを考えている僕がいるのがおかしい」


「最後の質問よ。オールド村を動かすにはどうしたらいい」


「何も必要ないですよ。僕が何もしなくても村は動いています。村では人や悪魔が生活しています。歴史を見れば村が、停まっていたことはないでしょう」


 ピオーネは団子を食べ終えてから語る。

「ユウタに必要なのは哲学ね。哲学デーモンなんだから、哲学すれば強くなるわよ」


 なんの参考にもならない答えだ。剣闘士デーモンなら剣を学べ。黒魔術デーモンなら黒魔法を学べといっているようなものだ。当たり前過ぎる。ピオーネは適当にあしらおうとしているのではないか?


 ユウタの顔を不機嫌にピオーネを見る。


「わかっていないようね。ユウタを強くするのは哲学なのよ。悪魔生哲学を学べばおのずと強くなるの。やりかたがわからないなら、無駄知識を増やして、忘れていけばいい」


 有難いような、中身がないような、答えを貰った。金貨七枚分の価値がある教えとは思えないが、怒っても金は戻ってこない。


「ありがとうございます。道が拓けました」

 礼を言ったら即座にピオーネから怒られた。


「嘘ばっかり! なんもわかっていないでしょう。知ったかぶりすると、痛い目を見るわよ。ラウの紹介じゃなければ放り出するところね」


 心の中を言い当てられたが、別に深い洞察とも思えない。

 ピオーネはユウタに指示した。


「具体的に教えるわ。村に戻って竜宮城の仕事を見つけなさい。仕事の内容はなんでもいいわ。トイレ掃除でも、賄い作りでもいい。ただし、仕事の内容は給与では選ばない事」


 かなり具体的な内容である。お手伝いさんの仕事で、哲学が学べるとは思えない。まして強くなるわけでもない。どのみち金を稼ぐために村に戻る必要はある。


 ならば、次の働き口として探してもいい。ユウタは『オールド』の村に戻って、ララーを探す。

 占い師の姿で村に戻って来るララーを見つけた。


「生活費がないから竜宮城で働きたいけど、紹介できる仕事はあるかな?」

「体操をしていた広場の掲示板を見たらいいわ。運が良ければ求人が貼ってあるわよ」


 体操広場に行き掲示板を確認する。竜宮城での警備員の求人があった。だが、紙が古い。まだ募集しているか疑わしい。


 おばさんがやってきた。おばばさんは警備員の求人を剥がした。おばさんが警備をするのかと意外だったが、違った。


 おばさんは警備の求人の紙を剥がすと、新しい求人の紙を貼る。新しい求人の紙には清掃員募集とあった。給与は警備員より低いが、ユウタはポンタに負けた分際である。


 普通の街ならいざ知らず、竜宮城で警備員が勤まるとは思えない。


 ユウタはおばさんに声を掛けた。

「この清掃員の仕事をやりたいんですが、どこに行ったらいいですか?」


「あそこに立っている女中さんがいるだろう。あの人に聞きな」


 おばさんが指さす先にはそれらしき人が立っていた。女中さんは歩いていたので追いかける。女中さんの歩く速度は思ったより速い。遅れないようにユウタは走って追いついた。


「竜宮城での清掃員の仕事をやりたいんです。雇ってください」


 振り向いた女中さんは狼女だった。女中さんは振り向くなり大きな声で吠えた。

 いきなりのことなので、ユウタは驚いた。女中さんはユウタを見る。


「私の咆哮で動きを止めない。怯えもしない。いいだろう。従いておいで、雇ってあげるよ。竜宮城には声が大きい悪魔がいる。訛りもある奴が多い。でも、怒っているわけじゃないから」


 大きな音にビクビクするような悪魔は雇えない。職人や漁師の中には口が悪く、声が大きい人がいる。でも、本気で怒っているわけではない。


 荒っぽい口調がダメな人材には勤まらないから、女中さんがユウタを試した。

 いきなり大声を出されると驚くが、わかっているなら問題ない。そういう職場だ。


 狼女は自己紹介をする。

「私はカロリーナ。見ての通りの狼女よ。寮の管理をしているわ」


「僕はユウタです。哲学デーモンです。悪魔の姿になったほうがいいですか?」

「止めて、人間のサイズでいて。竜宮城まで行く乗り物は狭いから」


 竜宮城に行く乗り物がある。未知なる出会いに心が躍る。広場の先には亀型陶器ゴーレムがあった。人間サイズなら八人乗れる。亀形陶器ゴーレムには横から乗るドアがあった。


 室中には悪魔はいない。代わりに布がたくさん置いてあった。ユウタが後部座席に乗ると、余分なスペースはない。悪魔サイズならとても窮屈だ。


 操縦席に座って、カロリーナが説明する。


「村に来た目的は生地を運ぶためなのよ。ついでに求人票を貼るように頼まれていたわ。人を乗せて帰る予定がなかったから、狭くても我慢してね」


 雇う側としてもこんなに早く人が見つかるとは思っていなかったケースだ。


 亀型陶器ゴーレムのドアが閉じると、室内灯が赤く点く。亀形陶器ゴーレムがプルプルと震え空を飛ぶ。窓から見ると、『オールド村』が小さくなる。ユウタは新たな仕事のため竜宮城へと向かった。


【了】©2018 Gin Kanekure

2025.9.20 同作品の姉妹作品のキルア編も明日から再開します。

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