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第二十六話 育成バトル

 早朝の広場で体操が行われる。体操自体はゆっくりした動きなので、体に負担が掛からない。老人から子供までできる体操だ。和気藹々と楽しい時間だった、二人の老人を除いてはだ。


 老人の一人は人間だった。禿げた頭に皺のある顔。身長は二mを優に超えて筋肉はムキムキだ。ロック・カメレオンと一人で戦っても一分あれば余裕で勝てそうな気配すらある。


 もう一人は悪魔だった。白髪に白い髭。小さな二本の角に紫色の肌。身長は百五十㎝にも満たない。羽はないのにフワフワと浮いている。魔王の知恵袋のような気配すらある。


 二人は体操が終わると、ユウタのほうに歩いてくる。トラブルの予感しかしないが、いきなり逃げ出すのも失礼だ。


「ちょっと待ってね」


 ララーは短くユウタに頼むと広場の人の中に進んでいく。二人の老人はユウタの周りをゆっくりと回る。獲物を仕留める猛獣の気配だ。襲ってはこないが、老人から立ち昇る闘気で気分が悪くなりそうだ。


 ユウタの周りを歩いた老人が停まる。二人は何かを考えているが、ちょっとわからない。現実では一分に満たないが、とても長い待ち時間になった。


 ぼーっとした感じの少年をララーが連れてきた。少年は丸い顔で覇気がない。身長も人間サイズのユウタより低い。少年はだらりとした立ち姿なのだが、芯が通った姿勢だった。


 ララーが老人たちに説明する。

「こっちがユウタです。こっちがポンタです」


 少年の名前はポンタなのは理解した。だが、なぜ連れてこられたのかわからない。ポンタの顔を見ると、ポンタもユウタの顔を見ていた。


 目が合ったので互いに軽く会釈をする。互いに相手の名前はわかったが、なんでここにいるのかわかっていない。


 次にララーがユウタとポンタに説明する。

「人間の方がラウ老師。悪魔の方がロロン導師です」


 老人の名前もわかった。だが、何が起きるのかわからない。

 ポンタとユウタにララー説明する。


「ポンタさんと、ユウタさんはラウ老師かロロン導師の元で一週間修行を受けてもらいます。修行後に決闘をお願いします」


 ララーの言葉にユウタは驚いた。ポンタも驚いていた。ラウ導師とロロン導師は驚かないので弟子になる側だけが何も知らない。困惑するユウタとポンタにララーが説明する。


「ラウ導師とロロン導師はどちらが優秀な師匠であるかを決める勝負をするんです。ポンタさん、ユウタさん、どちらを師匠にするか選んでください」


 話はユウタとポンタの意向を無視して進んでいる。


 ラウ導師が胸を張って告げる。

「本来なら金を貰っても技を教えん。今回はロロンとの決着のため特別じゃ」


 ロロン導師も強気だった。

「さよう、一週間といえどワシに教えを請えるとは光栄に思え」


 態度がデカイ老人たちだった。強さを兼ね備えているので強者の態度ではなる。

 勇気があるのか、ポンタがラウ導師とロロン導師に尋ねる。


「弟子に教えるのではなくて、お二人で戦われて優劣を付けてはどうでしょう」

「僕もそう思った」と心の中でユウタは相槌を入れる。


 ポンタの言葉にラウ老師とロロン導師が視線で火花を散らす。


 慌ててララーがポンタの提案を拒否する。

「ダメです。ラウ老師とロロン導師が本気で戦えば余波で村に被害が出ます」


 指摘されれば、起きそうな事態である。共に戦えないから、弟子を育成して戦わせる。召喚獣を手に入れて、育成して戦うゲームのようだ。


 老人たちの喧嘩のダシにされるのはユウタは抵抗があった。


 ポンタは違った。ポンタは物怖じしないのか話を進める。

「修行して決闘するのはいいのですが、賃金は発生しますか?」


 ニコっと笑ってララーが答える。

「修行を終えれば金貨七枚。決闘に勝てばさらに金貨七枚です。ただし、修行中に逃げ出せば報酬はゼロです」


 ポンタは報酬に異論はないのか更に質問する。

「決闘方法の決着はどうするんです?」


「ギブアップか、KOで決着です。師匠がストップを掛けても勝敗が決着します。事故死はあるかもしれませんが、殺し合いではありません」


『事故死がある』とララーが言ったが、誰も気にした様子はない。ユウタが育った環境がぬるま湯だったのか、と思えるほど問題視されていない。


 オールド村は設備は発展しているが、村人の頭の中は戦国時代だった。


 ポンタがユウタをチラリと見て尋ねる。

「ユウタさんはラウ老師とロロン導師どちらを希望しますか?」


 完全に老人による育成バトルをやる流れだった。ユウタとしては考えたいが、そういう空気ではない。「やらない」の選択をするなら。今しかない。


 だが、陶器ゴーレムの件で思い知った。戦闘を教えてくれるのなら、学んだ方が得だ。授業料を払うのではなく、金までもらえるのなら「やる」を選んだ方が利口だ。


 参加を決めたユウタは必要な質問をする。

「ラウ老師は格闘術。ロロン導師は魔法を教えてくれるのでしょうか。育成方針とかありますか?」


 ラウ導師がユウタを一瞥して答える。

「お前程度の強さなら、格闘も魔法を教えられる。育成方針は修羅の如くかだ」


 ロロン導師が次いで答える。

「ワシは技術は教えん。勝てる方法を見極めて伝授する。育成方針は羅刹モードじゃ」


 どちらを選んでもえらいしごきが待っている。また、どちらを選んでも魔法でも格闘でも問題なく教えられる。達人の域に達した二人なら、レベル六ごときに教えるなら、武器戦闘でも遠距離でも、魔法でも可能だ。


 ポンタを見ると、どうぞお先にといわんばかりに手でサインを送ってきた。譲り合ってはいけない。老人は気が短い。怒らせると修行で仕返しされる。


「僕はラウ老師がいいです」とユウタが決めるとポンタも決断する。

「私はロロン導師でお願いします」


 すんなりと師匠は決まったが、決闘はすんなり行きそうにない。勝ち方を教えると宣言していたロロン導師の教えを受けるポンタは強敵だ。お互いに知り合いではないので、手加減なしにもなる。


 ラウ老師はユウタに命じる。

「修行開始じゃ。屁理屈ロロンの弟子をぶっ倒すぞ」


 ロロン導師もポンタに命じる。

「精神論者のラウの弟子をボコボコにする力を授けるぞ」


 師匠側の二人はやる気だ。途中で逃げたら報酬なしの条件ならポンタは逃げない。ラウ老師の性格なら下手にユウタが逃げれば、追いかけてきて殺されるかもしれない。


 先頭を歩くラウ導師の背中に危機感を覚えた。弟子育成バトルが始まった。

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