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第二十四話 やってきたよオールドの村

 道の真ん中で突っ立っていても意味がない。さっさと着替えて人間形態になる。占い師の後を追う。一本道なので進むと霧が晴れてきた。先は別れ道になっていたが、占い師トリオが右に進むので従いていった。


 十五分ほど進むと森が開けた。開けた先には村があった。霧が薄くなってきたので、霧は時間で消える。


 家が六十軒くらいしかないので規模的に村は小さい。村の中には獣人の姿も人間の姿も見えた。どちらがどちらを支配しているといった様子ではない。人と悪魔が共存している村だ。


 村に着くと三人の占い師がフードを取る。


 三人とも背格好は同じだが、顔も年齢も違った。姉妹でも親子にも見えない。占い師の中で一番若い女性がユウタに近づいてくる。女性は丸顔で年は十四くらい。


 金色の髪で白い肌の女性だった。女性はニコっとして勧める。


「この村について簡単にガイドをしてあげましょうか。ガイド料は銀貨二枚です」


 声でわかった。目の前の少女は先ほどに会った三番目の占い師だ。占いの内容がいい加減だったので、ガイド内容もあまり期待はできない。臨時収入で十銀貨貨幣をもらったので余裕があるから払った。


 少女は慣れた口調で話す。

「オールドの村は元悪魔領でした。その後に支配者が人間に代わります。その後も支配者が色々変わって今は放棄されました」


 村の雰囲気はのどかだ。打ち捨てられた廃村にしては空気が明るい。

「支配者が色々と変わった理由が知りたいな。争ってまで手に入れたい土地なんですか?」


「いいえ。なんとく自分たちの勢力圏に加えたいと権力者は考えます。どちらの陣営も占領した後から、占領にあまり意味がないことに気付いたんです」


 役人を置いても捨扶持になる。コスト面で採算が取れない。だから、争うのを止めた。


「戦争で奪いあった場所ではないのか。互いに占領と放棄を繰り返した。結果、支配勢力の看板だけがコロコロと変わったのか。珍しい村だな」


「村の状態は良く言えば中立。悪くいえばどっちつかず。ぶっちゃけていえば、村の帰属はどうでもいい状態です。村人も気にしていません」


 平和の形態としては説明が付く。

「それでよく村が成立しますね」


「村の状況ですが、諸事情により交通の便が悪いんです。村の外れには悪魔の世界から来れる一方通行の駅があります。さっきのように悪魔だけを迷わす迷いの霧も出ます」


 悪魔は来ても簡単に帰れない。下手すると霧のせいでしばらく村から出られない。人間は霧の影響を受けずに来れる。されど、いつ、どんな悪魔が、どれだけ来るかわからないから。統治する側は不安になる。


 ガイドの説明で疑問に感じる。僻地の村だが、寂れていない。むしろ、発展している気がする。ユウタが村をキョロキョロと見ていると、ガイドが教えてくれた。


「人間や悪魔どちらも支配するには不向きなんですよ。ただ、悪魔領から荷物は送れるので、生活必需品は届きます」


「支払いはどうするの? 一方通行なら代金を回収できないでしょ」


「送金は銀行振込です。自動オートマチック銀行テーラ怪物モンスター。通称ATMがあるので送金できます」


 そんな便利な設備があると初めてユウタは知った。

「安全にお金を預けられる銀行が存在するの? それなら悪魔にとっては嬉しいな」


「村にATMを置いた銀行はプライベート・バンクです。レベル十ないしは、レベル十二の悪魔から紹介されたレベル八以上の悪魔、でないと口座が開けません」


 貧しい小口客はお断りされる。プライベート・バンクなら預金量が少ないと口座管理料が発生する。

現金振込をするだけなら銀行口座はいらない。


 物資を送っている悪魔が口座を持っていれば悪魔に送金はできる。村の経済が気になった。

「生活必需品は手に入る。でも、支払いに使う金はどうやって稼ぐの?」


「働き口はあるんですよ。村から離れた湖の底にドラゴン・パレス・キャッスルがあります。地元の人は竜宮城の愛称で呼んでいます」


「それだと、人間に狙われるでしょう」


「竜宮城には強力な侵入阻止魔法が掛けてあります。特殊な条件を満たさないと人間の侵入は無理です。人間が竜宮城に入れる条件ですがよくわかっていません」


 竜宮城に攻めいろうとしても人間は簡単に入れない。時間を掛けて攻略しようにも、村を拠点にはできない。竜宮城で働いている種族から不審者情報が来れば村の人間は誰も相手にしてくれない。


 無理に村を制圧しても無駄だ。入金がないと悪魔側が異常を察知する。制圧が発覚しないようにするのは困難だ。


 緊急時にATMでの送金時に振込人欄を『SOS』にするなどの決められた隠語で合図を送る。そうすると、悪魔側から賞金稼ぎみたいなのがやって来る。


「名前を教えていただければ、竜宮城への働き口の斡旋はできますよ。竜宮城では、DPCブランで水を作って売っていますから」


『城』と付くけどダンジョンではない。飲料会社の社名だ。買うと高い水かもしれないが、略奪するほどの価値はない。水は奪っても重いだけの品だから人間もこない。


 急ぐ旅でもない。旅費も乏しいのだから村で働くのも有りだ。

「住み込みで働ける場所はありますか?」


「自分探しの学生がワーキング・ホリデーで来るのでありますよ。保証人なし、短期間用の住居はあります。私の家も下宿なので泊まれますよ」


 田舎イコール遅れてていると考えてはいけない。小さな村だが、下手な街より進歩している。

「僕の名はユウタと言います。下宿を見せてください」


「私の名はララーです。家に案内します。下宿の借り上げは一週間単位です。料金は部屋によりますが、安い部屋で十銀貨からあります。あと別料金で朝食が出ますよ」


 家賃相場がわからないが、払える金額ではある。村は荒んだ雰囲気ではない。住所不定では雇用もままならない気がした。


 下宿をやっているだけあって、ララーの家は大きな家だった。ララーが家に入る。ユウタは玄関で待った。ララーが鍵を持ってやってきた。家に入ってすぐの大階段を上がる。二階には長い廊下があった。


 ララーは一番奥の部屋を見せてくれた。部屋は小さな窓が一つの板の間だった。六畳一間のワンルームだ。


 最低限の家具は付いていた。三段のタンス、丸いテーブル、椅子、木でできた簡易ベッドがある。家具は古いがしっかりしている。家具の具合を確かめていると、ララーが質問する。


「この部屋が十銀貨です。隣の部屋も空いていますよ。家具は変わりませんが、少し広いので家賃は十三銀貨です」


 六畳一間でも問題はない。収納はタンス一つで足りる。寝るだけの部屋になるので、一人なら充分だ。ユウタは部屋を決めると、鍵を渡される。


「仕事の先も紹介しましょうか? そこまではガイド料の内です」

 雇うほうにしても、紹介者がいたほうが安心できる。ララーに頼ったほうが賢い。


「頼むよ。そこそこ器用にできるよ。居酒屋で働いていたからね」


 ララーに連れていかれた先は焼き物を作る場所だった。大きな窯があるので。窯業を営んでいる。窯場の周りには食器の類はない。大きな胴体や、手足、頭の陶器パーツがある。


 ララーが窯の前に入るグレー・オーガに声を掛ける。

「ドドンパさん、お手伝いさんを連れて来ましたよ。雇ってくれませんか?」


 ジロリとドドンパはユウタを見る。

「ダメだよ。こんなひ弱な人間じゃ。重い物を持てないだろう。手伝いなんかにゃなりゃしない」


 勘違いされては困るので。ユウタは上着をさっと脱いで変身した。

「強くはないですが、そんなに弱くはないですよ」


 ドドンパはジロジロとユウタを観察する。

「ガタイはいいな。よしなら試してやる。従いてこい。ウチのゴーレムを壊せれば合格だ」


 いきなりのバトル展開だが、見くびられたままでは癪だ。ゴーレムくらいなら何とかなる。

 ドドンパに従いて行く。地面を掘り下げた空間があった。深さは五m、広さは直径十mと広くない。


 悪魔は体格がいいので、悪魔サイズの土俵といった感じだ。ユウタが下りると、ウイーンと音を立てて卵型の陶器が飛んできた。卵は地面に下りると変形して人型になる。


 陶器ゴーレムの大きさはユウタより一周り大きい。


 陶器ゴーレムの顔には三つのガラス製の目が嵌っていた。飛行形態からの人型変形で、複眼持ち。初めて見るタイプだが強敵の予感がした。

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