表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

第二十二話 逃げる

 村人がゴソゴソと話をしている。村人にはユウタがルルーを人質に取る理由がわからない。


 下手に刺激せず、食い物と酒を出せばルルーはすぐに殺されない。考える時間があるのなら、急がないで様子を見るつもりだ。


 酒と食い物の準備ができたのか、メルルが運んで来ようとするので止める。

「その女はダメだ! 聖職者の傍にいた。聖なる力を感じる。別の奴にしろ」


 メルルの正体は七レベルの悪魔としかわからない。もし、即死攻撃を持つなら一撃で殺される。勝負が一瞬ならメルルの正体を冒険者にも村人にも知られないで済む。


 白い羽の冒険者とメルルが話す。対応を協議している。メルルはユウタに近付きたいが無理に主張すれば青い記章の冒険者に疑惑を持たれる。白い羽の冒険者がルルーに雇われているのなら、ルルーの安全を第一に考える。


 議論になればメルル一人で十人の冒険者の考えを変えるのは難しい。予想通りに、メルルは下った。白い羽の冒険者が二人でトレーに食い物と酒を乗せ運ぶ。


 冒険者の二人が状況によってはルルーを回収する気なのは明らかだった。


 ユウトはわざと食い物と酒を持った白い羽の冒険者を室内に一歩だけ入れさせた。理由は二つ。ルルーはユウタの傍にいていつでも殺せる状況を教える。冒険者にまだルルーが生きている状況を示唆するためだ。


 白い羽の冒険者にユウタは入口で命令する。

「殊勝な心掛けだ。約束通りに明日の朝に婆を解放する」


 当然の如く、白い羽の冒険者は尋ねる。

「なんで明日の朝なんだ? 本当にルルー様を解放するのか」


「婆を解放するのは本当だ。馬鹿な真似は考えるなよ。明日になると埋蔵金が手に入るんだ」

「金が目的か! 進化する気か」


 勘がよくて助かる。


「よくわかっているな。おっと、金をどこかに集めて隠そうと思うなよ。俺の仲間が常にお前たちの近くにいる。村の中を見張っているからな。村の金は後で仲間と折半する気だ」


 目的が金で、村の中には他に悪魔がいると教えておく。メルルが理由を付けて村中の金を集めようとしていたら、メルルは疑われる。


 白い羽の冒険者は村人の中に戻った。窓から外を覗くとメルルが憎々し気にユウタを見ている。ここまでは問題ない。だが、メルルの表情からしてまだ諦めていない。


 食い物は、豚グリルにパン、瓶に入った酒だ。豚肉を食べると美味しかった。パンは保存が効きそうなので、袋に入れておく。破れた服の代わりを見つけて着替えも袋に入れる。


 ルルーを見るとグッタリしている。寝たふりをしているのはまるわかりだ。頭のおかしい聖職者だと思ったが、生命の危機に際してはまともになった。


 わざとらしいかなと、思うがルルーに聞こえるように独り言を繰り返す。

「金だ、埋蔵金だ。この家の下に埋蔵金がある。地下二mだ。明日の朝になれば手に入る」


 ルルーにはしっかり聞こえている。ユウタはルルの帽子から白い羽を取る。大金貨十枚と一緒に埋める用の袋に入れた。こうしておけば、後で金が見つかっても白い羽の誰かの物とわかる。


 外が暗くなる。辺りで篝火が焚かれる。村人の輪は小さくならない。下手に眠ると、もう目が覚めない事態を危惧している。空を見上げれば月は出ていない。


 今日が新月で、ギリメカラへのレベル・アップ・セール期間だ。


 このままでは埒が明かないとメルルが動く危険性がある。ユウタはルルーが寝たふりをしているルルーの口が自由になるようにする。着替え、食料、メルルの金が入った袋を持つ。


「帽子の中身は返すぞ!」とユウタは叫ぶ。ユウタは床板を力ではがした。悪魔の力ならなんなくできた。バリバリという大きな音がした。


 ユウタは床下からアスオクを使い地中に潜った。地下二mの地点にメルルの金が入った袋を置いた。あとは地面を泳ぐようにして離れる。


 大きく離れた地点でユウタは外に顔を出した。篝火で淡く光る家の方角では騒ぎになっていた。ユウタはそのまま地中を伝って逃げる。


 勘のいいメルルのことだ、自分の金が家の下に埋まっている事体には気付く。夜中に家の下の地面を二mも掘るのは大変だ。掘り出せたとしても、そこから変身して村の金を奪ったころには新月は終わっている。


 ユウタに復讐しようとしても、メルルはユウタを発見できるかわからない。ユウタに拘って家の下を掘らないと、所持金を人間に持ち逃げされる危険性が大きい。


 メルルが復讐を優先して、損失を膨らませるとは思えない。

「賭けといえば、賭けだが。僕を追わない動機にはなる」


 メルルは死んでいない。また悪事を企むだろう。止めるなら命懸けである。メルル討伐を行うほどの報酬は貰っていない。少なくとも村の危機は一度止めた。アンナの依頼には応えた。


 朝になったが、メルルには見つからなかった。地上で着替えてまた顔を少し変える。


 メルルがこの一帯をテリトリーにしている可能性を危惧する。ユウタは『ヘンキョウノ街』に行かない。できるだけ遠くに歩く。


 日数が経ち、パンが尽きた頃には道標がある十字路に出た。メルルとはついに合わずに済んだ。


 道標には『オールド村』『ヒキョウ村』『ツギノノ街』とある。行く先は決めていない。どこに行ってっても同じ。『オールド村』が一番近そうなので『オールド村』と進む。


『オールド村』への道は整備されていなかった。さっきまで晴れていたのに空が不自然にくもってきた。おかしな霧もでてきた。


 更に進むと。どこからか「ユウタ、ユウタ」とか細く呼ぶ声が聞こえる。単なる風の音の聞き間違えかもしれない。


「こういう時に進んで行くと霧は濃くなってくる。それで不思議な村とか家に着くんだろうな」


 予感を胸に進む。思った通りに霧が深くなってきた。歩いても村や家に着くことはなかった。さらに進むと何やら人影が見えた。近づくと道端にテーブルと椅子を置いた簡易露店が見えた。


 簡易露店の主は黒のローブを着て座っている。ローブはフード付きだった。フードを深く被っているので店主の顔は見えない。


 襲って来る様子はなかった。テーブルの前に黒板がある。占い一回、銀貨二枚と書いてある。店主は占い師だ。なんでこんな場所に占い師と思う。


 占い師からは話し掛けてこない。いかにも怪しいが、一度は無視する。

「またここへ戻って来るんだろうな」


 振り返れば、占い師が見えなくなっていた。先に進むと人影が見えた。近付くとや、はり黒いローブを着た占い師が簡易露店を出している。


 先ほどの店と違う点が一つあった。黒板の料金が銀貨二枚と銅貨十枚に値上がりしていた。占い師はやはり何も言わない。


 試しにまた、霧の中を進む。進んだ先に占い師がいる簡易露店があった。料金を書かれて黒板を確認する。料金が銀貨二枚と銅貨二十枚に上がっている。


「うまいことやるな」とユウタは感心した。いつかは話し掛けなければいけない。下手に粘ると料金がドンドン上がっていく。早く話し掛けろ、との無言の圧力だ。


 相手の策に乗るようで気が引けるがユウタから話し掛けた。

「占いの料金って時間と共に上がっていくんですか?」


 占い師から若い女の声がした。

「物価上昇の世の中です。インフレと不景気が同時に来ています。サービス業とて、値上げしないとやっていけません」


 異常な状況で、普通ではない占い師から、まともな内容を諭された。ユウタの財布には金がまだ入っている。この先の展開によっては占いを何度もしなければいけないかもしれない。


 物は試しと決断した。お金を出してテーブルに置いた。


 占い師は白い手袋をした手で料金を回収した。占い師が座れというように椅子を指し示す。座る前に椅子を調べるが、罠の類はない。座ると占い師が占いを始める。


「貴方は今、霧の中で進むべき道に迷っていますね」

「見りゃわかるでしょう。迷っていますよ」


 占いで当たり障りのない内容を告げる占い師はよくいる。だが、これではインチキ占いですらない。現状を告げているだけである。目の前の占い師はインチキ以前の気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ