第十三話 特殊レベルアップ
ラーシャが指を軽く鳴らす。粗末な木の机と椅子が現れた。ラーシャは不機嫌に告げる。
「次からは最低限、椅子と机がある場所に呼んでちょうだい。礼儀を知らないなら、その体に叩き込んであげてもいいわよ」
「机とテーブルは努力します。ちなみに。さっきここにラーシャさんを召喚した男の人は誰ですか? 凄そうな方だとは思うのですが有名人ですか?」
ラーシャがユウタを見下した顔で告げる
「低レベル悪魔は知らなくていい存在よ」
高位悪魔だと予想できた。別に知らなくてもいい。今の段階では困らない。
ラーシャがむっとした顔で催促する。
「それで、レベルアップに必要な銀貨は手に入ったの」
「ここに」と受け取った金貨を提示する。
ラーシャが金貨に手を翳すと、八十枚が消えて二十枚が残る。
お金は大事なので、財布にしまう。
「金貨が八十枚。銀貨にして八千枚ね。なかなか幸運な悪魔生を送っているようね」
「巡り合わせだけはいいといいましょうか。選択が成功しているんでしょうね」
ラーシャが突っ慳貪な態度で返す。
「どうでも、いいわ。さっさと、レベルアップを済ませましょう。ユウタはこれでレベル五よ。ここで悪魔の派生先を選べば、また悪魔に戻れるわ」
「とりあえず、派生先を教えてください」
五枚のカードには簡単な説明が書いてあった。
『メジャー・デーモン』下級悪魔を率いる下級悪魔の管理職。下級悪魔はここで卒業。
『天才』人間系種族だが、善人とは限らない。この派生を選ぶと人間系種族に生まれ変わるが、一レベルに戻る。ただし、天才の恩恵は引き継げる。種族は人間扱いだが、悪の道に進むと、社会的に悪魔と看做される。
『ゾンビ・マスター』四レベルまでのゾンビ系モンスターを造れる。ゾンビ・マスターと一緒に行動するゾンビは、普通のゾンビより強い。
『忍者デーモン』隠密行動や諜報活動に長けたデーモン。即死攻撃がある。
『哲学デーモン』賢い六レベル悪魔。狂人から派生した場合はそれほど賢いとも言えない。『マジピム・ロジデン』の力があれば、四レベルから特殊進化で到達できる。
「『哲学デーモン』だけレベル六か。これが辺境スローライフへの一番の近道だな。でも一応、他も考慮するか」『哲学・デーモン』だけ横に避けて考える。
「『ゾンビ・マスター』はないな。ゾンビにそれほど愛着がない。『天才』も要らないや。人間を見てきたけど、それほどいいものではない」
机の上から『ゾンビ・マスター』のカードと『天才』が消える。
「『メジャー・デーモン』もないかな、おそらく一般人にしたら脅威なんだろうけど。これは仲間がいないと、やっていけない気がする」
机の上から『メジャー・デーモン』のカードが消える。
「『忍者デーモン』が即死攻撃ありで、隠密諜報に長けているなら、四つの中でこれが一番いい。だが、今回は五枚目の『哲学デーモン』がある」
レベル五の『忍者デーモン』とレベル六の『哲学・デーモン』の二択だった。
「質問があります。『マジピム・ロジデン』って、四レベルの狂人を六レベルの『哲学・デーモン』に上げるための本ですか?」
「狂人を特定進化させるの書物よ。ここで温存しても五レベルを七レベルに上げたりはできないわ。そもそも『狂人』でないと、『マジピム・ロジデン』は使えないわよ」
「今回限定か。限定品とかに弱いんだよな。ちなみに『哲学・デーモン』って、どれほどの強さですか」
ラーシャが冷たい態度で、素っ気なく告げる。
「新米冒険者が六人なら全滅できる強さよ。ただし、『哲学・デーモン』の強さは魔法によるところが大きいわ。魔法を覚えていないと弱いわよ」
「あれ? 魔法って、どうやって覚えるの?」
ラーシャが呆れた顔で投げやりに発言する。
「魔法はお金を払って覚えるに決まっているでしょう」
「ラーシャさんにお金を払えば、魔法を覚え得られます?」
ラーシャが怒った顔で否定する。
「私は魔法屋じゃないわよ」
「人間世界なら、どうやって魔法を覚えるんですか」
「金を払って人間に教えてもらえばいいわよ。中級魔法まで人間も悪魔も一緒よ」
残りの金貨は二十枚ある。魔法の価格はいくらか知らないが、お金がなくて買えないはないだろう。一気に二レベルアップが特に思えた。
当初の目的もレベル六だった。ここからはレベルアップのために金を貯めるのは難しい。
適当に旅行しながら魔法を覚えたほうがいい。世界についてわかったら。人間に化けて暮らすなり、国に帰って辺境でスローライフするなりしよう。
机の上から『忍者デーモン』のカードが消える。壁にあった『マジピム・ロジデン』も消える。
「行くわよ。なら、あなたは今から『哲学デーモン』よ。あと次はレベル七だから、金貨にして三百二十枚必要だから覚えていてね」
体が熱くなる。身長が二mまで伸びて、がっしりとした体になる全身には熊のような黒い毛が生えた。蠍のような尾も生え、背中からは蝙蝠に似た強靭な翼が生えるのがわかった。
部屋にあった鏡を見ると、白髪で八十歳くらいの老人の顔があった。
「体は逞しいけど、顔は老人なのか」
ユウタは期待を込めて尋ねる。
「さてそれではお待ちかねの、悪魔神様から貰えるギフトのほうは?」
ラーシャが気の良い顔で教えてくれた。
「今回、貰えるギフトは、二つよ。一つは『天才力』常識では出させない力が出るようになるギフトよ。『マッド・パワー』と違って、自分の意志で発動タイミングを選べるわ」
「むっちゃ強力なギフトだ。もう、一つは何ですか」
「もう一つは『天啓』よ。一般人には理解不能な、凄い閃きをするわ。ただし、こちらも使い時を選べるわ」
「凄く便利なギフトですね。これ『哲学デーモン』が正解だな」
ラーシャが感じの良い顔で教えてくれた。
「『天才力』と『天啓』は一日に使える回数に制限があるわ。合計二回よ。『天才力』を修得すると『マッド・パワー』が『天啓』なら『狂人の閃き』が消えるわ」
上位互換を修得すると、下位が消えるのは問題ない。
「いいね。実にいい。これこの狂人からの哲学・デーモンのルートが正解だったな。『天才力』と『天啓』の両方ください」
涼しい風が吹き抜ける。ユウタの体がほんのり温かくなり、ギフトが宿った気がした。
ラーシャはレベルアップを終えたので、消えた。
ユウタは残っていた食料と水をバックパックに詰める。ユウタは着替えようにとって置いた。服とサンダルを選んで持つ。病院の地下から出た。悪魔に戻ったユウタは、暗がりもよく見えた。
外に出ると月が綺麗な夜だった。夜の闇からは時折『ポイズン・ゾンビ』に呻き声が聞こえる。
『ポイズン・ゾンビ』に絡まれる前に翼を大きく拡げてユウタは空似飛び上がった。悪魔の翼は鳥の翼と違い、垂直方向にも自由に飛べた。
「風が気持ちよく、月が綺麗な晩だ。次の街の旅立ちには、いい夜だ」
空高く飛び上がると、次なる目的地を目指して、ユウタは夜の空を飛んでゆく。
本作品をここまで応援していただき、ありがとうございました。
七日間連載を続けてきましたが、本作品は面白くないようです。
真に残念ですが、今回の話をもって完結とさせていただきます。
次はもっと皆様に楽しんでもらえるように、努力したいと思います。
それではまた、次の作品でお会いしましょう。
2018.7.26 まだ、読み足りない方は新作の『あくまで悪魔デス。いけるとこまで金の力でレベル・アップ~【キルア&ユウタ】編~』をお勧めします。
2025.9.3 急に続きが書きたくなり加筆します。第14からは加筆分です。




