ヘイそこの激マブなねーちゃん!
お久しぶりです。
まだ忙しいのですが、慣れていかなければならない類の忙しさなので更新再開します。
うえっ⋯⋯きもちわる⋯⋯。
運営はなんだってこの魔法にこんな欠陥を作ったんだ⋯⋯。
「───いやっ!」
ん?
「チッ! 静かにしやがれ!」
「誰か───!」
んんー?
なんだこのテンプレみたいな会話。
そっと路地の曲がり角から奥を覗いてみる。
「へっ! NPCごときがプレイヤー様に逆らってんじゃねぇぞ!」
「むぐっ───!」
行き止まりとなっている通路の奥で口を塞がれてる女性NPCと、それを囲う5人の男プレイヤー。
このゲームR15だから大丈夫だよね?
最初から見ていたわけじゃないから、介入するのはあまりよろしくないんだが⋯⋯あの駄メイドの手前、見捨てるのも心苦しい。
とりあえず静観で。
「NPCが殺そうとしてくるとかマジクソゲー」
「んな。こいつが雑魚でよかったわ」
おいおい、まさかの女性が仕掛けた側?
「ナントカの仇とか叫んでて笑ったわ」
「一々殺したNPCのことなんか憶えてねーっつーの」
あー、そういう。
それは自業自得なのでは?
「ってェ! こいつ噛みやがった!」
「おい、さっさと殺そうぜ!」
拘束から逃れて倒れた女性の顔が見えた。
静観、
「───なんて出来ねーよな」
今にも斧を振り下ろさんとしている男の首を、ナイフで掻っ切る。
一瞬おいて、悪態を付いていたリーダー格が柄に手を掛けながら振り向く。
おっ、なかなかいい反応速度だ。他の3人はまだ棒立ちなので放置。
1歩で接近し、柄頭を手で抑える。これで剣は抜けない。
これには咄嗟に反応出来なかったようで、隙ができたところを顎下から頭頂部に向けて鉄串を刺す。
ついでに貰っておいてよかった鉄串。
ここでようやく3人が動き出す。
囲まれても対処出来る自信はあるが、念の為慎重に動く。
1人が先陣を切ってナイフを振り回してくる。
上から振り下ろしてくるタイミングで接近、手首を下から掴んで内側に回す。
そのまま右腕で肘を巻き込み、てこの原理でナイフを弾く。
あとは下顎を叩くように揺らしてノックダウンだ。
残りの2人は今の一瞬の内に起きた出来事が理解できてないようで、呆けたように立ち竦んでいる。
当然その隙を見逃すはずもなく、貫手で1人の心臓を突き刺し、もう1人はヘッドロックにかけて首を真後ろに回転させて終わりだ。
『レベルが上がりました』
いやぁ、やっぱりSTR特化はいいな。
格上相手でも余裕でダメージが通る。
っと、そういえば女性を助けたんだったな。
「おう、大丈夫か?」
「は⋯⋯コホッ! ⋯⋯はい。ありがとうございま───ひっ」
咳き込みながら答えた女性が、こちらを見た途端悲鳴らしき声を洩らす。
あー、やっぱり。
でも二度目なんだしそこまで怯えなくてもいいと思うんだ。
「こ、この前の⋯⋯!」
そうこの女性、最初は顔が見えなかったので気づかなかったのだが、ログイン初日に道を教えて貰った女性だった。
それがわかればどちらに味方するかなど迷うまでもない。
恩は恩で返す。師匠の教えは俺のポリシー。
「あー、こいつの処分もしなきゃいけないし、行った行った」
「は、はい!」
立ち上がったかと思うと、全力ダッシュで逃げていった。
ほんまこの威圧許さんからな。
「あ、あの!」
ん?
「助けて頂きありがとうございます! そ、それでは!」
⋯⋯わざわざ戻ってまで礼をしに来たのか。
本当に人間と変わりないんだな。
むしろこいつらより人間らしいかもしれん。
「おい、起きろ」
下顎スマッシュで気絶した男を蹴って起こす。
「なんであの女性に襲われてた? お前らなんかしたんだろ?」
「し、しらねぇよ! あの女が弟だか何だかの仇ってナイフ持って殺そうとしてきたんだよ!」
「いや普通に自業自得じゃねーか」
「な、なんでだよ! たかがNPCだろ!」
あー、ゲームなら何してもいいと思ってるタイプか。
まあそれも間違いじゃない。が、これは身内用のゲームじゃねぇ。
オンラインゲームには色んな考えの人間が集まる。
特にこのゲームはNPCにだって自我があるのだ。
当然自分の考えだけを押し付けようとする者は嫌厭される⋯⋯。
「なんてな。俺は別にその考えを改める必要はないと思うぜ」
「え?」
「だって俺がお前らを殺すのも、俺自身の身勝手な理由だしな。存分に恨んでくれ」
理解出来ない、といった表情をしている男の口を上下に引き裂いて止めを刺す。
これゲームのポリゴン的描写でも結構エグいな。
さて、もうすぐレベル30だし街の外にでも行くか。
「く、くく」
後ろから聞こえてきた笑い声に振り向くと、顎の下から鉄串を生やしたリーダー格の男が立っていた。
えぇ⋯⋯。あれで死んでないの?
一応継続ダメージは入っているようで、ダメージエフェクトが溢れだしている。
「お前の顔は憶えたからな。俺を『赤波』の一員と知らずに喧嘩を売ったことを後悔しながら過ごせ」
『赤波』ってなんだよ。
それよりダメージエフェクトでお前の顔が光って見えなくなってるのが面白すぎるんだが。
「この借りは絶対に返す!」
あ、死んだ。
『"シェルアックス" "ハイポーション"×3 "機動将のコア"を入手しました』
『210000Gを入手しました』
『EXシナリオ"ヒトのココロ"が発生しました』
『レベルが上がりました』
『スキルを入手しました』
『レベルが上限に達しました』
『職業の変更先を選択してください』
『・殺人狂
・屠殺者
・虐殺者 』
待て待て待て。情報量が多すぎる。ログ見させろ。
まずアイテム。なんかレアそうな物手に入ってるんだけどどうしよう。後回し。
次にEXシナリオとやら。名前からしてNPCの救出がフラグか? 後回し。
スキル入手。レベル30になったからだろう。今確認。
『鬼泣き』 CT 360s
10秒間STRが30%UP。使用後はHPが1になる。
ピーキー過ぎる!
使い心地は要検証だな。次。
上位職への職業変更がきたか。
どうやら変更しないとレベルも30止まりのようだ。
まあわざわざ留まる意味がないからな。
とりあえず1つ1つ確認していこう。
『殺人狂』
殺人鬼の上位職。より凶暴に、より精密に殺しを遂行する。
補正:STRに35%、DEXに30%。
これは単純に殺人鬼の上位職かな。
STRの補正が5%だけ上がってるな。
『屠殺者』
殺人鬼の上位職。人の心を無くした無慈悲な存在。ドロップが増える。
補正:STRに30%、DEXに35%。
ボロクソに言われてるじゃん。
ドロップ増えるのは嬉しいけど、補正がDEX寄りなのか。
『虐殺者』
殺人鬼の上位職。殺戮衝動に身を任せた者の末路。生ける者全てから忌避される。
補正:STRに40%。
なんというか⋯⋯これ以上ないくらいにソロ向けだな。
威圧の効果範囲広がってるけど大丈夫なのかこれ。
プレイヤーにまで避けられ始めたらどうしようもなくなるぞ。
ただこのDEXを捨ててまで得るSTR補正が魅力的すぎる。
⋯⋯よし、決めた。
男は度胸。女は愛嬌。ゲーマーは酔狂ってな。威圧を振り撒くようになったらその時はその時だ。
ポチッとな。
『"虐殺者"に転職しました』
『レベル上限が解放されました』
『スキルを入手しました』
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クイナ 男 虐殺者 Lv.30
HP :250/250
MP :80/80
STR:225(+90)
VIT:40
AGI:60
INT:10
DEX:70
LUC:5
スキル:キルスティール
:威圧
:鬼泣き
:死克
称号 :プレイヤーキラー
下克上
残りステータスポイント:0
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・師匠⋯⋯クイナ様に武術を教えた方のようですが⋯⋯?
・スリップダメージ⋯⋯継続的なダメージです。有名どころですと、毒や電撃、砂嵐や霰でしょうか。
・ダメージエフェクト⋯⋯某剣の世界のように、血液の代わりに赤いポリゴンが散ります。
・赤波⋯⋯大手有名ギルドですね。攻略組から初心者まで幅広く受け入れており、ギルドの名を振りかざして横暴を繰り返す輩も複数いるようです。主に中堅層から嫌われている模様。
・ギルド⋯⋯最大200人まで所属することができるグループです。幾つかギルドによる恩恵が存在しますが、それはのちのち⋯⋯。また、所属メンバーが共用する家を、自宅とは別途で買うこともできます。
・EXシナリオ⋯⋯特殊な条件を満たすことにより、強制進行する特別なシナリオです。報酬は通常と異なる物であることが多いようです。
・殺人狂⋯⋯殺人鬼の上位互換ですね。特段殺人鬼と変わったところもありません。
補正はSTRに35%、DEXに30%です。
・屠殺者⋯⋯転職条件は、素手でキルをする(対象は問わず)。部位を欠損させてキルをする(プレイヤーかNPC)の2つです。ドロップ増加効果はパッシブで発動するので、スキルと合わせて15%の確率上昇効果が付きます。
補正はSTRに30%、DEXに35%です。
・虐殺者⋯⋯転職条件は、プレイヤーとモンスターのキル数が合計で500以上かつ、レベル30までに1度もデスしていないことです。殺人鬼から派生する上位職の中で、最も難しい転職条件となっております。また、威圧とは別の職業効果として、取得経験値が1.2倍になりますが、デスペナルティも1.5倍になります。
補正はSTRに40%です。