私の戦闘力は53です
お待たせしました。
とある方の作品でモチベが上がっているので更新です。
ちなみにMMOの経験はDQとFFしかないです。
「君ってさぁ、ほんとに馬鹿だよね」
「おいそれもう3回目だぞ」
「馬鹿」
4カウント。
やめて! 俺のライフはもう0よ!
今俺たちは宿屋の一室にいる。
周囲の目を気にする必要がないから遠慮もなくなった。罵倒がマシンガンの如く飛んできたよ。
メンタルも顔面もボコボコさ。
「それで。なんで殺人鬼なんてデメリットだらけの職業にしたの?」
「STR補正」
「やっぱり馬鹿だ! どうせ防御とかもジャスト決めればいいとか思って捨てきってるんでしょ?」
完全にバレてるな。
これが以心伝心ってやつか。胸がドキドキするぜ。欠点は外から衝撃が来てるって事だな。
「あのね、殺人鬼って周囲からしたらボーナスキャラみたいなもんなんだよ?
PKerになった殺人鬼をキルすると上位職になる時に騎士系統が選択可能になるとか何とかで、騎士目指してる人はみんな血眼になって探してるよ」
なにそれ怖い。
「ここまで来る時も私がいたから誰も襲いかかってこなかったんだからね?」
そういえば周りの奴らがこっち見てニヤついたと思ったら、コイツ見て青ざめてたな。
バーサーカーとか聞こえた気がしたんだけど何したんだコイツ。
「私はこれでも攻略組だからね」
いえ貴女なら当然だと思いますよ! ええ!
しかし奴は俺の本心からの言葉が気に入らなかったようで、視界が2本の肌色に覆われる。
目がぁああああああああああ!
「い・が・いでしょ?」
イエスマム! 私も意外だと思うであります!
マッドハンド(バイオレンス)は俺の世辞に満足したようで、仲間(俺から生えている)を捻じる作業を止めた。
「それで、君この後どうするの?」
「うーん、結局モンスターが倒せず終いだからまた外行くわ」
「よぉーし、優しい私は手伝っちゃうぞ〜」
優しい⋯⋯いえ、なんでもないですマム。
「ついでにフレンド登録しようよ」
そういやそんなものもあったな。
ぶっちゃけリアルで連絡取れるからそれほど意味はないんだけどな。
「あれ、お前のキャラネなんだっけ」
「え? 頭の上に出てるけど⋯⋯。あー、君もしかして名前非表示にしてるでしょ」
「デフォルトで非表示だったんだが⋯⋯」
そりゃNPCの名前もわからない訳だわ。
早速設定を切り替える。
えーっと、なになに。
『ポムボム』
⋯⋯あれか? 相手を爆発させる的な。
「いっ、いい名前なんじゃないかなぁ」(裏声)
殴られた。
「今回は可愛らしい名前にしたんだよね〜」
あぶねぇ。鼻で笑うところだった。
「お前レベルと職業はどうした?」
「私はねー、聖騎士にした。レベルは124」
「⋯⋯このゲームレベル80で高い方って聞いたんだが」
あとお前聖騎士って多分殺人鬼キルでの派生職業だろ。さっきのは人伝じゃなくて実体験だったか。
「レイドボス戦で毎回MVP取ってたら経験値にボーナスかかってたみたいで凄い上がった」
コイツ攻略組どころかトッププレイヤーじゃねーか!
「これからの戦闘で手出しするなよ?」
「わかってるって。それにどうせ君のことだし苦戦なんてしないでしょ?」
まあ大型じゃなきゃ大丈夫かな。
あっ、そういえばレベル上がった後にステータス確認してなかったな。
多分ステータスポイントが増えてると思うんだが。
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クイナ 男 殺人鬼 Lv.8
HP :90/140
MP :36/36
STR:106(+32)
VIT:18
AGI:38
INT:10
DEX:26(+8)
LUC:5
スキル:キルスティール
称号 :プレイヤーキラー
下克上
残りステータスポイント:20
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コイツに殴られただけで50もHPが減ってやがる⋯⋯。
お? なんかスキルが増えてるぞ。
『キルスティール』
対象をキルした際のアイテムドロップ率を5%増やす。
うーん⋯⋯微妙なかんじだが、まあパッシブスキルのようだし贅沢は言えないか。
あとはステータスポイントか。
ポム子(命名俺)によるとレベルアップでのステータスの伸びは、それぞれの職業によるそうだ。
俺の場合は殺人鬼なのでSTRとDEXとMPが2づつ、HPが5、あとはその他ってかんじだろう。INTが上がらないのは職業のせいだと思いたい。
ステータスポイントの獲得量は全職業で一律されていて、2レベル上がる毎に5ポイント貰えるのだとか。
早速割り振ろう。
─────────────────
クイナ 男 殺人鬼 Lv.8
HP :90/140
MP :36/36
STR:126(+38)
VIT:18
AGI:38
INT:10
DEX:26(+8)
LUC:5
スキル:キルスティール
称号 :プレイヤーキラー
下克上
残りステータスポイント:0
─────────────────
よし。
「いやよし。じゃないよ! またSTRに振ってるし!」
あぁん? 他はいいんだよ他は。
それにお前がパーティ組んでくれるんだろ?
「いやまあそうなんだけどさ⋯⋯。なんか納得いかない。
というか君のSTR値が他職のレベル50と並んでても見劣りしないくらい高いんだけど」
そりゃ殺人鬼だからな。
最初にAGIに振ったのはミスだったな。
「つか何ちゃっかり人のステータス見てやがんだ。お前のも見せろ。ぐへへ」
「何その笑い方⋯⋯。まあいいけど」
─────────────────
ポムボム 女 聖騎士 Lv.124
HP :720/720
MP :392/392
STR:314
VIT:388(+39)
AGI:134
INT:258(+13)
DEX:134
LUC:20
スキル:非表示
称号 :非表示
残りステータスポイント:0
─────────────────
「は?」
なんだこれきもっ。
そりゃあの蛇程度なら余裕でワンパン出来ますわ。
「ふふん! それなりに時間かけたからね!」
廃人ルートまっしぐらじゃないっすか。
というかスキルと称号って非表示に出来たのか⋯⋯。
自分だけ隠すとは許せんな。
「ほらほら狩りに行くんでしょ? 早く早く」
コイツ⋯⋯。
◇◆◇
ゴキッ!
首の骨が折れる音を聴きながら、狼だったモノを持ち上げる。
「相変わらず頭のおかしい動きしてるねー。
STRもぶっ飛んでるしここら辺じゃ物足りないかな?」
「まあなぁ。この狼でフィールドボスだろ?
まだ最初の虫の方が苦労したな」
首の伸びきった狼がポリゴンへと変わる。
既にレベルは12まで上がっている。
もちろんステータスポイントはSTRにオールぶっぱだ。
スキルもレベル10になったことで、『威圧』を手に入れた。
『威圧』CT90s
自身よりレベルが低い対象の動きを、確率で強制的に止める。自身とのレベル差が大きい程確率が上がる。
ついにアクティブスキルが手に入ったな。
しかもかなり有効だ。
まだレベルは低いから雑魚モンスター相手にしか効かないが、ゆくゆくはPvPでも使えるようにしなければ。
「狼型だからみんな最初は苦労するんだけどなぁ⋯⋯。虫の方が簡単な気がするけど」
「虫は痛覚がないうえに弱点が分かりづらいんだよなぁ。脊椎動物は大体似通ってるから殺りやすくていいな」
「そこだけ聞くと完全にサイコパスだよね」
うるせ。
「それに君のことだからどうせ感覚設定も100%にしてるんでしょ? 幾ら鈍るからって頭おかしいよね」
そりゃあ少しでも下げると五感も鈍るからな。
痛覚なんて我慢すりゃいいんだ。
それに⋯⋯
「どうせお前も100%にしてるんだろ?」
「さー、どうかなー」
くっくっく。そんなこと言っても体は正直だな。
視線を向けただけで振り返ってきやがるぜ。
おっと、痛覚100%だって言ってるのに遠慮なく殴ってくる。
この悪魔め。いや違う魔王だったな。
「ほら馬鹿してないでさっさと次行くよー」
「へいへい」
用語解説
・騎士⋯⋯殺人鬼や盗賊などの裏職業以外の職業に就いた状態で、レッドネームになった殺人鬼をPKKすることで転職可能になる。
・攻略組⋯⋯プレイヤー達の最前線。メインストーリーやフィールド開拓を率先して攻略していくので、高レベルプレイヤーが集まるので憧れの的になることが多いが、大体廃人なので良い子は真似しないように。
・マ(ッ)ドハンド⋯⋯仲間を呼ぶ⋯⋯マヌ〇サ⋯⋯うっ、頭が。
・フレンド⋯⋯遠距離間でのやり取りが出来るようになる便利機能。
・キャラネ⋯⋯キャラクターネーム。
・聖騎士⋯⋯現在確認されている騎士系職業での最上位。全プレイヤー中5人といない職業。能力補正はVITに15%、INTに10%。
・レイドボス⋯⋯複数のパーティで挑む、最大級のボス。最大参加人数は36人。
・MVP⋯⋯レイドボス毎に判定される最も活躍した者。選ばれると様々なボーナスが付く。
・フィールドボス⋯⋯各フィールド毎に1体づついるボスモンスター。
・CT⋯⋯一度スキルを使用してから、再使用出来るようになるまでの時間。
・パッシブスキル⋯⋯常時発動型のスキル。何かのモーションを起こさなくても常に発動している。
・アクティブスキル⋯⋯能動型のスキル。何らかのモーションを起こさないと発動しない。CTが設定されていることが多い。
・感覚設定⋯⋯全身の感覚の度合いを割合で数値化したもの。0%にすると痛みを感じなくなるが、五感がかなり鈍くなる。100%にすると全てが現実と同じ感覚になる。痛いのが苦手な人は30%くらい。