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ホワイトミステリー 翔太の嫁さん

小さなIT会社に勤務する村山翔太は、いつもの残業が終わり、駅の近くにある行きつけの中華料理店で遅い夕食を取った。

台風が近づいているらしい、店を閉めるから早く帰った方が言いと店主に言われた。

翔太が店を出ると、生暖かい風と共に雨が降ってきた。

八尾駅に行くと辺りは閑散として、翔太が乗った電車は止まったまま動かない、どうやら他の電車に遅れが出ているようだ。

北子のアパートまで一駅だと思いながら、うとうとと眠ってしまった。

いかん、乗り越した。

気がつくと一つ先の小倉駅で電車が止まり、駅員から、この先の川の水位が上がり、運行が出来ないからここで降りるように言われた。

翔太は駅員に乗り越しを説明したが、戻る電車はこない

ま、いいか、ひと駅タクシーで戻ればいいだけだ。

翔太は人気のない小倉駅のタクシー乗り場で、タクシーを待っていた。

「タクシーは来ないわよ」

翔太が辺りを見回すと、翔太のすぐ後ろに長い髪の右ほほにホクロがあるセーラー服を着た中学生が立っていた。

「20円貸してくれる」

20円でどうするのか聞くと

「パパに電話をするの」と言って、斜め向かいにある古めかしい電話ボックスを指さした。

今時珍しな、携帯電話を持っていないのか、「僕が電話をしてあげる」

翔太が名前を聞くと。

「朝日奈紀子 12歳」

翔太も自分の名前を教えた。

紀子に電話番号を聞き、電話を掛けたが通じない、あれ、圏外になっている。

ごめん、携帯、壊れたのかな。

翔太は集めていた、ギザ10を2枚、紀子に渡すと「ありがとう」と言って、雨の中を電話ボックスに走って行った。

しばらくすると、まぶしいヘッドライトを点けた一台の車が電話ボックスの前に止まり、走り去った。

翔太はもう一時間以上タクシーを待っているが、くる気配が無い

何処から現れたのか一台の車が翔太の前に止まった。

後ろの席から紀子が降りて来て「翔太さんのアパート何処にあるの」と聞いた。

北子の駅から200m位の所にある丸美莊と言うアパートの二階

「送ってあげる」と言って、後ろの席に乗るようにいった

翔太が後部座席に乗ると、紀子は助手席に乗り車は動き出した。

車のヘッドライトがやけにまぶしくて、辺りが良く解らない

5分もすると車が止まり、ヘッドライトが消えると、車は丸美莊に横付けされていた。

翔太は礼を言いドアを閉めると、すぐに車は走り去った。

それから2ヶ月が経ち、翔太が勤務するIT会社は不渡りを出し

倒産してしまった。

翔太は職を探したがなかなか見つからない。

貯金が底をつきかけた頃、いつもの中華料理店で食事をし、代金を払おうと小銭をかぞえていたら、50円玉を一個落としてしまった。

ころころと転がって、慌てて拾いに行こうとしたら、長い髪の女性が拾ってくれた。

翔太の所へ来て50円玉を渡すと自分のがま口を開け紙に包んだギザ10を2枚、差し出した。

「この10円玉、今の50円玉より価値があるそうよ、翔太さんあのころと全然かわらないのね、あれからもう10年位経つわね」

なぜ僕がギザ10を集めている事や名前を知っているのか分からず、唖然としていると

「あのあと20円返そうと思い丸美莊に行ったけど村山翔太さんの表札は無かった、大家さんに聞いたけど、そんな人知らないと言われた」

朝日奈紀子さんのお母さんですか

「あ~らやだ、私が紀子よ、私の母は、私が高校にはいる時、交通事故で亡くなったわ、ほらあの雨の日、車を運転していたのはママよ」

確かに右ほほにホクロがある、僕は今でも丸美莊に住んでいる

翔太は紀子を連れて丸美莊に行くと「あれ、川口幸太郎の表札じゃない」

川口幸太郎は僕が入る前にいた人だ

2人は狐につままれたような気分で、部屋に入った

「翔太さんは何時から此処に住んでいるの」

大学を出てから就職してここを借りた、3年位経つかな、職も見つからないし、もう家賃も払えなくなる

翔太はあの時、紀子に聞いた電話番号が入った携帯の発信記録を紀子に見せ日付を見るように言った

「私の10年が翔太さんの2ヶ月なの、変な話ね、そうだ私のパパの会社に来ない、この先2人がどうなるか興味があるわ」

翔太は紀子の父が経営する朝日奈建設に入社して、総務や経理の仕事をすることになった。

その後2人は結婚して、2人の子供が生まれたが、おかしな現象は起こっていない。






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