97 クリスマス二日前
明後日に向けてクリスマスツリーや飾り付けの道具を買ってきた。結構な荷物で、俺一人では無理なので車を用意してもらった。車の持ち主で運転してくれたのは野火先輩だ。
「助かりましたよ先輩」
「構わないよ。光一君には世話になっているからね」
いえいえ。寧ろ俺の方がいつもお世話になってますよ。レポートやテスト対策とか。
荷物を運び終えたので野火先輩とコーヒーで乾杯する。
「それにしても随分と買ったね。盛大なパーティーを催すつもりかい?」
「あー、いえ、ある奴がうるさくて……」
俺は五月女に渡されたメモ通りに買い物をしただけ。ツリー、電飾、折り紙、雪だるま型の照明、キャンドル、全部買ったら万札が吹き飛んだ。
ここ最近食事を減らして節約したのがパー、次の奨学金までは貧困生活が決定しました。死ねる。
「楽しそうなクリスマスになりそうだね。羨ましいよ」
「先輩は何か予定あるのですか?」
「あるよ」
そういや彼女いるって言ってたな。ヒューヒュー、彼女と過ごしちゃうんですかい~? 熱い聖夜になりそうですね~。
が、野火先輩の顔色は悪い。どんよりと大きなため息をつく。
「クリスマスは研究室で作業するんだ……卒論の実験も進めないといけないからね……」
「……ど、ドンマイです」
「朝から夜遅くまで実験だよ……本当、入る研究室を間違えた、そもそも入る学部を間違えた……」
ネガティブな発言は野火先輩の真骨頂だが今回のは少し違う。ブラック研究室を嘆く、可哀想な大学生の悲痛な叫びだ。いやホント同情しますよ。そして絶対に野火先輩の研究室には入りたくねぇと思う。
「彼女さんはどうするんですか」
「……研究室があるって言ったらめちゃくちゃ暴れたよ」
お、おおぅ。結構気性が荒い彼女さんなんですね。
「テーブルをひっくり返して冷蔵庫を倒して壁という壁に画鋲で穴を開けまくるんだよ……」
「めちゃくちゃしますね!?」
予想を遥かに超える暴れっぷりだった。壁という壁に画鋲で穴を開けるって、何そのちまちました作業。逆にめんどそう。
「あぁ、退去する時に壁を新しくしないといけない……あれたぶん結構な額するんだよ……死にたい……」
「マジでドンマイです」
「まぁ前から彼女が暴れて壁はボロボロだったから今更なんだけどね」
「あなたの彼女何者です? ティラノサウルスですか?」
「ティラノサウルス……ふふっ、そんなの可愛い小動物に思えるくらいだよ……」
野火先輩の彼女がとんでもない人物なのが分かった。俺決めたよ。野火先輩の研究室には入らないし野火先輩の彼女みたいな人とは付き合わない。




