96 演奏会
「ふぁー、よく寝た」
睡眠が捗った。今は……六時? え、夕方? マジか。いくら日曜とはいえ寝すぎた。貴重な休日がもう終わってしまう。つらたん。
日曜……そういや何か用事があったような……ん~、思い出せん。寝起きで頭が回りません。
思い出せないってことは大した用件ではないってことで気にしないでおきますか&起きますか。
「ん……え、何この着信数」
携帯を見れば大量の着信履歴。画面に連なるのは、安土桃香の文字。これって……
「三日尻君っ、どうして今日来てくれなかったんですかっ」
ドバァン、と豪快な音を立ててドアが開く。そこに立っていたのは安土さんおっとりとした彼女にしては珍しく気性が荒く、瞳は鋭い細目になっていた。
「え、え?」
「今日は市民ホールで演奏するって言ったじゃないですかっ」
「市民ホール……あ」
思い出した。吹奏楽部で演奏会に出るから見に来てねと言われていたんだった。
「ごめん忘れてた」
「三日尻君はひどいです! ワンワンミラキュルバチコーンです!」
それは罵倒しているの? 全然響かないんだけど。でも安土さんが怒っているのは伝わってきた。
「会場中を探したんですからね。会場を出てからも探しました。三日尻君はいなかったです」
「その頃ここで爆睡してました」
「ワンワンミラキュルバチコーン!」
「すいません呪文の重ねがけやめてください」
別に俺行くとは言ってないんだけどなぁ。そんな怒らなくてもいいじゃないすか。
それに、俺が行ったところで市民ホールは満席で入場出来ないと思う。安土さんを見に来る人で毎回会場はごった返すらしいよ。アイドルかな?
「三日尻君を探していたのに他の男性が大勢来て大変だったんですからね!」
「えー、それ俺が悪いの?」
「レプリカを作ったジェイドぐらい悪いです!」
「ほぼ戦犯じゃねーか」
そうは言うけどなぁ。俺を探す必要ないでしょ。わざわざ会場の外で待たなくてもいいのに。
「むぅ、なんですかその顔は。自分は悪くないと言いたいんですかっ」
「ま、まぁそうだと思う。俺は悪くねぇ」
「ここにいると馬鹿な発言にイライラさせられます」
「そっちがジェイドじゃん!」
「とにかく! 私は楽しみにしていたんですからねっ」
「な、なんで? 見に行く俺が楽しみにするならともかく、どうして安土さんが楽しみにしてたん?」
「っ、とにかく私は怒っているんですっ。三日尻君が来ると思っていっぱい練習したのに……もうっ! 三日尻君の馬鹿! ルーク!」
「す、すいません」
反論したら余計に怒らせるだけだ。大人しく謝っておこう。実際俺が悪い気がしてきた。
「行かなくて悪かったよ。探させてしまってごめん」
「……次はちゃんと来てくださいね」
「今度は行くよ。でも行ったところで会場に入れるかどうか」
「それなら大丈夫です。受付にハツカチューチューショックと言えば来賓席に案内してもらえます」
「頭おかしい奴と思われて逆に追い出されそうなんですけど!?」




