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93 拗ねる3

「あ、安土さん?」


「……」


 暖かい室内。コタツで丸くなった俺の前に立つ安土さん。彼女が手に持つのは、濃い紫色と派手なオレンジ色で塗られたおどろおどろしいプラスチック製のバット。


「新しい武器買ったんだな」


「そうですね」


「奇抜なセンスだね。毒属性が付加されてそう」


「そうですね」


 テレフォンショッキング? 俺の知っているタモさんは毒々しいバットを持っていなかったはずなんだけどなぁ。


 安土さんの様子がおかしい。半目の冷えた眼差しが俺を貫き、なぜか空気がピリピリしている。

 この感じ、覚えがある。昨日の五月女と同じ、謎の不機嫌オーラだ。


「三日尻君に質問があります」


「ど、どうぞ」


 恐らく五月女のこと聞かれるんだろうな。五月女も安土さんのこと聞いてきたし、二人は仲悪いのか……。


「この新武器、名前は何がいいでしょうか?」


「そんなくだらないことかよ!」


「くだらなくありませんっ。一緒に考えましょう!」


 身構えた俺の気持ちを返してほしい。武器の名前とかどうでもいいんだけど、あぁ安土さん目が真剣だよめっちゃマジだよ……!?


「じゃあ、ポイズンソードとかは?」


「普通ですね。もっと個性的で独特なワードを使ってください」


「す、すいません」


「そうですね……聖剣・図工室のモップとかどうでしょうっ」


 たぶんあらゆる聖剣の中で最もしょぼい聖剣だと思うよ。なぜ聖剣を名乗った、どう考えても不釣り合いだろ。名字がカッコイイのに名前が残念な人みたいだ。天王寺運子(てんのうじうんこ)みたいな?


「どうですかっ?」


「あー、聖剣は不必要かと」


「でも図工室のモップだとこれは図工室に置かなくてはなりません」


「こんなの置かれる図工室の気持ちも考えようか」


「きっと大いに喜ぶことでしょう」


「本当の図工室のモップの仕事奪うつもりか。いや奪えないからね」


「本当の? これが図工室のモップですよ何を言っているのですか」


「明らかにモップ本来の機能性は見受けられないけども!?」


 それただのプラスチックバットだから、色のセンスが壊滅的なバットだから! 本当の図工室のモップは汚れていても図工室を綺麗しようと頑張る健気な奴だから、って何回図工室って言うんだよ!


「しんどい……」


「三日尻君は五月女さんと付き合っているの?」


 ここでか。こ、こ、で、か。

 パッと見上げると無表情でこちらを見下ろす安土さんの姿。不機嫌な目の色に身震いするが、ジト目の安土さんも綺麗だなと思っちゃう。


「……付き合っていないよ」


「五月女さんはよく遊びに来るのですか?」


「結構来る。あいつも俺も暇だから」


「私より来る回数は多いですか?」


「た、たぶん」


「五月女さんにほっぺたを触らせたのはいつですか?」


「い、いや覚えていない」


「私より先に触らせましたか?」


「覚えてないです……」


「二人はいつ出会ったのですか? 同じ学部ですか?」


「あ、あの?」


「三日尻君、早く答えて」


 それから延々と安土さんによる質疑応答は続いた。制止しようとしたら聖剣・図工室のモップを構えるので俺は大人しく質問に答える他なかった……。

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