81 コタツ
「ふわわぁ、やっぱコタツは最高っす」
とろけた声を出す五月女は俺のジャージを羽織ってテーブルに顔をつけて伸びている。
「三日尻君、みかん剥いてくださいっす」
「嫌だ」
「えー、頼むっす一生のお願いっす」
「そんなことで一生をかけるな」
「じゃあ今月のお願いっす~」
月一で願いを叶えてやる義理はない。が、五月女がうるさいので俺はみかんを剥く。
「あ、白い部分も取ってっす」
お願いが図々しくなった。なんて奴だ。それに従う俺もどうかと思うが。
「スジも取ったぞ」
「食べさせてくださいっすー」
「お前調子乗ってんなおいコラ」
身動き一切せず、五月女は口を大きく開く。ザ・怠惰と呼ぶべき姿だ。
「早くっす~」
「……ほらよ」
「ありがとーっす」
みかんを放り込めば五月女はモグモグと食べる。食べ終わるとまた口を開く。何これ噂の干物妹?
「美味しかったっす」
「良かったな」
食べさせ終えて俺もコタツに潜り込む。あー、やっぱ冬はコタツに限りますわ。コタツに入ったらみかん食べたくなってきた。
「五月女、みかん取ってくれ」
「嫌っす」
「頼むって。一生をかけるから」
「絶対に嫌っす」
俺の一生はお前の一ヶ月に負けるのかよっ!




