80 ネガティブ
「ふぅ、少し休憩するよ」
作業が一区切りついたらしく、野火先輩はため息交じりに息を吐く。そんな先輩の為に俺はインスタントコーヒーを用意して、その間に野火先輩は縄を用意しだした。
「いや何してんの。後輩の部屋で死のうとするなよ。少し休憩って何、それ本当に少し? 永遠の間違いですよね!?」
慌てて縄を奪いとって代わりにコーヒーを渡す。熱いコーヒーの湯気は野火先輩の顔を覆う。
「光一君は明るいね。名前の通りだよ」
「すいません、湯気で顔が見えなくて幽霊と喋っているみたいです」
「幽霊……そうだね、僕みたいなキモくて暗い奴はそう呼ばれるのがお似合いさ。そうだ、シオンタウンに行こう」
「京都に行こうみたいなノリで何言ってるんですか!」
だーめだ。この人と話すとネガティブな方向に行ってしまう。なぜこんな人と知り合ったのやら……まぁ、野火先輩成績は優秀だから色々と教えてくれるんだよね。過去問やテスト対策、いつもお世話になってまーす。
「僕みたいなクズは死ぬべきなのさ……」
勉強面で世話になるならネガティブ発言の相手くらいしてやるよ。と思っていたあの頃の自分を言いたい。結構しんどいからね、と。
「そんなことないですよ。野火先輩が死んだら悲しむ人はいます」
「そんな人いるわけ……」
「ここにいるじゃないですか」
俺は自らを指差してドヤ顔する。ふふっ、どうだ。この、後輩から慕われている感はさぞ気持ち良いだろう? これなら野火先輩も少しは前向きに、
「そうか僕が死んだら光一君が悲しむのか……可愛がっている後輩にそんな思いをさせる僕は本当に罪深いよ……」
あ、そう捉えるのね。やっぱ死ぬこと前提なんですね。なんとか死なないでもらえますか、俺のテスト対策を手伝ってくれるまで!
「お、俺が悲しいんで死ぬのやめてください。他にも先輩のことを思う人はいるはずです!」
「そっか……うん、分かったよ。もう少し生きてみるよ」
あ、立ち直った。良かった、これでしばらくは持つだろう。
「死んだら彼女に会えないのは寂しいからね」
お前彼女いるのかよおぉぉ!? お前ごときでも彼女いるのかよおぉぉ!




