8 垂水栗栖
「彼女が欲しい」
切実な声でそう言ったのは垂水栗栖(たるみくりす)。派手な髪の色をしているがやや小太りと、髪型と体型がイマイチ合っていない。
何より一番の違和感ポイントは名前。最近では定番となりつつあるキラキラネームと共に生を受けた可哀想な奴だ。
「いや俺に言われても困る」
「もう女にこだわる必要もないと思うんだ。男でも……」
「おいやめろ。いきなりそんなこと言ったらキャラが固定されるぞ」
垂水とは同じ大学の同級生だ。学部は違うが、こうして俺の部屋に遊び来るぐらいには交友がある。
そりゃもう結構な頻度で来る。もしかしたらホモの可能性がある。いやさっきの発言が本気ならマジでそっちの気が……あ、絶交しようかな。
「だってさ~、大学生になればウェイウェイワンチャン言って彼女とかすぐできると思ったのに……」
ここで区切ると垂水は大きく息を吸い込んで、
「全っ然モテねーぞ! どうしてだオラァ!」
「壁ドン食らうから大声出すな」
とか言っているうちに隣からドォンと衝撃音。あの、ホントごめんなさい。後で菓子折り持っていきます。
「俺だって努力したよ。こうやって髪を染めてさ~」
垂水は鮮やかに染まった金髪を見せつけてくる。去年の暗い茶髪から徐々に明るくなっていき今では金色だ。
金髪はワックスでツンツンに固められており、バスターソードを持てばRPGの主人公みたいだ。ただし小太り。こいつに星の命運は託したくない。
「いやさ、髪をイジるのはちょっと違うと思う」
「じゃあ銀髪にしてみる」
「そうじゃない。努力の方向性が間違っているから」
髪を染めたらモテるって概念はおかしい。それだと大抵の男子大学生は彼女いるってことになる。そうでないからキョロ充という存在が生まれたんだろ、俺みたいな奴がさ。やだ自分で言ってて恥ずかしい。
「もう男でも……」
「おいやめろ近づくなキモイんだよぉ!」




