77 モテない
「いきなりキスしたい。袖からちょこっと出した指で服を掴まれたい」
……。
「頬についたご飯粒を直接口で食べたい。うなじに水飴を垂らしてひたすら舐めたい。あと眼球も舐めたい」
……。
「真剣な表情で『俺、うんこ漏らした』と言って困らせたい。何の前触れもなく幼児化して『ママおっぱい~』と言って困らせたい」
「さっきからどうした……頭の病気か?」
垂水は口を半開きにして天井を見つめて、キモイ発言をポンポンと吐き出していく。
「彼女にしたいこと、してもらいたいことを語っているのさ。三日尻も参加するか?」
キモイからやめておく。なんで真顔なんだよ、なんでドン引きレベルの願望を即座に言えるんだよ。
「はぁ……垂水、暇なら帰れよ」
「冷たいこと言うなってばよ~。もっと俺の性癖を聞いてくれってばよ」
「主人公の口調でなんつーこと言いやがる。俺はレポートで忙しいから他の奴と遊べよ。彼女とか」
「彼女いないからぁ!」
某漫画の主人公が九尾化したかの如く、突如として咆哮して暴れだす垂水。その目からは、透明でキラキラな液体がとめどなく流れている。
「う、うぅ、彼女いないからこうやって妄言を吐くしかないんだってばよ……」
「お前マジ七代目火影に謝れよ。サスケに怒られるぞ」
「三日尻、俺がモテるにはどうしたら良いか教えてくれ」
え、いいの?
「まず髪型と髪色が似合っていない。もっと落ち着いた色にしろ。あとワックス使うな、もったいないから。それが嫌なら痩せろ。筋トレしろ」
「お、おぉう、結構言うんだな……」
「キザでナルシストな発言を控えろ。口だけで行動に移さないのやめろ、ムカつくから。友達の前でだけ調子乗るのもウザイ。すげーウザイしキモイ。もっとトークを磨け。会話もせず自分から行かないくせに女子と仲良くなれると思うな馬鹿死ね消えろ」
「うおぉい!? そこまでダメ出しする!? ハート粉々なんですけど」
「体揺らすとナヨナヨしててキモイ。そのくせ小太りだからより一層キモくて暑苦しい。あとホント口だけなのやめてくれない? それに可愛い女子がタイプのくせに話せないのダサイ。今でも五月女が笑うとキョドるの見ていて情けな」
「もういい!」
まだあるんだけど。
「えぐぅ、ぐすっ、酷いよ三日尻……」
「えー、お前が教えろって言ったやん」
「ここまで言われると思わなかった。メンタル折れまくりだよ。棚から落とした極細ポッキーぐらい折れまくった」
「あーそれ分かる。あれムカつくよなぁ。垂水ぐらいムカつく」
「うええぇぇん!」




