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75 武器

「三日尻君の武器は何ですか?」


 安土さんの問いに俺は首をかしげる。当たり前のように質問してきたけど意味不明だからね。


「武器って何?」


「武器は武器ですよ。例えば私だったらこのふわふわキュートスターです」


 安土さんが取り出したのはプラスチック製のバット。これが安土さんの武器らしい。


「武器……別にいらないだろ」


 日常生活でプラスチックバットの必要性を感じない。強いて言うなら、安土さんは美人だから痴漢や変質者を撃退する時に使うとか?


「必要ですよっ。ディヌディヌ星人と戦う時に」


 違った。この人は常に意味不明だねー。俺はもう頭が痛いよ。


「ディヌディヌ星人って何」


「ディヌディヌ星人とは地球を侵略に来たフプブフテコンドー剣術の使い手です」


「フプブフテコンドー剣術って何」


「ディヌディヌ星に伝わる剣術です。中でも奥義のジェット耳毛カット&パーマは凄まじい威力ですっ」


 うん分かった、質問するだけ無駄だということが分かりました。

 なんだよジェット耳毛カット&パーマって……それ剣術なの? それよりあなたの電波の方がよほど凄まじいですよ。


「それで、三日尻君の武器は?」


「いや持ってないから」


 大学生に必要性は見出せない。もっと言えば小学生も中学生も高校生も必要ない。なぜならディヌディヌ星人はいないから。

 しかし安土さんは納得いかない様子。ぷぅ~と頬を膨らませている。超可愛い。


「三日尻君は危機感ゼロですか。武器なしにどうやってディヌディヌ星人のフプブフテコンドー剣術と戦うつもりですかっ」


「待って待って。聞き慣れない単語の連発で脳の処理が追いつかない」


「私と三日尻君で世界を守るって誓ったじゃないですかっ」


「記憶にございません」


「もうっ、しっかりしてください。今から武器を決めましょう!」


 そう言って安土さんは部屋中からあらゆる物をかき集めてきた。俺の部屋なんですけど……。


「三日尻君は近接より中・遠距離タイプっぽいですよね。シャンプーとかどうです?」


 シャンプーでどうやって戦うんだよ。ピュッピュ飛ばしてダメージあるの?


「せめてもっと強い武器でお願いします」


「でしたらこちらのコンディショナーとかどうですか? 最近流行りの濃密W保湿ですよー」


「何その服屋の店員さんみたいなノリ。つーかシャンプーと性能大して変わってねーし! コンディショナーだから何? シャンプーとやること一緒だよね!」


「三日尻君うるさいです。ジェット耳毛カット&パーマ使いますよ?」


「お前もフプブフテコンドー剣術使えるんかい!」

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