69 お願い2
「彼氏のフリしてください」
三日尻光一の~、緊急脳内会議~! 俺は思考をめぐり巡らせる。理性、本能、道徳、あらゆる観点からこの議を討論し、考える。
俺が、安土さんの、彼氏役? 本当は付き合っていなくとも安土さんの彼氏役ってネームバリューは凄まじい。ニヤニヤする。
だがしかし、もしそれが世間に知られたら。ほぼ全ての男子から妬まれてキャンパス内を歩くことが出来なくなる。下手すれば闇討ちされる恐れが……
「? 三日尻君?」
「……うす」
「やってくれるのですかっ?」
「いや今のは肯定の『うす』じゃないです」
やっぱ駄目だ。リスクが高すぎる。昨日のデート中だって道行く奴らに殺意と嫉妬の念を向けられた。付き合えばそれ以上のものが飛んでくるんだぞ。しかも本当には付き合っていない。付き合っているフリだけでそんな目に遭うのだ。
うん、決まった。脳内会議、これにて終了。
「申し訳ないけどやめておくわ。そういうのは誤解を生むし」
「そうですか……」
安土さんがしょんぼりする。な、なんかごめんなさい。でも自分の命は惜しいです。
「大体、俺だと安土さんに釣り合わないよ。すぐに嘘だってバレるぞ」
「釣り合わないだなんて……そんなことないです。だって三日尻君は……」
「俺は?」
「あ、なんでもないです。疲れたので寝ます」
安土さんは俺から顔を背けると勝手にベッドに潜り込んでしまった。それ、俺のベッド……え、寝るの!?
男の部屋でそんなことしたら襲われるぞ。分かってる?
「三日尻君こっちに来てください」
緊急脳内会議! あ、駄目だ連続だと脳が働かない。俺は中途半端な思考のまま、言われる通りベッドの横へ。ヤバイヤバイ、せめて理性だけでも機能してくれ!
「な、何?」
「ほっぺた」
「え?」
「ほっぺた」
な、何? とりあえず片膝ついた状態で自分の顔をベッドへ近づける。安土さんが毛布から上半身を出して、俺の頬をつつき始める。
「……何これ」
「ぷにぷにです」
「いやだからこれ……うす」
「癒されます」
頬といえば昨日のあれは何?と尋ねても安土さんは無視してつつきまくる。結局それから三十分近く頬を触られ続けた俺であった。




