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63 焼酎

「手土産持ってきたっすー」


 五月女が手に持つのは焼酎の瓶。


「なんだか高そうな銘柄だな。買ったのか?」


「学科の男子がくれたっす。ありがたく頂戴したっす」


「へぇ、気前の良い奴がいたもんだ」


「これで宅飲みしようと誘ってきたんで断り続けていたら最終的に渡されたっす」


「……そっか」


 その男子は五月女と一緒にこれを飲みたかったんだろうな。そして酔わせたところを襲う。計算高い肉食系男子だ。


「自分は以前の学部飲みで学んだっす。自分は自分の身を自分でガードする術を覚えたっす」


「自分自分うるさい。自分が人文に聞こえくるわ」


「自分は経済学部っす」


「知ってるよ」


 くだらない会話はこの辺にしとこう。せっかく奪っ、頂いたのだから飲もうじゃないか。

 俺はグラスと氷を用意して、五月女は枝豆に高い打点から塩を振る。お前ホントそれ好きな。


「じゃあ乾杯っす~」


「ういー」


 ロックで飲む焼酎はかなりキツかった。味が濃く、喉が熱く焼けそうだ。ぐうぅ、これこそ焼酎のすごさだな。日本酒ならガバガバ飲めるが焼酎は無理だ。これ大学生あるあるね。


「うおー、キツイっす~」


 と言う割には五月女はグビグビと飲んでいく。ちょ、おいペースが早いってば。日本酒じゃねーんだから一気に飲むと酔いが、


「……う、うぅ……っ」


 ほれみろ言わんこっちゃない。五月女の顔はあっという間に赤くなって目がとろんとなる。何が自分の身は自分でガードだ。ガバガバじゃねーか!


「ふひぃ……酔ったっす」


「この贈り主と宅飲みしなかったのは大正解だよ……」


 俺じゃなければ今頃は服を脱がされていたぞ。え、俺? 俺は超草食系男子なんで手を出す真似はしません。自分、ビビりですから。


「ふにゃ~、三日尻君が三人に見えるっす~」


「分身の術を会得した覚えはないんだけどなぁ」


「だってばよっす~。ん~……本物はこれっすか~?」


「あ、ちょ、待っ」


 五月女はフラフラと歩いて俺の元へ迫ってきて、思いきり抱きついてきた。


「な、何してんだよっ」


「えへへ~、三日尻君の匂いがえげつないっす」


「えげつないって悪口だからね。体臭ディスるのやめて」


「ん~っ」


 抱きついたまま離れず、それどころか頬をすりすりしてくる五月女。……あの、マジでヤバイんでやめてください。ただでさえ焼酎で熱い体がさらに燃え上がる。五月女の温もり、柔らかさが俺の理性をガリガリ削っていく。


「よ、酔ってるだろお前」


「酔ってないれす~」


「うわぁもう典型的だよ……」


「三日尻君あったかいっす~。えへへ、幸せっす!」


「……自分で何言ってるのか分かってんのかよ」


 こんなことされたら勘違いするだろうが。俺だからまだ耐えているが他の奴ならこうはいかないぞ。はぁ……可愛いんだから危機感持てよ……。


「簡単に男に抱きつくな。お前いつからマシで襲われるぞ」


「大丈夫れふ~、こんなこと三日尻君にしかしないっす~」


 ……ぐううぅ、耐えろ俺ぇ! めちゃくちゃグッとくる言葉だったけど耐えるんだぁ!

 嬉しさと恥ずかしさで意識が吹き飛びそうになる俺に、さらなる追撃。


「三日尻君以外には触りたくもないっす。三日尻君だけなんれすからね~」


 ぐああああああぁぁめちゃくちゃグッとくるー!? 俺の奥底にある独占欲がくすぐられるぅ! こ、こいつ、男が喜ぶポイント刺激しやがって……!


「ほら三日尻君もぎゅーってしてくださいっす」


「そ、それは勘弁してください」


 今の状態で抱きしめ合ったら間違いなく終わる、俺の理性が。つーか今も十分にヤバイんだよ。お前は自分の武器をもっと理解しろっ。自分の凶器がどれほど破壊力あるか把握しろっ。クソ……服の上からなのに超ふにょふにょだよぉ。


「むぅ、ぎゅーっす!」


「無理っす……」


「ぎゅー!」


 回らない呂律で何度もおねだりする五月女。それもめちゃくちゃ可愛いんだからな。酔ったお前は可愛くて色気もムンムンに溢れるんだからな!


「マジ勘弁で……」


「むぅ、仕方ないっす」


 やっと諦めてくれたか……。


「じゃあ、ちゅーしてくださいっす」


「……」


「ちゅーっす」


「……」


「ちゅー!」


「マジのマジで勘弁してください……」


 あぁ、決めた。こいつに酒飲ませるのは控えさせよう。いつか間違いが起きてしまう。再三言うが……耐えろ俺ぇぇ!


 その後一時間以上、ひたすら抱きついて迫ってくる五月女を、俺はズタボロの理性で耐え続けた。

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