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62 ボランティア2

「やあ三日尻、ボランティアやらないか」


 やけに男前な口調で誘ってきたのは金谷先輩。服装はジャージで長靴を履いている。今から河川敷でゴミ拾いしようぜ感がひしひしと伝わってきます。


「俺はいいです」


「そう言うな。ボランティアは気持ち良いぞ。掃除したら心も綺麗になるんだ」


「就活の為ですか」


「ぎくっ。なぜ分かった」


 昨日同じ発想の奴を二人見たんでね。どうすか俺の部屋、埃一つないでしょ。あいつら無駄に頑張ったから。


「わ、私ももう三年生だ。サークルに所属してはいるがやはりボランティア活動のネームバリューが欲しい」


 そんで清掃活動か。ボランティア=清掃の考えも垂水玉木と同レベルだ。俺の周りにはアホしかいないのか。


「頼むよ三日尻。お前だけが頼りなんだ」


「彼氏に頼みなさいよ」


「彼氏とは嫌なことしたくないんだよ」


 だから俺ですか。なんて人だ。あとボランティアを嫌なことって言う時点でボランティアやる資格ないわっ。

 俺はため息を一つ吐いて金谷先輩に座れと座布団を出す。金谷先輩はきょとんとした顔で座った。


「いいですか。ボランティア精神が云々は語りません。簡潔に述べましょう」


「君が真面目な顔しているのは珍しいな」


 ムカつく発言だが今は無視だ。話を続けよう。


「先輩はボランティア活動をしたいのではなく、就活でボランティア活動の話がしたいんでしょ」


「そうだ」


「必要なのは語れるだけの経験。つまりボランティア活動をまともにする必要はありません。ボランティア活動とはどんなことをするか、どんなことが大変か、活動を経て何を得たか、そのポイントを掴めばいいんです」


「うむ」


「とどのつまり、俺と二人だけでボランティアしてもそれでは足りません。つーかただのゴミ拾いです」


 ただのゴミ拾いでボランティアを語るにはあまりに経験不足。あなたが今求めているものを教えましょう。


「就活でアピールしたいなら大規模なボランティア活動に参加するべきです。いかにもそれっぽい団体に混ざりましょう」


「それが一番手っ取り早いってわけか」


 納得した面持ちの金谷先輩を向いて俺は大きく頷く。規模の大きいボランティア活動に参加して、そこでの経験を大袈裟に自分の意見と混ぜ合わせてペラペラ意識高いこと言えばいいんですよ。就活なんてのは一の経験を十で語るものさ。と、大学二年生の俺は思いまーす。


「三日尻ごときと清掃活動したところで何一つとして語れる経験はないってことか」


 その通りですが、ごとき扱いはひどいですよ? 就活を控えた三年生にアドバイスしてあげる健気な二年生に対する態度じゃない。

 ともあれ金谷先輩は納得したらしい。にんまりと笑って立ち上がった。


「ならばボランティアサークルに頼み込んで活動に参加させてもらおう」


 そうそう、それがベストアンサーですよ。べっつにボランティア活動のアピールなんざ今時の就活では当たり前の初期装備みてーなものさ。とりあえず話せるだけの経験をパパッとしてきなさい。……俺本当に二年生か?


「よし、行くぞ三日尻」


「行ってらっしゃ……え、俺も?」


「当たり前じゃないか。君も就活の際に話せる話題ができるだろ?」


「い、いえ俺は結構です。ほら俺は想像だけでボランティア語ってみせますから」


「なんだね君は。先輩の言うことは聞きなさい」


「一つ下の後輩にアドバイスされた先輩が何を言ってやがる」


「ジャスティスパンチ!」


「どふらっ!?」


 金谷先輩の鋭いボディブローが俺の腹を貫いた。走る激痛に止まる呼吸。苦しさのあまり悶え……っ、悶える間もなく襟首を掴まれた。


「行くぞー」


 そのまま金谷先輩にズルズルと部屋の外へ引きずり出された。ぼ、暴力で従わせるつもりか。何がジャスティスパンチだ。え、勝った方が正義? そうだったね、がふっ……。

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