6 しりとり
「三日尻君、しりとりしようっす」
ベッドに寝転んでいる五月女のふとした提案。暇なので俺は了承する。
「じゃあ、しりとり」
「リーマンショックっす」
「車」
「マーケティングっす」
「す、ぐ……グミ」
「ミューチュアルファンドっす」
「ちょっとタイム。お前の語尾で戸惑う」
五月女は語尾に「~っす」とつけて喋る。普段の会話ならともかく、しりとりをしていると分かりにくいんですが。
「あと謎の経済用語縛りは何?」
「今日の講義で覚えたから使いたいっす」
「あぁそれ分かるわ。大学生あるあるだよな」
専門的な用語はレア感とカッコ良さがある。日常生活で使ってみたくなるんだよね。意識高い系がコミットやリフレインなどを使いたがるのと同じだ。
「ほら三日尻君の番っすよ」
「えーと、ど……ドミノ」
「ノンバンクっす」
「クライアント」
「トレーサビリティっす」
「ティッシュ」
「シュークリーム食べたいっす」
「経済用語縛りどうした。つーか食べたいって」
「三日尻君シュークリーム買ってきてっす」
「さりげなくパシリを添えるな」
「パセリを添えるってなんす?」
パシリな。急にイタリアンな会話しないから。
経済用語自慢もしりとりも忘れ、五月女は目をキラキラさせてシュークリームを連呼しだした。
「ねぇシュークリームっす~」
「嫌だわ。お前行けよ」
「自分はここでゴロゴロする使命があるので無理っす」
人の家のベッドを我が物顔で使いやがって何が使命だよ。
「とにかく嫌だ」
「じゃあしりとりで負けた方が買いに行くってのはどうっすか?」
「それならいいよ」
「さっきみたいな縛りルール作るっす。大学生が使いそうな言葉縛りでしりとりっす」
大学生が使いそうな言葉って……んー……結構あるかも。
「履修登録」
「車欲しいわ~、っす」
あ、そういう感じ? 単語じゃなくていいのか。
「ワックスは俺これしか使わないから」
「ラウワンでオールっしょ? っす」
「奨学金入ったら返す」
「スノボ行こうぜ、っす」
「全然寝てねーわ」
「ワインうめ~、っす」
「メッシュ入れてみたし」
「シュークリーム食べたいっす!」
「今から買いに行くっしょ?」
「奨学金で買うっす~」
ベッドから起き上がった五月女に手を引かれる。俺らはウェイウェイ言いながらコンビニへと向かった。




