58 ポッキーゲーム
肌寒さが増し、冬の訪れを感じる今日この頃。安土さんがやって来た。
「じゃじゃーん」
「ポッキー?」
安土さんが持ってきたのはポッキー。昔からチョコレート菓子の王者として君臨する人気商品だ。
「ありがたくいただきます」
「じゃなくてですね。ポッキーゲームをしませんか?」
「じょじょ!?」
思いがけない提案に言葉が奇妙になってしまった。あの、安土さん? ポッキーゲームが何なのか分かっています?
「えーと……俺と?」
「はい」
「あなたと俺でポッキー?」
「はい」
冗談ではないのか、安土さんは元気良く肯定の返事をする。
……マジか。動機が激しくなってきた。え、ポッキーゲームだよ。合コンの王様ゲームで定番とされる、男女がポッキーを端と端から食べていき、最後は……ってやつだよな。
「では開けますねー」
あのリア充が嗜むウハウハゲームを、今からミスコン優勝の安土さんとする。下手すれば、き、きき、キスしちゃうかもしれない!? 動機は激しくなって心臓が破裂しそうだ。
「はい、どうぞ」
ポッキーを一つ手渡される。嘘……本当にするのか。しまった、口臭ケアをしておけば、いやリップクリームを、あぁ駄目だ後悔も考えることもする暇がない。
覚悟を決めろ。余計なことは脳から叩き出せ。今はこのチャンスを存分に楽しもう。ビッグウェーブ、乗りこなしてみせる! 俺はポッキーを口にくわえて安土さんの方を向く。
「三日尻君、何をしているのですか?」
「へ?」
安土さんはハテナマークを浮かべて俺を見つめていた。そんな彼女の髪にはポッキーが数本刺さっている。
いや……あなたこそ何をしているの!?
「え、その、ポッキーゲームだよな?」
「はい。ポッキーゲームって、ポッキーを体のどこかに装着させて踊るゲームですよね?」
「……」
「ほら三日尻君も早くポッキー装備してください。そうですね、三日尻君だったら鼻の穴とか良さげですよっ」
安土さんは俺の口からポッキーを取ると俺の鼻に入れてきた。
「……」
「それではミュージックスタート!」
安土さんの携帯から流れる軽快でポップな音楽。リズムに合わせて踊る安土さんの頭でポッキーがゆらゆら動く。
えぇ……何これ。ポッキーゲームじゃないよね。あと地味に鼻が痛いです……。
「三日尻君もちゃんと踊ってください」
「……」
色々言いたいけどさ、とりあえず期待した俺が全面的に悪い。相手は安土さんだぞ。んな簡単にポッキーゲーム出来るわけがなかった。
あと安土さん踊り結構上手い。優雅になめらかなダンスを披露する安土さんの姿は惚れ惚れします。ポッキーがなければ。
「早く!」
「……へーい」
こうなったヤケクソである。俺はもう片方の鼻穴にもポッキーを突っ込んでステップを踏む。幼少期にダンレボで培った足捌きを見るがいい。
「三日尻君上手ですね」
「そっちこそな」
部屋で二人、ポッキーを装備した俺と安土さんはひたすら踊り狂った。第三者から見れば頭おかしい奴らだ。いや俺自身もそう思う。
踊ること三分、曲が終わった。
「ふう、ポッキーゲーム楽しかったですね」
「ソウデスネ」
「私帰ります。三日尻君さようなら~」
「サヨウナラ」
安土さんが帰っていた後、鼻息でポッキーを発射して床に叩きつけた俺はポッキーを口にくわえた。妄想の世界を展開し、脳内に安土さんの姿を思い浮かべる。
……せめて妄想の中でも安土さんと本当のポッキーゲームをしておこう。一人目をつむって、ポリポリとポッキーを食べる俺であった。




