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54 人生ゲーム2

 俺の持ち金では復活に必要な金には及ばず、安土さんに借りることにした。おかげさまで王子様が棺桶から出てきた。緑色のゲロを吐いているのは変わらない。


『天空の城で飛行石を手に入れ、滅びの呪文を覚えた』


「わぁい、やりましたー」


「それは?」


「自分が負けそうになったらバルスと言ってボードをひっくり返してもよい権利です」


 子供が癇癪おこしてゲーム機の電源を切るやつじゃんか! あの自分勝手な行いを正当化する権利を得たってわけ? いよいよ安土さんの負けがなくなったね。

 しかし俺は諦めない。だったら俺もラピュタに行って同等の力を得ればいいんだ。気持ちを新たに俺はルーレットを回す。


『他プレイヤーに呪文をかけても良い』


 また訳のわからないマスだ。というか数ターン経ったけどまともなマスを見たことがない。


「うー、それは私がとまりたかったマスです」


「呪文って何さ」


「呪文は呪文です。さ、どうぞ」


 安土さんは両手を広げてこちらを見つめる。いつでもかかってこい的なノリ。

えーと、呪文ってあれだよな。安土さんがいつも開発に励んでいるあれのこと?


「さあ早く」


 いや急かされても俺が唱えられる呪文は一つもないです。でも安土さんずっと待ってるし……テキトーに唱えておくか。


「じゃあ……ニャンニャンモード。あなたは猫になるー!」


「私の番ですね」


 だと思ったよチクショー! 安定の無視をして安土さんはルーレットを回す。安土さんはもうゴールするんじゃないか? また10出してるし。


「あ、良いマスにとまりました」


「どれどれ?」


 お姫様の足元には『他プレイヤーに好きなことを命令できる。あと三億ゴールドと飛行石を手に入れた』の説明文。……もうしんどいっ、もうツッコミたくない! 一応やってみようか!?

 まず最初に命令できるってなんだよ。人生ゲームじゃなくて王様ゲームになってるだろ! あと三億ゴールドと飛行石ゲット、サラッと付け加えているけど強すぎるから! ゲームバランス崩壊するわ! 安土さんこれで飛行石二つ目だよ! はい疲れた!


「何を命令しようかなー」


「……他プレイヤーって俺?」


「そうだよっ」


「ですよねー」


 もはや人生ゲーム関係ないよね。しかし心の中のツッコミで疲労した俺に安土さんへ直接異議を申す力は残っていない。うんうん唸って悩んでいる安土さんが言葉を発するのを大人しく待とう。


「はい、決まりました」


「なんでしょーかー」


 三日尻ヤケクソである。こうなったらどんな命令でもかかってきやがれ。呪文の試し撃ち、新しい呪文の開発、呪文に必要な道具を揃える、なんでもやってやる。呪文ばかりじゃねーか!


「私とデートしてください」


「はいはい分かりま……ん? 今、なんて?」


 聞き間違いでなければデートという単語が聞こえたんですが。


「三日尻君とお外で遊んだことないです。遊びたいです」


 聞き間違いじゃなかった。安土さんは俺とデートがしたいと言った。ミスコン一位の美少女のあの安土さんが言った。所持金五億十万ゴールドで飛行石を二つ持つあの安土さんが言った!?


「……駄目かな?」


「あ、いや、俺で良ければ付き合うよ」


 寧ろこっちが嬉しいぐらい。だって安土さんとデートだよ? 可憐な安土さんと……いや、安土さんとかー……。ま、まぁ大丈夫でしょ。


「本当ですかっ」


「オッケーオッケー」


「やったぁ……このマス作って良かった。えへへ」


 安土さんが笑う。いつも微笑んでいるが、今の笑顔は少し違う気がする。緩んだ頬、ニッコリとろけた表情。なんだか嬉しくて仕方ないみたいな満面の笑みだ。


「安土さん?」


「やったぁ……はっ、な、なんですか?」


「頬が緩々だけど、どしたん?」


「っ、な、なんでも……バルス!」


「嘔吐王子があぁ!?」


 安土さんがボードをひっくり返した。吹き飛ぶ紙幣やお姫様や嘔吐王子。え、ちょ、あなた勝っていたのになんで強制終了したの?


「デートの日時はメールします。それではお邪魔しましゅ」


 最後噛んでしまった安土さんは慌てた様子で帰っていった。うーむ、一体全体訳が分からない。あ、いつもことか。

 ともあれ安土さんのデートは楽しみだ。デート中に変な呪文を唱えられないか心配しつつ、俺は床に散らばった人生ゲームを片付ける。

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