51 金谷由衣
テーブルや床に広がる数多のビール缶。部屋は酒臭く、吐き気がこみ上げてくる。
「もっと飲みたまえ三日尻ぃ」
「無理です、金谷先輩……」
俺の向かいに座る女性は陽気に笑う。この人は金谷由衣(かなたにゆい)さん。俺の一個上の先輩だ。
「すいませーんビールお代わり」
「ここ居酒屋じゃないです。俺の部屋です」
「そっか。じゃあ三日尻、ビール出せ」
金谷先輩は酒が大好きだ。ビールは当然、日本酒に焼酎ウイスキーワインなんでも飲む酒豪である。その酒の強さは学内でもトップクラスと噂されている。
「お待たせしましたビールで、うぷっ」
そんな酒豪クイーンの金谷先輩に付き合わされた俺は限界を迎えていた。気を抜けばリバースしてしまいそう。
「相変わらず弱いな。そんなんじゃモテないぞ」
「酒強い奴がモテる時代は終わったんすよ。今時の男子はカルアミルクが主流です」
「あんな甘ったるい母乳で満足かよ」
金谷先輩は豪快でデリカシーがない。女性とは思えない発言をするので困る。だが裏を返せばノリの良いテンションアゲアゲなキャラであり、飲み会では盛り上げてくれる賑やか担当の人だ。金谷がいれば大丈夫、と当時のサークル会長が言っていたなぁ。
「オラオラもっとはじけよーぜ!」
「勘弁してくださいよ。マジで無理です。つーか帰れや」
「先輩に向かってその態度はなんだコラァ」
金谷先輩に思いきり背中を叩かれ、
「おぼぼぼぼ」
俺はマーライオンとなった。




