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47 雨

「こんにちは」


「うわ、ずぶ濡れじゃん」


 今日は朝から大雨。とはいえ風は弱いから傘があれば大丈夫。のはずが安土さんは全身濡れていた。


「おかしいです。雨を弾く呪文を唱えたのに」


「まさか傘をささずに来たの!?」


「はい。だって呪文があるから」


 呪文ってのはあなたがインスピレーションで作っただけに過ぎない。本当に効果があると思ってるのかよ。


「効くわけないだろ……」


「うーん、でも巨大パプリカ小泉君には効きましたよ」


「誰だ。そしてどんな呪文?」


「私の代わりにレポート課題やってくれる呪文」


「便利に使ってるなおい!」


 ビッチがやることだよそれっ。巨大パプリカ小泉君は安土さんにお願いされてデレデレと了承したんだろうなぁ。


「人はともかく天候には通用しないよ。ほらタオル」


「ありがとうございますっ」


 タオルを渡すと安土さんは髪の毛や肩を拭く。大雨の中なぜ俺の部屋に来ようとしたのやら……。


「呪文はいいけどさ、いいように人をこき使ったら駄目だからね」


「はい、あの呪文はなぜか効きすぎるので禁呪にしました」


 そりゃあなたにお願いされたら断る男子いねーよ。垂水だったら今期の全レポートすら引き受けてくれるだろう。


「うーん、次こそは雨を弾いてみせま、っ、くしゅ」


 安土さんがくしゃみをした。その瞬間、ハートが揺れた。何そのくしゃみ、超可愛いんだけど。


「……はっ。あ、えーと……傘貸すから帰ったら?」


「今来たばかりですよ? まだいます」


「いや服濡れてるし風邪ひくぞ。さっさと帰って着替えなよ」


「嫌です」


 なんでだよ帰れよ。風邪を引かれたら申し訳ないし。


「タクシー呼んでやるから」


「三日尻君。シャワー貸してください」


「……は?」


「それと三日尻君の服も貸してもらえると助かります」


 ………………は!? な、何を言ってるのこの人ぉ!? 嘘だろ、今の会話から察するに……えぇぇ!?


「い、いやそれはマズイだろ」


「うーん、そうかな?」


 そうだろっ。普通に考えてそうだろっ。付き合っているのなら分かる、仲の良い同性の友達でも分かる。でも俺らはそうじゃない。こんなのありえない!


「駄目だって。そんな見境のないことするなよ」


「……」


「え、何」


「三日尻君にしか、こんなお願いしない」


「へ?」


「シャワー借りますね」


 あ、ちょ……!? 安土さんはバスルームの方へ……!


「っっっ、ちょっと待ったぁ!」


 困惑してショート寸前の思考を無理やり働かせ、瞬時に最適解を導く。俺は全力ダッシュでバスルームを超え、玄関のドアを開けた。


「バスタオルは勝手に使って! 着替えはジャージとかどうぞご自由に! 鍵は閉めて郵便ポストに入れておくから! 俺は一時間後に戻ってくる! じゃ!」


 外の大雨にも負けない叫び声で必要事項を述べて俺はドアを閉めて施錠、鍵をドアのポストに投函! ……あぶねー、俺ナイス判断。

 俺の部屋に脱衣所なんて場所はない。同じ空間で服を脱がれるのはマジでマズイ。よって俺は部屋を出ることにした。


「ふぅー……散歩しよ」


 咄嗟のことだったから傘を取る暇なんてなかった。俺は雨に打たれ、熱くなった頭を冷ますことにした。

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