43 ハロウィン
世間はハロウィン一色。街でも大学でも仮装した人でいっぱいだった。
「トリックオアトレード!」
俺の部屋だけは例外だと思ったんだけどな。垂水は狼の被り物をして声高らかに叫ぶ。
「何その格好」
「マンウィズみてーだろ。ガウガウ」
「ファンに殺されるぞ」
「いいからトリックオアトレード!」
その場で飛んでテンション高い垂水。腹部に渾身の一撃を叩き込んでやりたい。
「つーかトレードって何。トリートだろ」
「いやトレードだ。交換しなくちゃいたずらするぞっ」
「何を交換すんの?」
「互いの彼女を交換」
「俺らどっちも彼女いねーよ」
「しなくちゃいたずらするぞ。お前の彼女にエロイいたずらするぞっ」
「だから彼女いねーって」
「何度も言うなぁ! うぐっ、えぇん……」
えぇー……こいつの感情どうなってるの。狼の被り物を脱ぎ捨てて垂水は号泣する。俺は軽く引いています。
「分かってる。俺に彼女いないことぐらい。一緒にハロウィン楽しむ女友達もいない。そんなの分かってるよ、でも俺だってハロウィンで盛り上がりたいんだ!」
「マジ泣きやめような。見ているこっちが辛くなる」
「ぐおおぉ誰か俺にトリックオアトリートおぉ! お菓子で世界を救いたいんだー!」
「まずは自分を救おうぜ」
お菓子の袋を開封しながら俺はそっと呟いた。




