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31 合コン

 大学生あるあるを一つ言おう。長期休みに実家へ帰省すると、最初は飯や風呂を用意してもらえるが途中で母親が飽きてくる。

今日は俺が帰省して四日目。母親に「お前まだいたんだ」と言われた。そろそろアパートに戻る準備をしておくか……。


「王様ゲーム!」


「イエーイ! 僕が王様でーす!」


「ちょ玉木~、変な命令はやめろよウェイ」


「じゃあ一番の人が、文化祭で張り切るヒステリックな委員長のモノマネをする~!」


「ちょっと男子サボらないでよ! みんなで頑張らないと、えっぐ、みんなで頑張らないと意味がないんだからあぁうえぇん!」


 俺が荷物をまとめている傍らで、垂水と玉木が超盛り上がっている。ここ俺のアパートの部屋なんじゃね?と錯覚する程にいつもの光景である。


「お前ら何してんの?」


「暇だから王様ゲームしているのよ! 見て分からないのっ!? 全部私に聞かないでよ私だって実行委員で忙しいんだからぁあぁぁ!」


 ヒステリックな委員長はもういいから。割とクオリティ高いモノマネをするな。垂水が泣き喚いて話にならないので俺は玉木の方を見る。玉木はふふんっと上機嫌な顔して胸を張る。


「合コンに行った時の為に練習しているんだよっ」


「合コン行く予定あるのか?」


「全くないよ~」


 あのさ、練習ってのは本番を想定してやるものだろ。その本番があるかどうか未定なのに練習をする意味はあるのだろうか、いやない。ましてや俺の部屋でやる意味が分からない。


「そうだ、三日尻が女役やってくれよ」


「頼むから帰ってくんね?」


「じゃあ僕と垂水が男役だね。シミュレーション開始!」


「ふふっ、俺の見事なトーク力を見せてやるぜぃ!」


 せめて話は聞いてほしい。俺の拒否は一切無視して垂水と玉木のやる気はうなぎ登り。どこからか丸テーブルを持ってきてコップやお皿を並べ、ウキウキとした表情で正座している。垂水に至ってはヘアセットを始めた。俺やること決定なのね、俺の意見はガン無視なんだね。はぁ……。


「ごめーん遅れちゃった~!」


 俺は高い声を出してキャピっとウインクする。垂水と玉木と向き合う形で床にちょこんと座り、目をキラキラと光らせる。……俺もノリノリか!


「ぜ、全然待ってないぜ」


 垂水がきょどりだした。俺と目を合わせず、目線はキョロキョロしている。その顔は少し朱色に染まっており……。え、なんで緊張してんの? これシミュレーションだぞ!?


「き、今日はよろしくだぜ。俺は垂水栗栖って言うんだぜ!」


 いつも垂水の声を聞いているから分かる。今のこいつの声は、上ずっていた。声音からも分かる垂水の緊張具合。


「玉木麦平です。僕と王様ゲームしませんか?」


「お前はちょっと黙っておこうか」


 合コン始まって早々に王様ゲームをやろうとするんじゃねぇ。アホの玉木にもっとツッコミを入れたいところだが、まずは垂水の方をなんとかしよう。

 垂水君、緊張しすぎて目が泳ぎまくっている。黒目が眼球内をスイスイ遊泳してるよ!?


「えっと、垂水君は趣味とかあるの?」


「しゅ、趣味? えーっと、その、あの……。あ、あ、げ、ゲーム……」


「へぇゲームするんだぁ。どんなゲーム?」


「え、えっと……色々」


「そっかー」


「……」


「……」


 垂水は俯いてしまい、口をごにょごにょ動かすだけ。何を言っているのか全く聞こえない。喋っているのかさえ分からない。えー……会話終わっちゃったよ? 

 合コン開始一分で無言タイム突入。お前全然駄目じゃん……。何がトーク力を見せてやるぜぃ、だ。もう黙ってるじゃんか!


「た、垂水君?」


「あ、うす……」


 垂水は消え入るような声でボソボソと喋る。嘘だろ……こいつただのコミュ障だ。あれだけ威勢良かったのに今は借りてきた猫状態。

 あれだな、友達の前では調子乗って大口を叩くが、いざそうなると何も出来ないタイプの奴だ。垂水がモテない理由が分かってしまった……。


「王様だーれだ!? そう、僕ぅ!」


 ホント頼むから帰ってくんねーかな……。


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