30 実家3
帰省して三日目。ウェイウェイ大学生なら地元に帰れば連日飲み会や朝までカラオケ、昔の同級生とドライブや旅行に行ったりするのだろう。
だが俺は非ウェイウェイ大学生なので日中は部屋でゴロゴロしている。今日ものんびりと……。
「ゴーマ強い! こいつがラスボスか!?」
……ベッドに腰かける俺の視界に映る、奮闘する玉木の背中。
今日も玉木がウチに来た。これで三日連続である。アパートの時より来る頻度が高いんだけど。
「ナビィ! ナビィ何かアドバイスをプリーズ! 僕にヘイリッスン!」
玉木がやっているのは大人気ゲーム。最初のダンジョンで早速詰んでいる。こんな序盤で苦戦するとか大人編どうなるんだよ、とは言わず寧ろ良くボス部屋までたどり着けたなと賞賛すべきだ。玉木だから。
ま、一人でゲームしてるなら気にしなくていいだろう。俺はのんびりと……。
「ぐわっ、また負けた!」
「下手だなぁおい。俺が秘伝のテクニックを教えてやろう。その名もZ注目と言ってだな……」
「ふむふむっ」
……気にしないでおこうと思ったけど無理だな。
今、俺の視界に映る姿は玉木一人ではない。もう一人いる。玉木にしたり顔でアドバイスを送っているのは、垂水だ。
目の前の光景は現実か? なぜ垂水がここにいる。
「Z注目すごい! パチンコ超狙いやすい!」
「だろぉ? 時の勇者である俺が発見したスーパー裏ワザなんだぜっ」
「おい、なぁおい。そこの小太り勇者。なんでここにいる」
地元が一緒の玉木は分かるがお前は違うだろ。自然に溶け込んでいるんじゃねぇよ。
垂水はこちらを振り向くと、小さく笑って歯を見せてきた。
「なぜって? 俺とお前は友達だろ?」
「答えになってないから。いいからちゃんと答えろ」
「み、三日尻が冷たい」
目を鋭くさせて睨んだら垂水は萎縮した。冷たくて結構、さっさと理由を言え。なぜいるのか、どうやって来たのか、俺が納得出来るよう簡潔に述べろ。
「えーと、その、寂しいから遊び来ました。玉木に住所教えてもらいました……」
「おい玉木」
「ゴーマ倒したぁ!」
無視すんな。最初のボス倒しただけで全クリしたみたいはテンションすんな。こちとらお前だけでもウザイのに、さらに垂水呼び寄せやがって。
実家の意味がまるでない。いつものアパートの部屋と同じじゃねぇか。
「玉木、自分が何したか分かってんのかよ」
「聖三角? 森の精霊石? よく分かんないけどガノンドロフ君にZ注目したらいいんだねっ」
何も分かってねー。いやまぁガノンにZ注目はある意味正解だけどさ。Z注目して空きビン振ったらいいよ。
玉木は俺を無視し続ける。正確に言えばゲームに夢中で俺の声が届いていない。
俺は玉木の耳元に寄り、声を出す。
「ヘイ! ヘイ! リッスン!」
「お、ナビィどうしたの」
「やっと反応したかアホ玉木」
とりあえずゲームを中断させて、玉木と垂水を横に並ばせる。玉木はキョトン顔だ。自然体でいるのが余計に腹立つ。
「まずお前ら二人に言いたい。実家まで来るんじゃねぇ」
「はいはい! 僕はミカジと高校からの同級生だから」
「それ言えば済むと思ってんのか? デクの実を顔面に叩きつけるぞ」
まぁいい。玉木はまだギリ許す。問題はこっちだ。
俺は垂水の方を向き、限界まで目を見開いて睨みつける。
「テメーはなんで来たんだ。あぁん?」
「だ、だから寂しくて……」
「寂しかったら同級生の実家にまで押しかけるのか貴様あぁん?」
「み、三日尻怖い」
俺は実家でのんび~り過ごしたいんだよ。それを邪魔しやがって……普段俺が優しいからってあんま調子乗るなよああぁぁん!?
「夜はどうするつもりだ。俺は絶対に泊めないからな」
「そ、そんなこと言わないでよ~。俺に行く宛てはないぜ?」
「玉木の家に行け。俺は絶対に嫌だ」
「み、三日尻~」
「死ね!」
「嫌だとも言ってくれない!?」
「つーか玉木。お前が垂水を呼んだのだからお前が面倒みろよ」
「嘘だ……で、デクの木サマが死んじゃった……!?」
「お前も死ねや!」
実家に帰って三日目。どうやら俺が落ち着ける時間はないらしい。




