28 実家
テストやレポートも全て終わり、解放感に包まれる俺は今日も部屋でのんびりと過ごす。
けれどいつもの部屋ではない。勉強机には大学入試の赤本や参考書。床に散らばる、二年以上も前の少年誌。
この部屋は、かつての、いつもの部屋。
実家に帰ってきた。今は夏休みだからね、たまには親に顔を見せないとね。俺って親孝行してるわー。だからお小遣いください、と言ったら甘えんなクソ息子って一蹴されました。
「この部屋も変わってねーな」
かつてのいつもの部屋はあの頃と変わらずに、まるでこの部屋だけ時が止まっているかのよう。
だからこそ、あの頃の思い出がそこら中に散らばっている。高校の鞄、体操服、流行ったカードゲーム、どれもこれも懐かしい。
「なんだかしんみりするわ」
「そうだね」
「……おい玉木」
隣には少年誌を読む玉木。さも当然のように寛いで「カカシの万華鏡強すぎワロタだってばよ!」とケラケラ笑っている。神威で異次元に吹き飛ばしてやりたい。
「無視すんな。なぁ玉木、どうしてここにいる」
「やだなぁ。僕とミカジは友達じゃないか。それも高校からの付き合い。昔もこうやってよく遊びに来てたでしょ?」
「だとしてもだ。今は来るんじゃねぇよ」
お前の顔は普段から散々見ている。なんで実家に帰省した時も一緒にいなくちゃいけないのだ。
「僕は浪人したからね。今年の春までは実家で暮らしていた」
「何が言いたい」
「実家に戻るのは四ヶ月ぶり程度なんだよ。懐かしいなぁ、とはまだ思えない。けどミカジの実家の部屋に来るのは一年以上ぶり。懐かしさを味わえるじゃん?」
じゃん?じゃねーよ。お前は懐かしさを味わう為に帰省したのか? だったら今すぐ小学校に行って思い出に浸ってこい。小学校の前でニヤニヤして近隣住民から通報されてしまえ。
「高校生の頃はこうしてダラダラ過ごしていたよね~」
「大学生の今でもほぼ一緒だけどな」
「それはとても幸せなことだよ」
「帰れ」
「だってばよ」
玉木は意味不明な返しをして再び漫画を読み漁る。悪びれた様子はなく、涼しい顔をして自然体でいる。
はぁ……帰省中もこのアホと一緒にいなくちゃいけないのかよ。
「ミカジ、次の号はどこ?」
「その頃には家を出たから、次の号からは俺のアパートだ」
「そっか。よし、今からミカジのアパートに行こう!」
「アホか。今は帰省中だろうが」
「だってばよ!」
「お前もうマジで帰れよ!」




