27 水着
「あー」
「三日尻君」
「あー」
「……三日尻君」
「うあー」
「三日尻君!」
五月女に肩を揺らされて視界がブレブレ。
「俺に構わないでくれ」
「いつまで不貞腐れているんすか」
「だってさー」
「雨は仕方ないっす」
外を見ればザーザーと降る雨。今朝からやむことなくずっと降っている。今日は五月女と海に行く予定だったのに……天気の馬鹿野郎。
「天気予報だと晴れだったじゃん。晴れだったじゃん……」
「もうっ、いつまで言ってるんすか」
こちとら昨日の夜から楽しみにしていたんじゃい。もし晴れていたら今頃は眩しい砂浜でギャルを見て……はぁ~。
「悲しい。天は俺を見放した」
「大袈裟っす。海は来年行けばいいじゃないすか」
「はぁ~」
「いい加減にするっす!」
怒った五月女による強めの掌打を食らっても俺には響かない。その程度のダメージ、海中止に比べたら屁でもない。ため息が止まらないよぉ。
「はぁ~」
「……もぅ、仕方ないっすね」
五月女は立ち上がると、手にバッグを持つ。ふて寝する俺を見下ろし、目を細める。
「いいすか? 自分が良いと言うまで目を閉じていてくださいっす」
「はぁ~」
「絶対っすよ。あとお風呂場には絶対に来ちゃ駄目っす」
そう言うと五月女は風呂場の方へと移動した。チラッと見えたのは、少し赤らんだ五月女の横顔。風呂場で一体何をするつもりなのか。
まぁ今の俺には関係ない。中止となった今、どうせ俺は寝るつもりだったので目を閉じてベッドに沈み込む。目を閉じても耳に入ってくる雨の降る音は悲しみを助長させる。はあー、真夏のワイキキビーチでセクシー水着のギャルを眺めていたはずなのに。それに、五月女の水着姿だって……
「い、いいっすよ」
「思ったより長かったな。一体何をして……っ、え?」
振り返った先にいたのは五月女。うん、五月女だ。でも先ほどとは服装が違う。服というか……水着になっている。
五月女が水着に着替えている!?
「え……え? な、なんで水着になってるの?」
「い、いいじゃないすか。せっかく買ったから三日尻君に見せてあげるっす」
さっきと同じで顔を赤くさせた五月女はプイッと顔を逸らす。手と足をモジモジさせながらも、露わになった肌を隠すことはしない。
五月女の水着はパレオだ。なんて言うんだろ、下の方がヒラヒラ~となってるやつだ。語彙力が乏しい俺。
「あ、あんまりジロジロ見ないでくださいっす」
「いや、お前が見せるって言ったし」
明るい山吹色の水着は五月女の髪とバッチリ似合っており、五月女の健康的で透き通る白い肌を際立たせる。ロングのヒラヒラが大人らしいセクシーさを醸し出し、それでいて同時に五月女の持つ可愛らしさも溢れている。
何より、目が釘付けになってしまうポイントがある。いつか聞いたことのあるサイズにふさわしい、いやそれ以上の大きさにも思えるたわわな膨らみ。くびれたウエストとの凹凸もあってか、全体を見た時のバランスは完璧なる黄金比。魅惑のプロポーション。
「ど、どうす? 元気出たっすか?」
五月女の小さなボソボソ声。そのくせ手を腰と頭に添えてボディラインを強調させるポージングを取る。既に彼女の顔は耳まで真っ赤になっていた。恥ずかしいならするなよ……。
「ん、その……ま、まぁいいんじゃない?」
そして俺も顔が赤いんだろうな。元気が出るか出ないかの二択で答えてね、とか言われるまでもなく、文句なく、めちゃくちゃ元気出るわ。
五月女の水着姿は超似合っていた。超可愛い。子供っぽい可愛さがあるのに、男の視線を奪う武器も備えているとか完璧最強じゃん。
ただただ、思う。眼福であると。
「むぅ、なんすかその素っ気ない感想は」
違うんすよ。可愛すぎて素直に褒めることが出来ないんだよ。もはやお前の可愛さを表現する言葉がないレベル。
しかし五月女からすれば、恥ずかしいのを耐えて水着姿を見せた以上、もっと具体的な感想が欲しいらしい。不満げな面持ちで俺の方に迫ってくる。近い近いそんなに近くはないけど今は近くに感じる近い近い!
「は、恥ずかしいんだから……」
「あー、その……すげー似合ってるし、可愛い」
「っ、ほ、本当? っす」
「……目を逸らしてしまうぐらいドキドキするぐらい可愛い」
「~っ!?」
ホント語彙力っつーか国語力が低すぎる感想だな俺。でも本当のことだから仕方ない。心臓の音が体外へ漏れだしそうな勢いだもん。
すんません、感想はこれで勘弁を。そんな思いで五月女の顔を見れば、
「う、うす……っ」
真っ赤な顔で指をモジモジさせていた。そのモジモジする仕草可愛いね。俺さっきから可愛いしか言ってねー。
……五月女が迫ってきたから俺らの距離は近い。俺と五月女の身長差もあり、どうしても目線が下へと下がってしまう。
下、顔の下、胸。こんな間近でじっくり拝める日が来るとは。やっぱデカイな……すげぇ谷間……!
「……ぁ、む、む、胸ばかり見過ぎっすー!」
「ぐぼぉ!?」
俺のまっすぐな視線に気づいた五月女は手で胸もとを隠しつつ、もう片方を拳にして俺の顔面にパンチを放つ。お、お約束パターンですね……がはっ!




