24 ヘアセット
ヘアアイロン、ワックスとスプレーに囲まれた垂水。今は濡れた髪をドライヤーで乾かしている。
「俺がコンビニに行っている間に何があった」
「三日尻、シャワー借りたぞ」
「何勝手に使っているんだよ垂水ぇ」
「うるせぇ今から学科飲みなんだよ」
垂水は鏡の前に座って髪の毛のセットを始める。横には髪のカタログが広げられてあり、俺はなんとなく状況が見えてきた。
「飲み会でチヤホヤされたいからヘアセットはりきっているのか」
「今日はキメて行きたいんだぜ」
お前は普段から髪のセットばかり気にしているけどな。人の部屋を占領しやがって、自分の家でやれよ。
「つーか垂水、髪の色変わった?」
「やっと気づいたか。今回はオレンジにしてみたぜ」
「今回は、ってお前結構な頻度で色変えているよな」
「え? 当たり前だろ、大きい飲み会がある度に染め直しているぞ」
アホだ。こいつは飲み会代に加えて洗髪料もかけているのか。努力する方向間違っていると何度言えば分かるんだ。
「サイドの毛先はハネさせてトップは立たせる。仕上げにスプレーで固めて……完成だっ」
垂水は立ち上がって俺にドヤ顔する。鮮やかなオレンジ色の髪はガチガチに固まっていた。
「今日のテーマは派手なロックバンドをイメージした」
「派手じゃないロックバンドがいるのかよ」
「我ながらバッチリ決まったぜ! じゃあ俺は飲み会行くからウェイ」
「待て待て。カーペットに落ちた髪の毛やドライヤーを片付けていけ」
「それ、ワンチャンあるね」
そう呟くと垂水はドヤ顔で帰っていった。何がワンチャンスだよ、使い方間違っているだろ。
「クソが……まぁ、これであいつに彼女できるなら良いか」
後日、学科飲みに出席した玉木から、垂水は全然喋れなくて俯いていたと聞いた。派手じゃないロックバンドかよ。




