20 浪人
「馬鹿っ、その置き方は悪手だ」
「握手? ごめん僕がもっと有名になったら握手してあげるよ」
「その握手じゃなくてだな、っておいおい長い棒を横に置くなよ!」
「長い棒? ごめん僕のは短い棒だよ」
「変なカミングアウトする暇あったら目の前に集中しろ!」
「でも臨戦態勢になれば大きくなるよ。その時は握手させてあげるよ」
「誰がするかぁ! あ、ちょ、ほらゲームオーバーじゃねぇか!」
揃えるとブロックが消えるゲームで盛り上がっているのは垂水と玉木。これは盛り上がっているのか? よく分からんが賑やかで何より。いや、何よりじゃないな。うるさくてレポートに集中出来ない。
「玉木は下手だなおい。いいか、長い棒で一気に消すんだ。だから端っこの方にスペースを空けて棒を差し込んで」
「ごめん僕下ネタ嫌いだから」
「お前の方から言い始めただろ!?」
垂水と玉木は仲良く話している。ん、仲良いのか? まぁ会話は一応成立しているから問題ないでしょ。
「おい三日尻、こいつアホだ」
「知ってるよ」
「さすがミカジっ。この僕と高校からの付き合いなだけはあるねっ」
なぜに上から目線?
「そうかお前らは高校の同級だったんだよな」
「まぁね。学部は違うけど今もこうしてミカジとは遊んでやっているのさっ」
だからなんで上から目線なんだよ。好き勝手にお前が部屋に来るだけだろうが。
お前らや五月女が頻繁に来るから一人の時間が取れなくてやっと一人の時間でアレやろうとしたら電話で五月女にバレてものすごい怒られたんだぞ。う、今思い出してもあの時の五月女は怖かった……。
「そういや玉木って学部はどこなんだ?」
「理学部だよー」
垂水は何気なく質問して、玉木は口を大きく開けてヘラヘラと答える。
「俺と一緒か。学科は?」
「生化さっ」
「え、一緒? 嘘、玉木を学科で見たことないぞ」
「なんでだろうね」
垂水がハテナマークを浮かべて腑に落ちない顔をしている。だが俺はその訳を知っている。あー、そっか。まぁ、いつか分かることだから今言っておくか。俺は一つ咳払いして口を開く。
「あー、垂水。玉木は一年生だ」
「……え? いや、でも、三日尻と同級生なんだろ?」
「玉木は浪人して入学したから。歳は一緒でも俺らとは学年違う」
垂水は黙って玉木の方を見る。段々と口が開いていき、あぁ今理解していってるなぁと伝わってくる。
「えっ、お前後輩!?」
「ふふ、そういうことになるよねっ」
玉木は相変わらず偉そうな態度。いやお前一個下だから、学年で言えばお前は下から目線になるから。
「お、おぉ……そっか、あー、うん。……ま、まぁ今さらだし、これからもタメ語で良いから、な?」
対して垂水の方は動揺を隠せていない。友達の友達が後輩、変な関係性になるのは大学あるあるだな。
「まぁ垂水もこう言ってくれているわけだし、玉木も気にしなくていいと思うぞ」
垂水以上に玉木の方が気まずいはずだ。タメ語で話していた人が先輩、しかも同じ学科の先輩だ。気まずくないわけが、
「うんっ。まぁこれからもよろしくな垂水」
「「軽っ!?」」
なんでお前はケロッとしているんだよっ。少しは申し訳ない顔しろよ!
「あ、垂水。長い棒が来たよ」
「お、おお? そ、それを端の空間に入れてだな……」
「よっしゃ挿入しちゃうぞ~」
再び玉木と垂水は仲良くゲームを始めた。仲良くやっている、かな? まぁいいや俺には関係ねーわー。
ケラケラ笑う玉木と渋い顔した垂水は無視して俺はレポート作業を再開した。




