2 でぃーカップ
ベッドに背を預けて座り、雑誌を読む。誰かが置いていった雑誌で、表紙には『モテる男の秘訣!』と派手なフォントで書かれていた。
「なぁ五月女」
「どうしたんすか三日尻君」
俺の後ろ、ベッドに寝そべって漫画を読む五月女の生返事。俺は気にせず言葉を続ける。
「こういった雑誌に書いてある内容って本当なのかな?」
「あー、これをすればモテるってやつっすか」
「そうそう」
「本当っすよ。ただし顔が良ければっす」
「結局顔かよ……」
ただしイケメンに限る、か。全身をブランド物でフル装備したブサメンは、安いシャツ着たイケメンには勝てないってことだろ。悲しいぜチクショー。
「顔しか見ないとか女は最低だな」
「じゃあ三日尻君は可愛い子とそうでない子だったらどうなんすか。少なくとも第一印象は間違いなく可愛い子の方が良いっすよね」
「当然だろ。女の良さなんて顔だ」
「うわー……サイテーっす」
「あとは胸とお尻と足」
「もっとサイテーっす」
ベッドが揺れて背中に振動が伝わる。
振り返ってみれば、そこには起き上がった五月女が目を細めて俺を見ていた。軽蔑した冷たい目をして両腕で自らの肩を抱いている。
「三日尻君はスケベっす。自分、貞操の危険を感じるっす」
「頻繁に遊び来る奴が何を言っているのやら。ちなみに五月女は何カップ?」
「マジでサイテーっす!」
五月女は声を荒げてベッドから降りると、ゲーム機を持ってきて俺の頭頂部に叩きつけてきた。
ゲーム機、いやいやゲーム機て! コントローラーとは比にならないヘビーな攻撃が俺を襲う。
「サイテーサイテー三日尻君サイテーっす!」
「わ、悪かったから。サラッと聞けば教えてくれるかなと思っ痛い!?」
またしてもピンポイントで頭頂部がぁ。
サクセス! サクセス! しかしMPが足りないっ。
「もういいっす帰るっす!」
昨日に引き続いて五月女はプンスカプン!の状態で部屋から出ていった。
あ~……これ頭大丈夫? 血とか出てないかな。漫画では頭からの出血はカッコ良いけど、現実だったら治療の為に髪の毛剃るからね。強制的に禿げるからね。
「……三日尻君」
「んあ?」
扉が少しだけ開き、パッチリとした大きな瞳がこちらを見つめる。
少し間が空いて、コホンと小さな咳払いの後、
「で、でぃー、っす」
扉が閉まって走る音が遠ざかっていく。俺はゲーム機の下敷きになった雑誌を引っこ抜いて再び読み始める。上下反対だが関係ない。
「……でぃー。マジか」
明日からは注目して見るか。




