139 ホワイトデー2
ウホ? ウホウホ? ウホウホ、ウッホホ、ウホホ? ウホ……嘘!?
ヤバイ、混乱のあまりゴリラ語になっていた。落ち着け俺~。ふー……よし、落ち着いた。
いや落ち着かないウホよ!? い、今、安土さんが俺のことを好きって……えええぇ!?
「な、なっ……!?」
「あはは、三日尻君の顔面白いです」
「あ、安土さん? 今自分が何を言ったか分かっています!?」
なぜニュートラルな状態で平然としているんだ。こっちは混乱して頭おかしくなりそうだんだが!? 頭おかしいのはそっちの専売特許だろっ。
え、え……マジなの? 本気で、俺のことが……?
「というか三日尻君は気づいていなかったの? 私、結構分かりやすかったと思うけど」
「た、例えば!?」
「シャワー借りたり、彼氏のフリやキスしてほしいとか、柔道着で投げようとしたり」
「最後のは違うと思う!」
「え、獄炎トランスポゾン族ではああやって柔道着を着て意中の人にアタックするんですよ」
獄炎トランスポゾン族ってなんだよ。お願いだから今は頭おかしい発言はしないでくれ! 頼むから!
落ち着け、俺。落ち着けないだろうけど落ち着け。日本語どうした。
……安土さんは俺のことを好きだと言った。つまり告白だ。あのスーパーウルトラ超美人な安土桃香さんが俺のことを……うおおおぉ!?
「三日尻君、顔が真っ赤ですよ?」
「当然の反応でしょうが」
「獄炎トランスポゾン族みたいですね」
「その謎部族の全貌を知らないから。そいつらどこ住みだよ」
「まあそれは置いといて」
一旦置いたら一生触れることないと思うんですが!? 一生俺の中で謎のまま終わりそうだよ。死に際に「こ、心残りが……獄炎トランスポゾン族」「お、おじいちゃん!?」みたいになったらどうしてくれる!
……本気でどうした俺。告白されて脳が異常状態になっているぞ。ま、まずは言わなくちゃいけないことがあるだろうが。
安土さんに、なんて答えを返せばいいんだ?
「あ、安土さん……好きと言ってもらえてすっげぇ嬉しい。それは本心だと思う。……だけど」
だけど、でも……この気持ちはなんだろう……。
安土さんに告白されて嬉しいはずなのに、心のどこかで何かが引っかかるような感覚は。
……どうして、五月女の顔が思い浮かぶんだろうか。
「? 三日尻君は何か勘違いしていますか?」
「……な、何が?」
「私、三日尻君のことが好きだったと言ったんです。好き、だった、です」
「……だった?」
「過去形ですね」
「過去形ですか……んー…………んんっ!?」