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134 意外とお似合いカップル

 驚きを隠せない。野火先輩にコーヒーを、金谷先輩にビールを渡して座る。もう一度言う、俺は驚きを隠せない。


「え、お二人ってマジで付き合っているんですか?」


「そうだぞ」


「……そうだね……うん」


 リラックスモードでビールを飲み干す金谷先輩と声が弱々しい野火先輩。

 この対照的な二人が交際しているのかー……未だに信じられない。ドッキリなのでは?と疑いたくなる。


「三日尻、声に出てるぞ」


「あ、すいません」


「ま、お前が驚くのも無理はない。こんな根暗野郎と私が付き合っているとは考えられないよな!」


 やけに上機嫌な金谷先輩。なんだろ、野火先輩が来てからテンション上がったように見える。


「どうやらいつもウチの彼氏が世話になってるようだな。根暗ネガティブ眼鏡の相手をしてくれてありがとさん」


「いえこちらこそ野火先輩にはお世話に……なってる、かな?」


 隣でブツブツとネガティブ発言をされてストレス溜まっていますが、まぁトータル世話になっていますよ。レポートとか実験考察とか。


「光一君、ちょっとこっちに」


 野火先輩が小声で俺を呼ぶ。小さな声の意味ある? 彼女さん隣に座っているから聞こえているでしょ。

 何やら話したいことがあるっぽいので素直に従う。金谷先輩にはミックスナッツとビールを与えて野火先輩と部屋の端へ移動。


「由衣に余計なことを言わないでくれ」


「余計なことって?」


「ほ、ほら、僕が彼女が怖いとか暴れて大変と愚痴をこぼしていたことだよ」


 野火先輩の小声ながらも力強く懇願する。確かにあなたは何度か愚痴を言っていましたね。


「言いませんよ」


「ありがとう……今度またラーメン奢るよ」


「あざまー」


 コソコソ話を終えてテーブルに戻る。金谷先輩は既にビールを飲み干していた。飲むペース早すぎる!


「ところで太郎」


「は、はい」


「なんで三日尻の部屋に来たんだ。待ち合わせは近くのコンビニだっただろ」


「そ、それは……」


 あなたが怖くて一旦落ち着くために来たんですよ、と言いたい。さっき約束したから言わないけどね。


「分かった。私と会う前に三日尻の部屋でリラックスするつもりだったんだな」


 金谷先輩の鋭い指摘。良い勘をしていらっしゃる。

 でも野火先輩、ここは我慢です。嘘でもいいから否定して俺にパスを、


「す、すみませんその通りです……」


 うおぉい!?あっさり認めちゃったよ!?

 野火先輩は青ざめた顔で頭を下げる。いやいや俺に話振って濁せば良かったのに馬鹿なの?


「後輩に勉強教えるとか遊びに行くと言って私と会わなかったよな? あれ全部三日尻だろ」


「はい……光一君を利用して由衣さんと会わないようにしてました」


 え、ちょ、本気で馬鹿? なんで素直に言っちゃうの?


「なんで私と会いたくなかったんだ?」


「由衣さんは凶暴で酒乱だしウザイから……」


 だからなんで素直に言っちゃうの!? 言わないでいいことまで言ってるからそれ!

 あ、金谷先輩が鬼の形相になってる。さっきまで嬉しそうだったのに……ヤバイ。


「自分が暇だからって何度も連絡してくるし……たまの休みは拘束されて自由がないし……朝まで付き合わされるし……身も心も持たない……」


 聞いてもいないのにネガティブな口調勝手に喋る野火先輩。先輩だけど、こいつ頭おかしいだろ。

 馬鹿かお前、そんなこと言うから金谷先輩が……あ、金谷先輩……立ち上がってビール瓶持っている……あ、


「言わせておけばブツブツと喋りやがって、覚悟しろよ根暗眼鏡ぇ」


「……あ、い、いや違うんだ由衣さん、今のは光一君が言えって脅して……」


「そうやって俺を売るならバラしますね。先輩いつも彼女の愚痴こぼひて嫌だ嫌だ言ってましたよね」


「太郎、歯ぁ食いしばれ」


「あ、あ、ご、ごめんなさ……」


 そこからは圧巻の光景。金谷先輩はビール瓶で殴り、何発も蹴りを入れ、爪で顔を引っ掻いて野火先輩をボコボコのギタギタに懲らしめた。

 ……恐ろしい。でも野火先輩が悪いよね。


「すまんな三日尻、部屋荒らしてしまった」


「い、いえ大丈夫っす」


「太郎、帰るぞ」


「はい……」


 金谷先輩は号泣する野火先輩を引きずって部屋から出ていった。

 出る間際、金谷先輩が「帰ったら説教。その後は……今日は寝かせないからなー」と言っているのが聞こえた。あと野火先輩の悲鳴も聞こえた。


 ……すごかったな。でもあの二人、以外とお似合いだった。

 金谷先輩、言い忘れてましたが野火先輩は愚痴を言いながらもノロケ話もしてましたよ。一応フォローしておきまーす。もう遅いけど。


「やっほーっす。泊まりに来た、ってこの部屋なんすか!?」


「お、丁度良かった。片付け手伝ってくれ」


 リア充を見送ったことだし、俺は後片付けしようかな。

 これからは野火先輩の来る回数が激減するだろうと思いながら、逃げる五月女を捕まえて無理やり片付けを手伝わせた。

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