125 春休みの予定
春休み。部屋でのんびり。え、普段と変わらない? そういう説もあるよねー。
というか大学って最高だな。土日祝も含めたら一年のうち五ヶ月ぐらいは休みなんだもん。
「やっぱ細美さんカッコイイなぁ」
「垂水、テレビから離れろ」
「俺の視力を心配してくれているのか。嬉しいぞ~」
「いやお前が邪魔で見えん」
昼間から垂水と酒飲みながらライブDVDを観ている。垂水の言う通りマジカッコイイ、いつか必ず観に行きたいです。
「ところで三日尻、春休みの予定は?」
「特にない」
「悲しい奴だな~!」
俺が暇な奴だと分かって垂水の機嫌が良くなる。下を見て自分はまだマシだと優越感に浸っているんだな。
悪いが人生の夏休みと呼ばれる大学生活において男二人部屋で酒飲んでダラダラしている時点で俺ら結構惨めだからな。
発泡酒飲みながらポテチを食べていた垂水が俺を振り向く。小さく咳払いして、あぁこいつ今から俺を遊びに誘うつもりだなと分かる。
「まぁ、ね? 暇な三日尻を思って俺が遊びに付き合ってやるよ」
「あ、はい」
「来週の土曜ライブ行こうぜ。オーラルだぜオーラル!」
「来週の土曜は先約あって無理」
そもそも人気バンドのチケットが一週間前に取れると思うな。SNSで譲ってください連呼するつもりか? 検索から失礼します、もしよろしければチケット譲ってほしいですっ! みたいな?
「じゃあ来週の木曜にスノボはどう? 平日学割で安いぞ」
「水曜にスノボ行くし木曜は昼から用事ある」
スノボは五月女と行き、木曜は野火先輩に美味いラーメン屋に連れていってもらう。
「……明日は?」
「明日は免許取った玉木の初ドライブに付き合う」
「そ、それ俺も行く!」
「地元で高校の友達と合流するから無理だわ。悪い」
「三日尻ぃ! お前結構予定あるじゃねぇか!」
垂水が空き缶を握り潰す。その顔はビーフジャーキーみたいに赤黒くて目が大きく見開いている。怒るなよ、お前が聞いてきた日がたまたま予定あっただけだって。
「裏切り者め! もういい、玉木だけ誘う」
「玉木は土曜から自転車で旅に出るぞ」
「俺だけ予定ゼロじゃん……うえぇぇん!?」
涙を流す悲しげな垂水を視界から避けて俺はライブDVDを観る。春休み最高~。