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122 バレンタインデー3

「第一回チキチキ、今年はチョコ何個もらえたかな選手権~」


「イェーイ」


 安土さんが帰った後、部屋に来たのは垂水と玉木。普段の調子でテンションが高い、のは誤り。なぜならば二人とも目が死んでいるから。


「まずは玉木選手から。何個もらえました?」


「ドゥルルル~……ゼロ個なり!」


「おおっと玉木選手なんと痛恨のゼロ個。これはキツイ~。……いやホント辛い」


 おい垂水、最後ちょっと素が出たぞ。


「では続いて垂水選手~。果たして何個のチョコをもらったのか」


「発表します。ドゥルルル~……ゼロ個だ」


「なんてことだ垂水選手もゼロ個をマーク。資料によりますと垂水選手は昨年の選手権でもゼロ個を記録しており、これで二年連続となったー」


「いやぁ参ったね、あはは。あはは…………死にたい」


 ノリと勢いで耐えていた垂水の心が折れた。床に崩れ落ちて両膝をつく彼の瞳からは涙が溢れる。


「うぐっ、えぐぅ、今年ももらえなかった……。キャンパス内を三周もしたのに」


 マリカかよ。三周しようが無意味だ。今は休み期間で大学内にいる人は少ない。行くなら駅前とかでしょ。でも結果は変わらない。垂水だから。


「おっと垂水選手ここで涙と同時に鼻水も垂らす素晴らしいコンボ技を決めた。これには尾田先生もビックリだー」


 玉木、選手権の内容変わってるぞ。垂水ほどではないにしろ玉木も結構キツイらしく、いつものアホ全開の声ではない。世間ではこれを空元気と呼ぶ。


「それでは最後にミカジ選手お願いします」


「三日尻、お前は何個だ」


 空元気で尋ねる玉木と無機質な声で淡々と尋ねる垂水。言葉の張りと言い方に違いはあれど二人の顔は同じ。感情をなくした真顔が俺を捉えて離さない。


「あー……俺は一個です」


 ウイスキーボンボンの入った箱を二人に見せると二人の顔がさらに死んだ。ムンクの叫び並みの絶望と悲しみに打ちひしがれている。


「ミカジは一個もらったんだね死ね」


「おめでとう三日尻死ね。本日をもって三日尻光一君は選手権引退となります死ね。良かったね死ね」


「語尾に死を添えるな」


 殺気を放つ二人をなだめつつチラッと見るは冷蔵庫。

 ……本当は二個なんだけどな。しかも安土さんから。それを知ったらこいつらは精神崩壊して植物人間になるかもしれないから隠すことにした。


「死ね」


「死ね」


「お、落ち着けって。義理だからこれ」


「……はぁ、まぁいいよ。それって五月女先輩からもらったんでしょ」


「まぁ五月女さんからは許すわ。お前ら仲良いもんな」


 玉木と垂水はそう言って悲しげにお互いポケットから取り出したチョコボールを食べさせ合う。サラッと何やってんの。ホモプレイはお控えください。


 ……五月女、ねぇ。

 二人はこのチョコが五月女からのだと勘違いしているらしい。これは金谷先輩にもらったチョコで、五月女からは、もらっていない。今日は会っていないしメールもしていない。


「はい垂水君、あーん」


「あーん。うーん、おいちぃ~」


「うふふ、良かったわぁ」


 無表情でチョコをあーんをする狂ったゼロ個男子から目を背けて携帯を見る。

 俺から連絡するのもなぁ。まぁあいつのことだからそのうち来るだろ。バレンタイン? じゃあ三日尻君がくださいっす、とか言って俺にチョコをたかるだろうよ。


 ……あいつもチョコ作ったりするのかな。誰かに、たとえば俺に渡したりしないかな……。


「んっ、駄目だって玉木ぃ。そっちのボール食べちゃ駄目」


「垂水のチョコボール可愛いよ」


 ホモ二人はさっさと出ていけ。

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