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113 宅飲み

 宅飲み。それは大学生を語るには外せない存在。酒とつまみさえあれば実行可能で、気心の知れた友とたわいもない話で朝まで盛り上がる。

 そう、気心知れた友と……気心知れた、友……


「聖剣・図工室のモップ! ドカーン!」


「すいません部屋の中で暴れないで」


「召喚魔法~!」


「せっかくベランダに避難させた雪桜剣客・エビチリ修造を部屋に持ってこないで」


 毒色のバットと雪だるまで賑やかに部屋中を動き回っているのは安土桃香さん。友達は友達なのだが気心は知れていない。というか未だにこの子のことは何一つとして理解不能。ミステリーサークルぐらい謎なんだよな。


「ほら宅飲みしようぜ。安土さんが言いだしたんだろ」


「三日尻君はノリが悪いです」


「え、俺が悪いの? 信じがたい」


「二人きりの今日を祝して乾杯です!」


「ごめんフットワーク軽すぎて追いつけない」


 この子のペースに合わせたら脳の処理が間に合わない……ふーっ、落ち着こう。

 まず、今日は大雪で全講義が休講となり、安土さんは俺のアパートの前で雪遊びをしていた。起きた俺も強制参加させられ、夕方まで安土さんと二人で数多の雪像を作り上げた。

 楽しかった、楽しかったけど……すげー疲れた。基本的に俺は雪を集めて土台を作り、安土さんは削ったり形を整えたりと細かい作業がメインで力仕事はほぼ俺がやった。明日筋肉痛だわ……。


 雪遊びも終わって解散、風呂入って寝ようと思ったのに安土さんは帰らない。それどころか「今日は宅飲みしましょう!」と言いだして今に至る。個人的には寝たいんですがね。


「カシスオレンジ美味しいですっ」


 安土さんのテンションは下がることなく今もハイ。ニコニコと笑いながら頭は楽しげに左右に揺れている。くっ、可愛すぎる、反則だってばよ。

 ん……待てよ? 冷静に考えれば今日はずっと安土さんと二人きり、そして宅飲みを始めた今も二人きり。安土さんと二人きり、あらゆる男子が全単位を対価に欲しがるシチュを今俺は味わっているのでは……!?


 ……なんてね。あぁー、はいはいそうですか、である。

 なぜなら俺は安土さんの頭のヤバさを知っているから。嬉しいけどそこまで嬉しくない。あと梅酒のロックが美味しいです。


「三日尻君とお酒を飲むのは初めてですね」


「そういやそうか」


 安土さんはカクテルばっかり飲んでいるし、五月女みたいに酒癖が悪そうでもない。これなら何事もなく宅飲みできそうで安心だ。


 とか安心したのも束の間。紙コップを落とした安土さん、その顔は赤くて目はトロンとしていて……


「えへへ、酔ったかもです」


 呂律が回っていない、でも子供みたいに可愛らしい声でそう言った安土さん。俺のすぐ横へと来て機嫌良く聖剣を振り回している。


 あれ……なんか、ヤバイ予感がする。

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