11 勘違い
プリン状態になってきた金髪をぼんやりと眺める。
「今日キャンパス内でさ、知らない女の子に会釈されたんだ」
と、そのプリン金髪の主である垂水がゆっくりと語りだした。
「へー」
「俺の方を見てペコッと頭を下げてさー。俺、その子のことが好きになった」
「……ちょろ過ぎない?」
挨拶されただけで好きになったってこと? いくらなんでもそれは酷すぎる。
この時点で聞く気が失せたが、そんな俺のことは気にせず垂水は浮き立った口調で話を続ける。
「名前も知らない子だぜ。そんな人が好意もなしに会釈するか? 絶対に俺に気がある」
どうせ垂水の後ろに知り合いがいてその人に向けて挨拶したとかそういうオチだと思うんだがなぁ。
「遂に俺にもモテ期ってやつが来たのか。しょうがねぇな~」
やれやれ〜と付け加え、肩をすくめた垂水は立ち上がると玄関の方へと向かっていく。
え、何その「モテる男はツライぜ」的な顔つきは。お前一度たりともモテたことねーよな?
「どこに行くんだ?」
「決まってるだろ。あの子に返事をしてくる」
「返事って……いや告白されたわけじゃないだろ」
「あの目は俺のことが好きだと語っていた。なぁ三日尻、知ってるか?」
垂水は軽快にターンすると俺に向けて指を鳴らす。キモいな。
「女は口では語らず目で伝えるんだ。どうしてだと思う?」
「知らん」
「それはな、口は男からのキスを待っているからだぜ☆」
ウインクを決めた後、垂水は颯爽と出ていった。
……俺の予想が正しければ、すぐに戻ってくるだろうなぁ。
十数分後、俺はうずくまるプリン金髪に話しかける。
「で、どうだった」
「あなた誰ですかって怯えられた……」
大量の涙を流す垂水に向けて、俺は指を鳴らしてやった。




