109 成人式2
「……ヤンキーが追いかけてきてめちゃくちゃ怖かった」
「お前ダサイな」
垂水は惨めな成人の日を送ったらしい。そりゃ金髪の小太りがおどおどキョロキョロしてたら目につくよ。
「そ、そういう三日尻はどうだったんだよ!」
「俺は普通だよ。朝まで遊んで飲んだ」
「リア充じゃねぇか!」
別に普通だろ。飲み過ぎてゲロ吐き散らしながら二軒目に向かうぐらい普通のこと。「ヤベェさっきの店に忘れ物した」「大丈夫、三日尻のゲロを辿れば戻れるぞ」とか普通だから。
「いいなぁ……それに三日尻と玉木は同郷だから羨ましいわ」
「あー……玉木か」
「そういえば玉木は? あいつは俺みたいに失敗してそうだわ」
その予想は大きく覆されることになるぞ。
と、その時、扉が開いて誰かが入ってきた。
「あ、垂水だ。久しぶりぶり~」
「っ!? ど、どちら様ですか」
ド派手な真紅のソフトモヒカン、襟足だけは黒で伸ばしてある。瞳の色はスカイブルーで、スーツを着崩してシャツは真っ黒。鋭い眼光とチャラチャラした歩き方で入ってきたのは玉木だ。
「おいおい無視しないでよ垂水~」
「あ、あ……」
垂水は玉木だと分かっていない。歯をガタガタ震わせて鼻の両穴からは鼻水が溢れている。普通は涙だよね、なぜ鼻水が号泣状態なん?
「ひ、ひぃ! これで勘弁してください!」
垂水は即座に土下座、滑らかなムーブで財布から一万円札を取り出す。
あ、成人の日にもこの動きやったんだろうな。動作がスムーズだ。
「ねぇミカジ、垂水の様子がおかしい」
「お前の様子がおかしいからだよ」
玉木は成人式の正装とはどんなものか調べたらしい。
が、そこはさすが玉木麦平。間違った情報を得て今のような格好に変貌してしまったのだ。成人式で会った時は目が飛び出る程ビックリした。けど今はもう慣れたし、正直なところかなり似合っている。
「いつまでその格好でいるつもりだ」
「ホストやらない?って言われて貰える名刺を十種類揃えたら」
玉木は胸元から数多の名刺をばら撒く。お前勧誘されてんの!? すごいな!?
「すげーな……ん、これは?」
「それはおっパブの名刺だね」
「さりげなくいかがわしいお店で遊んでんじゃねぇよ!」
「成人したのでセーフなり」
「何やってんだよ。……今度俺も連れてけ」
一度行ってみたかったんだよな。あ、でも嫌な予感がする。なんか五月女がキレる予感が……やっぱやめておこ。
「とりあえず一万手に入ったから今から行こうよ~」
「いやそれ垂水の一万円!」




