106 元旦
元旦の朝はおせち料理で決まりだ。だが一人暮らしの俺にそんなもん作れるわけがないだろーっ。てことで、
「お雑煮だけっすか……」
「贅沢言うな。寧ろお雑煮作った俺を誉めろ。餅は何個いる?」
「二つっす」
元旦の朝、ウチのアパートは静まり返っていた。大半の住民は帰省したのだろう。そりゃ学生街だからね、みんな地元帰るわな。このアパートでこうして餅をみょんみょんさせているのは俺らだけだと思う。
「三日尻君は初夢見れたっす?」
「初夢は今日の夜見る夢のことらしいぞ」
「マジっす?」
いや俺もよく知らんけど。あ、餅が美味い。
「どっちでもいいっす。とにかく良い夢見たっす? 一富士二鷹三ビーナスってやつっすよね」
「三茄子な。いやまぁ三人の女神も縁起良さそうだけども。そして俺は夢の内容を覚えていない」
あるあるだよね。何か夢を見ていたのは確かなのだが、どんな内容かは覚えていない。
「そういう五月女はどんな夢を見たのさ」
「じ、自分っすか? よ、よく覚えてないっす」
「お前『三日尻君に抱きついちゃった、えへへぇ』とか寝言で言ってたぞ」
「えええええぇぇ!?」
五月女は真っ赤な顔で俺に詰め寄ってきた。こらこら新年から暴れなさんな。
「そ、そそそんな夢見てないっす! そもそも人の寝言を聞くとかサイテーっす!」
「無茶言うな、同じ部屋で寝たんだから聞こえてくるだろ。あとは『ちゅー、しちゃった……』とか聞こ」
「わーっ! わーっ! もう言わなくていいっす!」
五月女は新年になっても面白い奴であった。からかい過ぎて後から思いきり叩かれたけど。




