104 年末
「それでは今年も一年間お疲れさんでした。来年も何卒よろしくー、かーらーのかんぱーい!」
「ういー」
金谷先輩と今年最後の飲み。会場は俺の部屋。
「うめぇ~、黒エビス美味いなおい」
「そうですね」
「ききビールしたらこいつだけは分かる自信あるよ」
「そりゃ色で分かるでしょ」
「じゃあ今日の私の下着の色は分かるか?」
「分かるわけねーでしょ。トリッキーな問いかけやめてください」
「あららもう一本飲み終えちゃった」
金谷先輩はビール缶を放り捨てた。しかもロング缶。さすがのハイペースですね。末恐ろしい。
「今年も残り僅かだなー」
「年の瀬ですね」
「てことで今年を振り返ってみようじゃないか」
定番ですね。鉄板で肉の焼ける音と匂いの中、俺らは今年の思い出を振り返ることにした。
「三日尻、今年で成し遂げたこと挙げてみろ」
「成し遂げたこと?」
「例えばTOEICで900点を取った、海外でボランティア活動した、起業したとか」
「意識高い系ですか。俺は彼らとは無縁なんで」
TOEICなぞ基準ライン越えたらいいし、海外には行きたくもない、起業なんて論外だ。
「じゃあ何をしたと言うんだね」
「特に何もしてませんね」
だって基本的に部屋でのんびりしていたから。金谷先輩はため息をついて肩を落としている。
「君にはガッカリだ。大学生のうちにしか出来ないことは山程あるだろ」
「はあ、そうなんですか」
「ヒッチハイクや日本一周や海外旅行、家庭教師になって女子高生を食い荒らすとか」
「一つ犯罪がありましたよ!?」
「ヒッチハイクは別に犯罪ではないだろ」
「女子高生のことだよ!」
俺の激しいツッコミに対して金谷先輩はゲラゲラ笑うだけ。女子高生に手を出すのはあかんでしょ。それで人生終わった芸人がいるし。数取団好きだったんだけどなー。
「君も次は三年生だ。来年はもっと有意義なことをしたまえ」
「そういう先輩は今年何をやってきたんですか?」
「私はひたすら飲み続けたぞい」
「ただのクズ! 偉そうなこと言ったくせに自分は呑んだくれ!?」
「来年の健康診断が心配だぞい」
「ぞいって語尾やめてくださいイラッとくるから!」