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102 五月女乙葉VS安土桃香2

 携帯を眺める。かなり焦っています。その理由は、


『今日遊びに行きます』


『今から行くっす』


 メッセージは二通、安土さんと五月女から。これはね、危険信号がビンビンですよ。嫌な予感しかしない。俺、今度こそもげるのでは……!?

 ま、まぁ? まだ回避が可能だと思う。わざわざメールで教えてくれたんだ。今のうちにお断りの返信をすれば無事に済むはず。


 ピンポーン。


 ……ま、まぁ? まだ間に合う。どちらか来た、ならばもう一人に連絡すればいい。臨機応変に状況を処理していこう。俺は玄関へ向かいドアを開く。


「こんにちは三日尻君~」


「……こんにちはっす」


 ドアの前には安土さんと五月女が立っていた。あ、あああ、そんな……!

 まさかの同時に来訪してくるとは。こんなの防ぎようがない。うわヤベェ、危険信号が真っ赤になって鳴り響いている。


「い、いらっしゃい」


 帰すわけにもいかず二人を招き入れる。粗茶ですがのノリでミルクコーヒーをもてなし、俺は壁の端にまで避難。


「三日尻君どうして端っこにいるんす?」


「もげたくないから」


「三日尻君はスライムだったんですねっ」


「安土さん違う。俺は自発的に分裂するアメーバの類ではない」


「そうですよ安土さん。変なボケをしないでください」


「ヒヒーントゥイッターバンチ」


「は?」


 オープニングトークから火花が散る異様な空間。俺の精神がゴリゴリ削られていく。アヘアへ、アへ顔になっちゃう。

 はあ~、だから嫌だったんだよなこの二人を会わせるの。これからどうしよう。


「安土さんは三日尻君に何の用ですか。私は三日尻君に大事な話があるの」


「五月女さんこそ大事な話って何? くだらないことでしたらお帰りください」


「変な呪文唱えるあなたに言われたくないです!」


 マジでどうしよう。勝手にバトル始めているんですが。

 待て……まだいい。俺に危害が及ばないなら最悪の事態は避けられる。臨機応変に、状況を処理して、


「三日尻君、こっち来てください」


「三日尻君こっち来るっす!」


 間に合わなかった。抵抗することも出来ず俺は移動、二人に挟まれる形に……あ、あかん!? これ死亡フラグ!


「なぜ俺を呼んだの……」


「三日尻君、クリスマスは楽しかったっすね~!」


 なぜか脳内にメッセージウィンドウで『五月女のせんせいこうげき!』と表示された。額に汗がにじむ。


「二人きりで乾杯して二人きりで騒いで二人きりで夜道を散歩したっすね! 最高に楽しいクリスマスだったっす!」


「……へぇ~、そうだったんですね」


「ふふふふんっ」


 五月女の特大な鼻息、溢れんばかりの自慢げな表情。何その勝ち誇った顔。あと二人きりを連呼するな。なんか恥ずかしい。


「安土さんはクリスマス何をしていたんですか~? 私と三日尻君は一緒だったけど安土さんは~?」


「私は、部活の演奏会……」


「あらあらぁ? それはそれは大変でしたね~。私と三日尻君は二人きりだったのに可哀想~」


「……」


 安土さんは俯いて黙り、五月女はさらに調子づく。そりゃもう天狗で言えば鼻が天空に届く勢い。口元に手の甲を添えてケラケラ笑っている。お前は自慢したがるマダムか。


「二人で乾杯したのよ。えへへ~」


「まぁ垂水や玉木や金谷先輩に邪魔さ」


「何か言ったっす?」


「い、いえ何も」


 五月女のギロリッ!と鋭く凶悪な眼光に全身が硬直する。こ、怖っ。野原家のみさえ並みに目つきすごかったぞ。

 あー、いや確かに楽しかったけどさ。部活で忙しかった安土さんに自慢することはないだろ。ほら安土さん俯いて何も言わなくなったぞ。ご、ごめんね?


「ポッポーギンギラギンウイッス」


「負け惜しみの呪文ですか~?」


 いや今のは確か緊張をほぐす呪文だったような。

 と、安土さんが俺の腕を掴み、そして思いきり自分の方へと引っ張ってきた。


「五月女さんはクリスマスを楽しんだのですね。でしたら今度は私が楽しむ番です。三日尻君、今日は二人きりで飲みましょう」


「はぁ!? なんでそうなるのよっ」


「だって五月女さんは三日尻君と楽しんだのでしょう? じゃあ次は私です」


「そ、そんなのおかしいもん!」


「おかしくないです。五月女さんは三日尻君と付き合っているわけではないでしょ」


「そ、それは……」


「なら五月女さんに言われる筋合いはありませんヒヒーントゥイッターバンチ」


「うぐぅ……!?」


 安土さんに抱きつかれながら、俺の脳内には『安土さんのカウンターこうげき!』の文字が浮かんでいた。危険信号は未だ鳴り響き、額の汗は珠となって頬を流れ落ちる。

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