10 ホラー
テレビに映る白い肌の女性。ボサボサの長い髪に覆われて顔は見えない。と、次の瞬間には画面いっぱいに女性のおぞましい顔が……
「これはビビるわ。なぁ垂水……おい?」
「な、なな何が?」
垂水の顔も負けないくらい白い。というか顔面蒼白。目には涙が溜まっている。
「お前まさか……怖いの?」
「ば、バッキャロー! 俺から心霊特集観ようと誘って『あーあ、どうせなら女子と一緒に観たかったぜ。怖がる女の子をそっと抱きしめてやるのにさ』と強気な台詞を吐いたのにビビってるわけないだろっ!」
長文を叫んでくれたはいいが、お前口がガクガク震えて何言ってるのか分からんかった。分かったのは垂水がホラー系は駄目ってことぐらい。
「無理すんなよ。チャンネル替えようぜ。ニュースキャスターのお姉さん可愛いからさ」
「か、可愛い女の子はいるだろ。チャンネル替える必要はないっ」
お前の言う可愛い女の子、口から血を吐きまくって手に藁人形持っているけど? これのどこに可愛い要素あるんだ。
「三日尻よ、まさか俺がビビリだと思ってるのか? 俺はモテ男だぞ。異世界に生まれたのなら即ハーレムを築く程の金髪モテ男だ。そんな俺が心霊特集なぞに臆するわけが」
テレビ画面が真っ暗になった。音も消え、時折小さく聞こえてくる女の呻き声。ズル、ズル、と何か這いずる音の直後には、
『次はお前の番だ』
冷たい表情の女性がこっちに向かって襲いかかってきた。
うおっ、思わずビクッと震えてしまった。こういう演出ってセコイよなー。体が反応するに決まってる。
「まぁ楽しめたから良しとするか、って、垂水?」
「……」
垂水は口を閉じたまま、軽く白目を剥いていた。ツーッとまっすぐ流れていく涙は床に落ちる。
「お、お前ガチ泣きじゃねーか」
「三日尻よ……」
「恥ずかしがるなって。怖いから泣くのは仕方ないさ」
「出たのが涙だけじゃなかったら?」
……ん? それはどういう意味……はっ!?
「垂水、お前……」
「安心しろ。まだカーペットには侵食していない」
「カッコ良く言ってる場合かあぁぁ!?」
こいつとつるむのマジでやめようかな。